不正競争防止法について

営業の秘密を奪われたり、類似した商品を勝手に使われたりすれば、消費者を混乱させたり、本来の権利者の営業上の利益が奪われ、公正な経済競争が阻害されてしまいます。これを防ぎ公正な競争を確保するため、不正競争防止法が定められました。

不正競争防止法では、基本的に不正競争に対しては、その行為により営業上の権利を侵害されるものが差し止めたり、既に侵害された利益について損害賠償請求したりする当事者の民事手続きにより是正することで公正な競争の確保を図っています(第2章)。

しかし、公益侵害の程度がはなはだしく、当事者の民事手続きに委ねるだけでは足りない行為に対しては、刑罰を科して是正を図っています。

 

罰則

営業秘密の侵害

不正の利益を得る目的で、人を欺くなどして営業秘密を取得し、また他人の営業秘密を私用し、開示するなどして営業秘密を侵害した者は、権利侵害の程度が大きいことから、10年以下の懲役若しくは2000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます(21条1項)。一部は未遂も処罰されます(21条4項)。

 

その他の不正競争

営業秘密の侵害以外の方法で、不正競争(2条1項)を行ったものなどは、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます(21条2項)。

 

日本国外で使用したとき

日本国外で使用する目的などで営業秘密の侵害をした場合は、権利侵害がより広がることからより重い刑罰となり、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます(21条3項)。一部は未遂も処罰されます(21条4項)。

 

親告罪について

秘密保持命令(裁判所が、不正競争による営業上の利益の侵害に係る民事訴訟において、その当事者が保有する営業秘密について、その営業秘密をその訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は命令を受けた者以外の物に開示してはならない旨を命じたものです。)に違反した罪(21条2項6号)については告訴がなければ起訴されません。その他の罪については告訴がなくとも起訴されえます。

 

国外犯

上記の罪の一部については日本国外で犯した場合も処罰されます(2条7・8・9項)

 

没収

営業秘密の侵害の犯罪行為により生じ若しくは当該犯罪行為により得た財産や犯罪行為の報酬として得た財産などは没収されます(2条10項)。他の財産と混和していても没収されえます(2条11項)。没収できないときはその価額相当分を追徴により支払わされます(2条12項)。

 

両罰規定

法人の役員や従業員が不正競争を行った場合は法人の利益のためにすることが通常です。この個人だけを処罰しても法人に不正な利益が残ってしまいます。そこで、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して各罰金刑を、その人に対して本条の罰金刑を科されます(22条1項)。

  1. 国外使用目的の営業秘密侵害行為の一部 10億円以下の罰金刑
  2. 営業秘密侵害行為の一部 5億円以下の罰金刑
  3. その他の不正競争 3億円以下の罰金刑

 

営業秘密の秘匿決定(23条)

一部の事件について(21条1項、3項、4項の罪又は22条1項(3号を除く。))、当該事件に係る被害者の営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項、被告人その他の者の保有する営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項を公開の法廷で明らかにされたくない旨の申出があるときは、裁判所は、相当と認めるときは、その範囲を定めて、当該事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができます(23条1項3項)。

この場合、営業秘密構成情報特定事項(秘匿決定により公開の法廷で明らかにしないこととされた営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項)に係る名称その他の表現に代わる呼称。

その他の表現を定めることができます(4項)。また、起訴状の朗読などは営業秘密構成情報特定事項を明らかにしない方法で行われます(24条等)。

秘匿決定があった場合において、訴訟関係人のする尋問又は陳述及び訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為が営業秘密構成情報特定事項にわたるときは、これを制限することにより、犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがある場合又は被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き、当該尋問又は陳述を制限することができます(25条1項)。

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