飲食店で皿に放尿した事例
昨今、飲食店での不適切な行為を動画に撮影してSNSで拡散するという事例が少なからず見受けられます。一例としては醤油さしや湯呑みなどを舐めたり、除菌用スプレーをライターで引火させたりするなど態様は様々です。
今回は明治時代に発生した「飲食店で客に提供する際に用いる皿(厳密には判例では鋤焼鍋と徳利)に放尿する」という事例を用いて、成立する可能性のある罪と、それに対する弁護活動について、具体的な法律の観点から解説します。
器物損壊罪の成立可否
まず第一に考えられるのが、器物損壊罪の成立です。器物損壊罪は刑法第261条で「…他人の物を損壊し…た者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」と定められています。皿などを割る、という行為は明確な「損壊」に該当するかと思われますが、放尿しただけという場合には言葉どおりの損壊には当たらないように思われます。しかし判例は、客に食事を提供するための皿などに放尿することで、実際には壊れていなかったとしても再びその皿などを使って食事を提供することが心理的に不可能であることから、実際に壊れていなかったとしても効用を害することで使えないと判断されるような場合には、器物損壊罪が成立する旨判示しています。
業務を妨害する罪の成立可否
飲食店で皿に放尿した行為は、店舗の営業に対しても影響を及ぼす可能性があります。
このような行為を動画で撮影して拡散する行為は、客が減少する、あるいは清掃・点検などのため臨時で店を閉める必要が出るなど、営業に悪影響を及ぼす可能性が考えられます。
その場合、刑法第234条の「威力業務妨害罪」や同233条の「偽計業務妨害罪」の成立が検討されます。
業務を妨害する罪は、他人の営業を妨害する行為に対して定められた罪です。
具体的には、放尿によって店舗の営業が実質的に妨害された場合、この罪が適用される可能性が高くなりますが、実際に営業が妨害されたかどうかという点は必ずしも問題にならず、たとえ営業に実質的な妨害がなされなかったとしても、業務を妨害する罪は成立する場合があります。
損害賠償と民事訴訟
皿に放尿するという行為は、飲食店に対して損害を与える可能性が高いです。 このような場合、店側は民法に基づいて損害賠償を請求することができます。 損害賠償の対象となるのは、具体的な物的損害(例:消毒や清掃のコスト)だけでなく、店の評判損失による精神的損害も含まれ得ます。 こうした民事訴訟は、刑事訴訟とは別に進行することが一般的です。 そのため、刑事罰が科されたとしても、その後に民事訴訟でさらなる賠償が求められる可能性があります。
まとめと弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の紹介
本記事では、飲食店で皿に放尿した場合の法的リスクと弁護活動について解説しました。 公然わいせつ罪、業務を妨害する罪など、多角的な視点から成立する罪について説明しました。 さらに、損害賠償と民事訴訟の可能性まで、広範にわたる情報を提供しました。 このような状況に直面した場合、早期の法的対応が非常に重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部では、このような複雑な刑事事件に対しても専門的なアドバイスとサポートを提供しています。 経験豊富な弁護士がお客様一人一人の状況に合わせた最善の防御策をご提案します。 何か問題に直面した際には、ぜひともご相談ください。