【事例解説】路上でトラブルに発展 正当防衛は成立する?

路上でトラブルになり相手を怪我させてしまった事例を参考に、正当防衛について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。 

事例

Aさんは、ススキノを一人で歩いていたところ6人組の男性たちに、いきなりからまれ金銭を要求されました。 
Aさんは逃げようとしましたが、6人の1人に腕をつかまれパニックになり逃げるために腕を振り上げたところ、相手が後ろに倒れて頭をぶつけたことで怪我を負いました。
通行人の通報で、男性6人とAさんは警察に連れていかれてしましました。
(フィクションです。)

傷害罪

傷害罪は刑法に定められており、その内容は「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」となっています(刑法第204条)。
この場合の「傷害」とは、他人の生命の生理的機能を毀損するものであるとされています。
そのため外傷を与えることは必須ではなく、眠らせる、気絶させることも「傷害」にあたるとされます。
病気にかからせることも含まれ、例えば精神的に追い込むことで精神障害を負わせた場合も、傷害罪は成立します。

正当防衛について

Aさんの行為には正当防衛が成立するでしょうか。
刑法第36条第1項(出典/e-GOV法令検索)には「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。」と定められているため、正当防衛が認められれば違法性がなくなり、犯罪は成立しなくなります。
急迫」とは法益侵害が現に存在している、間近に迫っていることを意味し、「不正」とは違法であることを意味します。
自己又は他人の権利を防衛するため」とあるため、該当する行為は防衛の意思を持って行われている必要があります。
しかし、その機に乗じて加害する意思を持って防衛行為に及ぶと、急迫性がなくなり正当防衛になりません。
そして「やむを得ずにした行為」とあるため、防衛行為は社会的に見て必要かつ相当でなければなりません。
例えば、1回殴られたことに対し、凶器を持って複数殴り返す行為は相当性を欠くため正当防衛は成立しません。
なお、相当性は欠いているが他の要件は満たす、という場合は過剰防衛(刑法第36条第2項)が成立する可能性があります。

事例のAさんの行為は、6人の男性にからまれた上に金銭を要求されていますので「急迫不正の侵害」は認められそうです。 
また、逃げようとしてつかまれた腕を振り上げただけなので、加害の意思はなく「自己または他人の権利を防衛するため」ともいえそうです。 
そして、5人の集団からからまれて、その一人に腕をつかまれたことに対して、腕を振り上げたにとどまるため「やむを得ずにした行為」と認められる可能性も高いでしょう。
そのため、上記のAさんの行為には正当防衛が成立する可能性が高いでしょう。 

正当防衛を主張する場合は各要件を満たしていることが必要であるため、刑事事件に詳しい専門家に客観的な証拠や事情を集めてもらうことが重要になります。
そのため正当防衛の成立を争う場合、弁護士に依頼し弁護活動を依頼することをお勧めします。

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