替え玉受験で執行猶予

北海道小樽市の替え玉受験事件における執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務札幌支部の弁護士が解説します。

【事例】

北海道小樽市のX大学に通うAさん(21歳)は、大学職員のBさんが密かに替え玉受験のあっせんをしていることを知りました。
そして、AさんはBさんから詳しい話を聞き、受験生のCさんに代わって入学試験を受けることにしました。
Bさんの働きもあって無事試験を受け終えたAさんでしたが、その後この替え玉受験の事実が公となり、遂には北海道小樽警察署の捜査が及びました。
後日、Aさんは有印私文書偽造罪・同行使罪などの共犯の疑いで逮捕され、勾留中に起訴されました。
Aさんの弁護人となった弁護士は、執行猶予の可能性があることをAさんに説明しました。
(フィクションです。)

【替え玉受験は何罪か】

替え玉受験とは、入学試験や資格試験などにおいて、志願者である本来の受験生に代わって別の者が試験を受験する行為を指します。
本来の受験生は入学許可や資格などを、替え玉受験生は合格の対価としての金銭を得ることが一般的な目的です。

替え玉受験に対する制裁は、入学許可などの撤回や受験の禁止といった、内部的な処分に終始するケースがよく見られます。
ですが、仮に刑事事件となった場合、主に以下のような罪が成立する可能性があります。

①文書偽造罪
替え玉受験における答案は、志願者による作成が求められているにもかかわらず、実際には替え玉受験生により作成されています。
そうすると、答案の作成により文書偽造罪が、更に答案の提出により偽造文書行使罪が成立する可能性があります。
ちなみに、このことは本来の受験生が替え玉受験に同意していても変わりません。

②建造物侵入罪
更に、替え玉受験生が替え玉受験のために大学などに立ち入るのは、大学という他人が管理する場所に不当な目的で入ることを意味します。
そうすると、正当な理由なく建造物に侵入したものとして、建造物侵入罪が成立する可能性もあります。

③偽計業務妨害罪
また、替え玉受験は試験の実施主体を欺く行為であり、場合によっては円滑な試験の運営を妨げる危険を有することがありえます。
このことから、偽計業務妨害罪に当たる余地も出てきます。

以上のように、替え玉受験に関与した者には様々な罪が成立するおそれがあると言えます。
そのうえ、替え玉受験というのは周到な計画の下複数人で行われるのが殆どであるため、そのことが不利益な事情となって重い処罰に値すると評価される可能性もあります。
目先の利益に囚われて替え玉受験に関与してしまうと、後々取り返しのつかない事態が生じうることは留意しておくべきです。

【執行猶予について】

執行猶予とは、裁判により有罪となって刑が言い渡された場合に、一定の期間その刑の全部または一部の執行をしないものとする制度のことです。
一部執行猶予の方は、より柔軟に再犯防止と改善更生を図るため、比較的最近になって導入されました。

執行猶予のメリットは、有罪判決を言い渡されたからと言ってすぐに受刑しなくともよい点です。
これにより、懲役を言い渡された直後に刑務所に収容されるという事態を回避できるため、社会復帰が容易になると言えます。
更に、執行猶予を取り消されることなく猶予期間を経過すれば、刑の言い渡しは効力を失うとされています。
つまり、期間中に執行猶予が取り消されるような問題を起こさなければ、もはや刑を受ける必要はなくなります。
ちなみに、一部執行猶予があった場合は、一部以外について服役を終えた後に全部執行猶予と同様の流れになります。

執行猶予を獲得するためには、刑の執行を猶予するに足りる程度の酌むべき事情が必要です。
たとえば、事件について反省している、被害弁償を行った、罪を犯すやむを得ない理由があった、などの事情が挙げられます。
事件が重大であればあるほど、執行猶予を獲得するハードルは高くなることが予想されます。
もし執行猶予の可能性を少しでも高めるのであれば、弁護士に事件を依頼してできる限り有利な証拠を収集してもらうとよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部では、刑事事件の豊富な経験を有する弁護士が、執行猶予の獲得に向けて的確な弁護活動を行います。
ご家族などが替え玉受験をして文書偽造罪などを疑われたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご相談ください。

事務所での法律相談料:初回無料

 

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