痴漢行為で私人逮捕された事例(前編)

今回は、痴漢行為を行ったところ、通行人に私人逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。

事例

札幌市の駅周辺において、Aさんは被害女性Vさんとすれ違う際にスカート越しにVさんの臀部を撫でるように触りました。
通行人Bさんは、Aさんの痴漢行為を一部始終見ていたため、すぐに逃げようとするAさんを追いかけて取り押さえました。
その後、通報を受けた警察が現場に駆け付け、状況を確認したところ、Aさんを取り押さえたBさんの行為が私人の現行犯逮捕になるとして、Aさんは警察署に連行されることになりました。

私人の現行犯逮捕

現行犯逮捕について刑事訴訟法にはこのように記載されています。

現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者を現行犯人とする。
左の各号の一にあたる者が、罪を行い終ってから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。
刑事訴訟方第212条
 
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
刑事訴訟方第213条

このように現行犯人を逮捕する場合、何人(誰でも)でも逮捕することができます。

現行犯逮捕を行う際にある程度の実力行使(腕を掴む、体を押さえつける等)が想定されるところではありますが、「その状況からみて社会通念上逮捕に必要かつ相当と認められる限度内であれば、逮捕者が私人の場合でも、刑法35条により罰せられない」とする過去の判例があります。
(最高裁判所昭和50年4月3日判決)

正当行為
刑法35条は、正当行為について記載しています。
法令又は正当な業務による行為は、罰しない」と規定しており、社会的に正当と認められる業務上の行為(医師の手術や逮捕行為等)は、犯罪の構成要件に該当しても違法性がなく、処罰されないとして定められています。

私人逮捕の注意点


私人が現行犯逮捕した際、その後の被疑者を取り調べる権限はもちろんありません
そのため私人逮捕後は、速やかに検察官や警察官に引き渡さなければなりません。
(刑事訴訟法214条)。
また、現行犯逮捕を行う際に限度を超えた暴行等を行えば、その行為が罪に問われる可能性もあります。
さらに、逮捕の際に犯人の抵抗によって思いもよらない怪我を負う場合も考えられるため、私人逮捕には注意が必要です。

このように痴漢行為を行ったことにより、警察官がいなくても周囲の通行人などから私人の現行犯逮捕されてしまうこともあるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
痴漢事件に関してお悩みの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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