【事例解説】赤ちゃんを放置して死亡させた事例(後編)

赤ちゃんを放置して死亡させた事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説します。

<事案の概要>


北海道札幌市の住宅から生後まもない赤ちゃんの遺体が見つかり、24歳の母親が逮捕された事件で、警察は母親を殺人の疑いで再逮捕しました。
殺人の疑いで再逮捕されたのは、無職の容疑者A(24)です。
Aは今年6月に札幌市の住宅で女の子の赤ちゃんを出産したにもかかわらず、救護措置を取らず、そのまま放置し殺害した疑いがもたれています。
取り調べに対し、Aは「育て方が分からなかった」と容疑を認めているということです。
(フィクションです。)

<不作為による殺人が成立する場合とは?>

では具体的にどのような場合に不作為による殺人罪が成立するのでしょうか
不作為犯を広く認めると刑法の自由保障機能(犯罪として予め明示された行為以外は罰しないというもの)が害され人々の自由を過剰に制限することになりかねません

そこで、不作為犯の成立には様々な条件があります。
ここでは、その内の①作為義務、②作為の可能性・容易性について解説していきます。

作為義務
作為義務は、法令、先行行為、排他的支配や保護の引き受け等がある場合に認められます

作為の可能性・容易性
作為の可能性・容易性については、作為が可能であったかどうか(泳げない人におぼれている人を助けることは作為可能性がない)、作為に出ることが容易であったかどうかという点から判断されます。

本件に当てはめると、母親には赤ちゃんに対する排他的支配が認められるため作為義務があると判断される可能性が高いです。

また、赤ちゃんを助けるために病院に連れて行く、救急車を呼ぶことは可能かつ容易であるため作為の可能性・容易性が認められます
そのほかの不作為犯の要件も満たすため、不作為による殺人罪が成立する可能性があります

もっとも、本件においては殺意があったかについては明らかではありません
上述した殺人罪には人を殺すことについての殺意が必要です。
当初、死体遺棄の疑いで逮捕し、その後に殺人罪で再逮捕したのはこの点に問題があったからかもしれません。

今回は、不作為による殺人罪について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説しました。
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