死者がいなくても裁判員裁判に?
放火事件を起こしたもの、幸運にも死者がいなかったという事件と裁判員裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説致します。
【ケース】
北海道札幌市中央区在住のAは、札幌市中央区内の会社に勤める会社員です。
Aには夫が居ましたが、夫との夫婦喧嘩が絶えず、事件当日も掴み合いの喧嘩をしていました。
我慢が出来なくなったAは、ストーブ用の軽油が入ったタンクの蓋を開け、自宅に巻き散らしてライターで火をつけました。
夫は火災に気が付きすぐに家を出て、消防局に通報して消火が行われた結果、Aらの住む家以外は燃焼せずに済みました。
消防署からの通報を受けて臨場した札幌市中央区を管轄する中央警察署の警察官は、Aを現住建造物放火罪で現行犯逮捕しました。
Aの夫は、Aの接見に行った刑事事件専門の弁護士に、Aの行為は重罪で裁判員裁判になると聞かされました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【現住建造物放火罪について】
放火という行為がいかに危険な行為か、ここで改めて説明するまでもないかと思われます。
当然、放火をした場合には刑事責任が問われ刑事罰を科せられる可能性があります。
ではどのような罪に問われるかというと、客体、すなわち放火した建物や物がどのようなものかによって異なります。
ケースの場合、Aを含めた「人が住む住居」に放火していることから、現住建造物放火という罪になります。
条文についてはこの欄の下に書いていますが、罰条は「死刑又は無期若しくは五年以上の有期懲役に処する。」と、殺人罪と同じ重さになっています。
これは、自分の家なのか他人の家なのか、あるいは人が死傷したか死傷していないのかを問いません。
刑法108条 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
【裁判員裁判とは】
裁判員裁判は、平成21年5月に開始した比較的新しい制度です。
通常の裁判は、司法試験に合格した者の中から裁判官に任官された者1~3名(一審の場合)により裁判が進められ、判決が言い渡されます。
一方で裁判員裁判の場合には裁判官3名に加え、一般人から選出された裁判員6名を含め9名による合議体が形成され、有罪無罪の判断およびその量刑を検討し、判決を言い渡します。
裁判員裁判の対象となる事件は重大事件に限られていて、原則として①死刑又は無期の懲役・禁錮にあたる罪に係る事件で②法廷合議事件であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させる罪に係るもの、としています。
具体的には殺人罪や強盗致死傷罪、傷害致死罪、危険運転致死罪、身代金目的誘拐罪、保護責任者遺棄致死罪、覚醒剤取締法違反(営利目的輸入)や、ケースのような強制性交等致傷事件などがあります。
建造物放火罪も裁判員裁判の対象事件です。
裁判員裁判というと人を死傷させる事件を想像しがちですが、直接的な被害者がいない覚醒剤密輸や、ケースのように幸運にも人が死傷しなかった建造物放火罪であっても、上記①②にあてはまる事件であれば裁判員裁判の対象になるのです。
裁判員裁判は公判前整理手続が必ず行われるなど、一般の刑事裁判とは異なる手続きがとられます。
また、裁判員は一般の方ですので、一般の方に対して分かりやすく説明する書証や質問、説明が重要になります。
そのため、既に裁判員裁判を経験したことがある弁護士事務所に弁護を依頼することをお勧めします。
北海道札幌市中央区にて、御家族が現住建造物放火などの裁判員裁判対象事件で逮捕された場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部に御連絡ください。
刑事事件・少年事件を専門とする弁護士が逮捕・勾留されている方の留置先に行って接見を行い、今後の見通しや必要な弁護活動について御説明致します(有料)。