控訴

控訴の提起

控訴は地方裁判所又は簡易裁判所のした一審判決に対して行うことができます(刑事訴訟法372条)。その提起期間は判決宣告の翌日から14日です(刑事訴訟法373条)。控訴の申し立ては2審の裁判所ではなく、1審の裁判所です(刑事訴訟法374条)。

 

控訴趣意書

控訴を申し立てて受理されると、控訴趣意書の提出期限が定められ(刑事訴訟法376条1項)、申立人に通知されます(刑事訴訟規則236条1項)。
この提出期限内に控訴趣意書を差し出さなければ、控訴棄却の決定がされてしまいます(刑事訴訟法386条1項1号)。控訴趣意書提出期間は延長することができますが、裁判所の裁量で決められるものです。

また、提出期間の延長の理由は自分の仕事が忙しいなどでは足りず、共犯者が複数いたり、証拠が膨大であったりするなど、事件が複雑であることが必要となります。

 

保釈

控訴審中であっても勾留されていれば保釈請求をすることができます。一審判決が下されて刑罰を受ける可能性が高くなっているためか、保釈が認められにくくなっています。

保釈が認められるとしても一審と比べて保釈保証金が高額となってきます。一審と比べると、おおよそ50万円以上上乗せすることになります。

保釈については、~ 保釈 ~へ

 

控訴の理由

控訴の理由としては、原審裁判所が法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと(刑事訴訟法377条1号)や判決に理由を附さなかった(刑事訴訟法378条4号)など原審裁判所や原判決自体が法令に定める裁判手続に違反している場合があります。

その他の訴訟手続の法令違反はその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかな場合に限られます(刑事訴訟法379条)。控訴審の審理の結果違法はあったが原判決に影響はなかったなどとして控訴棄却されることは多々あります。

その他の控訴理由としては、刑の量刑が不当であること(刑事訴訟法381条)、事実の誤認があってその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであること(刑事訴訟法382条)、法令の適用に誤りがあってその誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであること(刑事訴訟法380条)があります。

 

控訴審の証拠調

第一審において証拠とすることができた証拠は、控訴審においても証拠とすることができます(刑事訴訟法394条)。やむを得ない事由によって第一審の弁論終結前に証拠調べ請求できなかった証拠によって証明することのできる事実であって量刑不当や事実誤認があることを信ずるに足らせるものについては、控訴趣意書で援用することができます(刑事訴訟法382条の2第1項)。

また、裁判所は職権で第一審判決後に刑の量刑に影響を及ぼすべき情状について取調べをすることができます(刑事訴訟法393条2項)。一審中は何もしなかったが、控訴審中は医療施設に通って更生及び薬物事犯の再犯防止に取り組んだこと、などがあります。

 

判決

控訴理由がなければ、控訴棄却の判決がされます(刑事訴訟法396条)。

控訴理由があったり、情状につき取り調べた結果原判決を破棄しなければ明らかに正義に反するときは、原判決破棄の判決がなされます(刑事訴訟法397条1項2項)。

管轄違いや公訴棄却などを理由に原判決を破棄する場合は原裁判所に差し戻しするか管轄のある裁判所に移送します(刑事訴訟法398条・399条)。

その他の理由で原判決を破棄するときは、原則として原裁判所に差し戻すか、原裁判所と同等の裁判所に移送します(刑事訴訟法400条本文)。ただ、控訴裁判所が訴訟記録や自ら取り調べた証拠により直ちに判決することができるときは、自ら判決をすることができます(刑事訴訟法400条但書)。

被告人が控訴した事件については原判決より重い刑を言い渡すことはできないこととなっています(刑事訴訟法402条)。もっとも、検察官も控訴していた場合は原判決より重い判決となり得ます。

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