トイレに置き忘れられたカバンを盗んだ事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説します。

【事例】
札幌市内に住む大学生のAさんは、名古屋市内の商業施設内のトイレに置き忘れられていたカバンを盗みました。
その5分後、カバンの持ち主であるBさんはカバンを置き忘れたことに気付き、トイレに戻りましたが、その時にはすでにかばんは無くなっていました。そこでBさんが被害届を出し、警察が捜査を進めたところ、商業施設内の防犯カメラにカバンを持つAさんらしき人物が写っていることが決め手となり、Aさんは逮捕されることになりました。
(フィクションです)
【今回の事例で問われうる犯罪】
今回の事例では、占有離脱物横領罪か窃盗罪のいずれかに問われうる可能性があります。
占有離脱物横領罪とは、刑法254条により「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領」する罪であると定められており、その法定刑として「一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料」が定められています。
他方、窃盗罪とは、刑法235条により「他人の財物を窃取」する罪であると定められており、その法定刑として「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑」が定められています。
以上のようにこれらの罪についての法定刑は、大きな隔たりがあるため、どちらの罪に問われるかは極めて重要な点となります。
この両罪を分けるのは、物に対する占有があったか否かです。
すなわち今回の事例では、Bさんがトイレから出た後もカバンを占有していたと評価できるかどうかです。
Bさんの占有が肯定される場合、Aさんは「他人の財物を窃取」したことになるため窃盗罪に問われることになるでしょう。
他方、Bさんの占有が否定される場合、Aさんは「占有を離れた他人の物を横領」したことになるため占有離脱物横領罪に問われることになります。
(次回に続く….)