被告人質問と被害者参加制度

被告人質問と被害者参加制度

強制わいせつ事件で起訴された場合に問題となる、刑事裁判での被告人質問被害者参加制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説致します。

【ケース】

北海道札幌市西区在住のAさんは、札幌市西区の会社に勤める会社員です。
Aさんは、札幌市西区で酒に酔って歩いていたところ、通行人Vさんとすれ違い、劣情を催してVさんを路地裏に無理やり連れて行き、下着を脱がせ陰部を触るという強制わいせつ事件を起こし、後日札幌方面西警察署の警察官に逮捕されました。
その後勾留期間を経て起訴されたAさんは、担当する弁護士から「被害者参加制度に基づき被害者が刑事裁判に参加します」との説明を受けました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【強制わいせつ罪について】

今回の事件は、Aさんが酒に酔って通行人である他人Vさんの下着を脱がせて陰部を触る、という行為が問題になります。
問題となる強制わいせつ罪の条文は以下のとおりです。

刑法176条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

なお、わいせつ行為をした際や被害者が抵抗した際に擦り傷の怪我をした場合には、強制わいせつ致傷罪とより重い罪が科せられます。
強制わいせつ致傷罪の罰条は「無期又は3年以上の懲役」で、起訴された場合は裁判員裁判対象事件となります。

【被告人質問について】

刑事裁判では、簡単に説明すると以下の流れで手続きが進められます。

・冒頭手続き(人定質問、起訴状朗読、被告人の権利告知、罪状認否)
・証拠調べ手続(冒頭陳述、検察官立証、弁護側立証、被告人質問、情状立証)
・最終弁論(論告、弁論、最終陳述)
・判決言い渡し

今回は、証拠調べ手続で行われる被告人質問について、解説します。

被告人質問とは、その名のとおり被告人(つまり、犯人として起訴された人)に対して行われる質問です。
被告人質問のタイミングは証拠調べ手続のどこで行っても良いのですが、実務では証拠調べ(証拠書類の提示や証人尋問など)が行われた後に被告人質問を設ける場合が一般的です。
被告人質問の目的は、事件についての弁解や意見を聴くことにあります。
被告人質問では、基本的に弁護人が質問⇒検察官が反対質問⇒裁判官が補充質問、という流れで行われます。

「被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。」と定められているため被告人は供述拒否をする権利が認められていますが(刑事訴訟法311条1項)、裁判官が供述を求めたり、検察官や弁護人が裁判官に対し「被告人に供述を求める」よう促すことができます(同条2項、3項)。

【被害者参加制度と被告人質問】

今回想定している強制わいせつ事件では、わいせつ行為を受けた被害者がいます。
刑事裁判は被告人の有罪/無罪や有罪の場合の刑事罰を決める手続きですので、被害者は直接の当事者ではありませんが、被害者(あるいは、もし被害者が死亡したような事件では被害者遺族)が刑事裁判で意見したり質問したりしたいと考える場合があります。
これを考慮して、2007年の法改正により被害者参加制度が新設されました。
法改正以前も意見陳述の制度はありましたが、被害者参加制度では、意見陳述のほかに証人尋問や被告人質問ができるようになりました。

被害者参加人やその代理人弁護士が被告人質問をしたいと考えた場合、まずは裁判所に申し出ます。
裁判所は、被告人の弁護人に意見を聴き、必要があると認める場合で審理の状況等から相当と認める場合は、被害者参加人により被告人質問を認めます。
被告人質問は意見陳述の手続きとは異なるため、被害者参加人はあくまで「質問」をすることになります。

被害者参加人が行う被告人質問は、多くの場合が代理人弁護士により質問が行われる場合が一般的です。
しかし、ともすれば検察官以上に厳しい質問や答えに窮する質問が行われる可能性があります。
被害者参加等決定をされた事件では、通常の刑事裁判以上に綿密な打合せを行い、想定される質問等について検討する必要があるでしょう。

北海道札幌市西区にて、家族が強制わいせつ事件で逮捕・勾留された、あるいは被害者参加制度で被害者参加人が被告人質問をする可能性があるという場合、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご連絡ください。
弁護士による初回接見サービス(有料)や、在宅事件での無料相談についてご案内致します。

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