【事例解説】インターネットでの名誉毀損で被害届が提出される(後編)     

インターネット上で名誉を毀損したとして被害届が提出された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説します。

事件の概要

北海道小樽市に住むAは、インターネットで投資関係の情報の発信をしています。
ある日、知人から、同じ投資家界隈での有名人Vが「これまで数人の女性に対する強姦事件を起こし、それを金で無理矢理示談している」というような噂を聞きました
後日、Aは「知り合いから聞いた話なんだけど、Vはレイプ魔だよ。レイプして、相手に500万とか金払ってもみ消してるらしい」などとインターネットのストリーミングで喋りました。その時には30人ほどのリスナーがいました。
その時の録音(画面録画)をあとから聞いて怒ったVは、札幌にある自宅近くの札幌方面手稲警察署に被害届を出しました。 
(フィクションです。)

名誉毀損罪について

 ④最後に、「違法性阻却事由がないこと」ですが、これは

1.公共の利害に関する事実に係るものであること
2.その目的が専ら公益を図ることにあったと認められること
3.真実であることの証明があったこと

 と定められています(刑法230条の2)。
 また、同条2項では、「公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす」と定められています。

 Vが過去に強姦をした、そしてもみ消した、というAが適示した事実が、つまりは、検察官により「公訴が提起されれるに至っていない人の犯罪行為に関する事実」であれば、上のみなし規定により、1.の「公共の利害に関する事実に係るものであること」という要件は満たされる可能性があります。

 その上で、2.「その目的が専ら公益を図ることにあったと認められること」が満たされるか否かですが、判例によれば、主たる動機が公益目的であればよいとされています。また、事実適示の際の表現方法や事実調査の程度が、公益目的の有無の認定において考慮されるべきものとされています。
 公益目的が否定された判例としては、主として読者の好奇心を満足させる目的の事案などがあります。
 
 Aの発言はどうでしょうか。投資家界隈に注意喚起を促す意図だったと認定され、公益を図る目的があったと認定される可能性もないわけではありません。一方で、単にリスナー達の好奇心などを満足させる意図しかなかったと認定される可能性もあります。また、Aが単に噂を信じて情報の真偽を調査する姿勢があったかどうかなども判断要素となるでしょう。

 上記の2要件が満たされた上で、最後に3.「真実であることの証明があったこと」ですが、これもAの側が合理的疑いをいれない程度」の証明を行う必要があります。
 Aは、知人から聞いた話だとしていますが、真実性の証明が必要なのはそのようなうわさ等の存在についてではなく、実際にその噂の内容を成す事実についてです。Vが、本当に強姦をしたり、金に物を言わせて示談させたなどの事実が実際に存在したことを証明する必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件に強い法律事務所です。
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