死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件(1号)、短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪のうち故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件(2号)については、通常の裁判官だけの裁判ではなく、裁判員も含めた裁判員裁判で審理が行われます(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項)。
殺人事件や強盗致死傷事件だけでなく、通貨偽造事件や営利目的での薬物輸入事件なども無期懲役刑があり、裁判員裁判で審理が行われます。
公判前整理手続
第一回公判前に検察官・弁護人双方の主張すなわち事件の争点や証拠を整理する公判前整理手続があります(刑事訴訟法316条の2以下)。裁判員裁判ではこの公判前整理手続を必ず行わなければなりません(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律49条)。手続きには被告人も出頭します。ここで事件の争点と証拠が整理され、裁判員にも分かりやすくされます。この公判前整理手続が被告人及び弁護人にとって有益なのは、検察官の手持ちの証拠を開示させることです(刑事訴訟法316条の14以下)。
裁判員裁判における証拠
裁判員裁判でも証拠は通常の裁判と変わりはありません。
裁判員裁判では、特に被害者が死亡した事件で、流血現場の写真など惨たらしい写真が証拠として挙がってくることがあります。これらは裁判員に心身に影響が出るほど著しく不快にさせるものでもありますが、裁判員に被告人に対して憤慨させ、冷静な判断を損ねることになります。その他にも、裁判員を誤った判断に導きかねない証拠が多数あります。弁護人としては、公判前整理手続きでこうした証拠が法廷に出ないようにします。
一方で、従来は証人尋問をせずに被害者や目撃者、被告人の調書を読み上げるだけで済まされていたのが、裁判員の前で証人として尋問するようになったため、調書で問題となっていた、供述者の供述の信用性についてしっかり尋問できるようになりました。
裁判員裁判の上訴
裁判員裁判では薬物輸入事件で故意が認められないとして無罪判決を次々に出すなど、従来の裁判官のみの裁判ではなかったような展開を見せています。
一方で、裁判員裁判では検察官の求刑意見よりも重い従来の量刑基準を逸脱した判決が下されるなど、不当な判決が下されることが珍しくありません。
裁判員裁判は一審だけであり、控訴・上告すれば裁判官のみで構成される裁判所により裁判され、そこで原審判決の是正の機会があります。一審の判決が重すぎるとして、量刑不当により刑が軽くなるケースもあります。一方で、検察官が控訴して一審が無罪判決だったものが控訴審で有罪判決を下されることもあります。