略式手続きとは
交通事件や暴行事件など大量に発生する事件で、争いがなく、刑も罰金どまりの軽いものまで逐一正式裁判で時間をかけて審理していては、早く終わらせたい被告人にとって面倒なことで、裁判所にも大きな負担となります。そこで、略式手続きが設けられました。
略式手続きの対象
略式手続きの対象は、罰金以下の刑か選択刑に罰金が定められている罪で、100万円以下の罰金又は科料を科す場合です(刑事訴訟法461条)。簡易裁判所が略式命令によって行うことになります。
事前確認
検察官は、略式命令の請求に際しては、被疑者に対し、あらかじめ略式手続きを理解させるために必要な事項を説明し、通常の裁判を受けることができる旨を告げたうえで、略式手続によることについて異議がないかどうかを確かめなければなりません(刑事訴訟法461条の2第1項)。
被疑者は、略式手続きによることについて異議がないときは、略式手続きに同意する書面に署名することになります(刑事訴訟法461条の2第2項)。検察官はこの書面を添付して略式命令請求をします(刑事訴訟法462条)。
いわゆる合意制度の施行後は、他人の刑事事件についての、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意が、被疑者と検察官との間になされていれば、その合意内容書面も裁判所に差し出すことになります(刑事訴訟法462条の2)。
略式命令及び正式裁判の請求
裁判所は、略式命令請求を受けたとき、その事件が略式命令をすることができないか相応しくないと判断した場合や、検察官が被疑者への説明や必要な書面をつけていないときは、正式裁判で行うこととし(刑事訴訟法463条1項2項)、検察官にその旨を通知し(刑事訴訟法463条3項)、被告人(刑事訴訟法463条4項・271条)に起訴状を送達します。
略式命令の請求があった日から4か月以内に略式命令が被告人に告知されないときは、起訴は無効となります(刑事訴訟法463条の2)。
略式命令は、罪となるべき事実、適用した法令、科すべき刑、附随の処分、略式命令の告知があった日から14日以内に正式裁判の請求をすることができることを記載された書面で被告人に届けられます(刑事訴訟法464条)。
被告人は、正式裁判の請求を、略式命令をした裁判所に、書面で行います(刑事訴訟法465条)。正式裁判の請求は第一審判決が出るまで取り下げることができます(刑事訴訟法466条)。
正式裁判の請求期間が経過又は正式裁判の請求の取下げがあったときは、確定判決と同一の効力を生じます(刑事訴訟法470条)。
略式手続きにより終結しても前科となります。
略式命令の注意点
略式命令により罰金を支払う場合、命令が出ると直ちに納付する扱いになっています。特に勾留されている被疑者の場合、即日納付できる見込みがないとなると、検察官は略式命令でなく正式裁判を請求することがあります。
弁護士に依頼して家族や信頼出来る知人に、予測される金額を持参して迎えに来てもらうか、略式命令前に事前に差入れしてもらうことができます。