7月1日施行の札幌市客引き防止条例

7月1日施行の札幌市客引き防止条例

札幌市中央区で客引きで逮捕されたという報道をもとに、客引きで問題となる罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。

【報道】

5月中旬、札幌市のススキノの歩道で、私服の女性警察官に対し、客引きをしたとして、39歳のホストクラブの男が逮捕されました。
風営法違反の疑いで逮捕されたのは、札幌市中央区に住む39歳のホストクラブ従業員の男です。
この男は5月16日午後9時40分ごろ、札幌市中央区南6条西4丁目の歩道で、取り締まり中だった私服の女性警察官に対し、客引きをした疑いが持たれています。
警察によりますと、男は「1時間だけ飲み放題で、それ以上かからない。本当は1000円だが、500円でいい」などと、女性警察官に話しかけていました。
その際、強引に店に連れ込むようなことはなかったため、警察は、ススキノの客引きの実態解明などに向けて、男の身元や店の特定をすすめ、今月6日夜、男を逮捕しました。
取り調べに対して39歳のホストクラブ従業員の男は「当時、客引きしていたかわからない」などと話しているということです。
警察は、引き続き客引きの実態解明も含め、調べをすすめています。

≪北海道放送(株) 7月7日(木)午前8時06分配信 https://news.yahoo.co.jp/articles/49aa78d642e39bab96cd3ad08ff458f1f44b2b25≫

【札幌市客引き防止条例の新設】

札幌市は「札幌市客引き行為等の防止に関する条例」(札幌市客引き防止条例)を新設しました。
札幌市全域が対象という訳ではなく、専ら札幌市電・南北線の「すすきの駅」や、東豊線の「豊水すすきの駅」の周辺を指定区域としているため、いわゆるススキノと呼ばれる地域が対象です。
施行は令和4年(2022年)4月1日ですが、周知期間を経て、同年7月1日以降は指導・勧告・命令・過料(5万円以下)といった行政処分を課すことができるようになりました。

札幌市客引き防止条例に違反した場合について、これは刑事事件ではなく行政処分ですので、札幌市客引き防止条例が施行されたからと言って、これが直接的に逮捕されたり刑事処罰を科されたりという事態に発展するわけではありません。
しかし、後述のとおり刑事罰を科す法令は別途用意されていて、札幌市客引き防止条例が施行されることにより捜査機関も積極的に、あるいは強固な態度で客引き事件に挑む可能性があります。

【客引き行為をした者の罪】

以下では、次の略称を用います。
・条例 …北海道迷惑行為防止条例

・風営法…風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(別の略称として、風適法というものもあります。)

報道によると、逮捕された方はホストクラブの従業員として、ススキノの路上で声掛けすることで客として来店を求めるいわゆる客引き行為を行いました。

(不当な客引き行為等の禁止)
第9条1項 何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
3号 法第2条第1項第1号の営業…に掲げる営業又は同条第9項に規定する営業について客引きをすること(当該営業を営む者又はその代理人、使用人その他の従業者が当該営業に関し行う場合を除く。)。
罰条:6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(条例11条1項)
※ここでいう「法」は、風営法を指します。(条例8条)

報道によると、逮捕された方は「ホストクラブ」に勤務していたとされています。
ホストクラブは、一般的に風営法2条1項1号のいう「…設備を設けて客の接待をして客に…飲食をさせる営業」に該当します。
そのため、ススキノの路上という公共の場所で、歩行者に声を掛けてホストクラブに案内する行為は、客引きと言えます。
報道の女性警察官は、客引きを受けた時点で現行犯逮捕することもできましたが、態様が悪質であると判断したため、入念な捜査を行ったうえで通常逮捕するに至りました。

【客引きは従業員だけでなく経営者も罪に】

今回の報道を見る限り、客引きをした者だけが捜査の対象となっています。
しかし、客引き行為は従業員だけでなく経営者も罪に問われる可能性があります。

風営法 第22条1項 風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
1号 当該営業に関し客引きをすること。
2号 当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
罰条:6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科(風営法52条1号)

風営法の場合、対象者は「風俗営業を営む者」ですので、経営者が対象です。
但し、客引きをして者が、経営者の指示・判断で客引きを行っていたということを立証する必要がありますので、従業員が客引き行為で検挙されたからと言って、必ずしも経営者が検挙されるというわけではありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部には、客引き等の北海道迷惑行為防止条例違反での弁護経験がある弁護士が在籍しています。
ススキノなどの札幌市内で客引き行為をして捜査を受けることとなった、あるいはご家族が客引き行為などで逮捕された場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご相談ください。

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