執行猶予・一部執行猶予について

執行猶予には刑の全部の執行猶予に加えて刑の一部の執行猶予があります。

 

刑の全部の執行猶予(刑法25条)

刑の全部の執行猶予の対象

前に禁錮以上の刑に処せられたことが無い者、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことが無い者が、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言い渡しを受けたとき、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、刑の全部の執行猶予がされます(刑法25条1項)。

前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予されたものが1年以下の懲役または禁錮の言い渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも執行猶予されます(刑法25条2項本文)。

ただし、保護観察中にさらに罪を犯した場合は、執行猶予はされません(刑法25条2項但書)。

もっとも、罰金刑で執行猶予がされることはまずありません。

強盗罪など一部の刑は短期が3年を超えているため、酌量減刑(刑法66条)がつかないと執行猶予を付けることができない場合があります。

 

保護観察

執行猶予の期間中保護観察に付されることがあります。前に禁固以上の刑に処せられたが刑の全部の執行を猶予された者について執行を猶予されるときは必ず保護観察に付されます(刑法25条の2第1項)。

保護観察中は遵守事項を遵守し、保護司の指導に従い、生活改善をしていくことになります。

 

刑の全部の執行猶予の必要的取消し

  1. 猶予の期間内にさらに罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言い渡しがないとき(刑法26条1項1号)、
  2. 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑全部について執行猶予の言渡しがないとき(刑法25条1項2号)
  3. 猶予の言渡し前に他の罪ついて禁錮以上の刑に処されたことが発覚したとき(刑法26条1項3号)、

は刑の全部の執行猶予の言い渡しは取消されます。③については、その刑の執行を終わった日又は執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処されたことが無い者(刑法25条1項2号)や他の罪について刑の全部の執行猶予されたことが発覚した者(刑法26条の2第3号)であった場合はこの限りではありません。

 

刑の全部の執行猶予の裁量的取消し(刑法26条の2)

  1. 猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき、
  2. 保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき、
  3. 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき、

刑の全部の執行猶予は取消されることがあります。

 

刑の全部の執行猶予の猶予期間経過(刑法27条)

刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失います。ただ、前科としては残ります。

 

刑の一部の執行猶予(刑法27条の2以下)

従来は刑の全部の執行猶予か全て実刑を受けるかしかありませんでした。しかし、再犯の防止のためには執行猶予で社会に出してそのままにするのも、刑務所で懲役に付させるだけでも十分ではないことから、刑務所での懲役刑に服している間社会復帰の準備をし、執行猶予で社会に戻りつつ復帰の準備を図るため、刑の一部の執行猶予をすることができるようになりました。

 

刑の一部執行猶予の対象

  1. 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者(1号)
  2. 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者(3号)、に加え、
  3. 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者(2号)が、3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、

1年以上5年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができます(刑法27条の2第1項)。

一部の執行を猶予された刑については、そのうち執行が猶予されなかった部分の期間を執行し、当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から、その猶予が始まります(刑法27条の2第2項)。

一部執行猶予の期間中も保護観察に付することができます(刑法27条の3)。

 

刑の一部の執行猶予の必要的取消し(刑法27条の4)

  1. 猶予の言渡し後に更に罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられたとき、
  2. 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられたとき、
  3. 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないことが発覚したとき、

刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されます。ただし、③の場合でその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられた子がない場合は必ず取り消されることにはなりません。

 

刑の一部の執行猶予の裁量的取消(刑法27条の5)

  1. 猶予の言渡し後に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
  2. 保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守しなかったとき。

刑の一部の執行猶予の言渡しは取り消されることがあります。

 

猶予期間の経過(刑法27条の7)

刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、その懲役又は禁錮を執行が猶予されなかった部分の期間を刑期とする懲役又は禁錮に減軽されますこの場合においては、当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日において、刑の執行を受け終わったものとされます。

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