司法取引-証拠収集等への協力及び訴追に関する合意

司法取引とは

司法取引とは、海外で採用されている司法制度で、自分の罪を認める代わりに罪を軽くしてもらう、あるいは起訴されないことを確約する制度です。

日本では「証拠収集等への協力及び訴追に関する合意」(合意制度)が刑事訴訟法350条の2以下に定められ、平成30年6月に施行されることが予定されています。

 

証拠収集等への協力及び訴追に関する合意(合意制度)

特定犯罪

どのような事件でも合意できるわけではなく、「特定犯罪」という、犯罪の性質上多数人で組織的に行う犯罪に係る事件限られています(350条2項)。特定犯罪として、強制執行妨害や談合、各種文書偽造、有価証券偽造、贈収賄、詐欺・背任・恐喝、各種横領(1号)、組織的犯罪(2号)、租税、私的独占などの財政経済関係犯罪(3号)、爆発物、薬物、銃器犯罪(4号)、犯人蔵匿や証拠隠滅(5号)が挙げられています。

 

他人の刑事事件

合意できる事件は、「他人の刑事事件」です。自分だけが被疑者・被告人となる事件の犯罪事実を認めても合意対象にはなりません。共犯者は「他人」にあたり、主に共犯者についての情報を供述させることがこの制度の狙いです。

「他人の刑事事件」ならば何でも良いという訳ではなく、得られる証拠の重要性、関係する犯罪の軽重及び情状、関係する犯罪の関連性の程度などの事情を考慮して合意が認められます。自分が全く無関係な事件については合意することはできません。

そもそも何人にも証言義務はあり(刑事訴訟法143条)、全く無関係な犯罪であれば自分が刑事訴追を受けることもないことから証言拒絶権もないことになります(刑事訴訟法145条)ので、合意制度がなくても証言を強制されます。

 

弁護人の同意

この合意をするには弁護人の同意がなければならず(刑事訴訟法350条の3第1項)、合意は検察官、被疑者又は被告人、弁護人が連署した書面により、その内容を明らかにしてすることになります(刑事訴訟法350条の3第2項)。

合意のために必要な協議は検察官、被疑者又は被告人、弁護人の三者の間で行われます(刑事訴訟法350条の4)。被疑者又は被告人と弁護人に異議がないときは、協議の一部を検察官と弁護人のみとの間で行うことができます(刑事訴訟法350条の4但書)。

被疑者又は被告人が一人で検察官と協議することはできないようになっています。この協議において、検察官は被疑者又は被告人に他人の刑事事件についての供述を求めることができます(刑事訴訟法350条の5第1項)が、合意が成立しなかったときはこの供述を証拠とすることはできません(刑事訴訟法350条の5第2項)。

 

合意の内容

合意の内容として、被疑者・被告人は、警察官や検察官の取調べに際して真実の供述をし、証人として尋問を受ける場合は真実の供述をし、捜査機関による証拠収集に関し証拠の提出などをして協力しなければなりません(刑事訴訟法350条の2第1項1号イロハ)。

一方、検察官は、不起訴、起訴の取消し、合意した罪状だけで起訴することあるいは合意した罪状に変更すること、合意した刑罰を科すよう意見陳述すること、即決裁判手続きや略式命令請求すること、などをしなければなりません(刑事訴訟法350条の2第1項2号各号)。

検察官は、合意の内容を明らかにした書面(刑事訴訟法350条の3第2項。合意内容書面と言われます)の取調べを請求しなければなりません(刑事訴訟法350条の7、8、9)。

 

合意からの離脱、合意の失効

合意に反する事態が起きた場合、それにより不利益を受ける者は合意から離脱することができます(刑事訴訟法350条の10)。

合意の相手方が違反した場合(1号)以外にも、裁判所が検察官の陳述や求刑を容れなかった場合の被疑者・被告人(2号)、被疑者・被告人の供述が真実ではないと明らかになった場合の検察官(3号)です。合意からの離脱はその理由を記載した書面により、合意の相手方に対して告知して行います(2項)。

この書面も検察官は証拠調べ請求をしなければなりません(刑事訴訟法350条の7第2項、350条の8、9)。検察官が合意により起訴しない処分をした事件について、検察審査会が起訴相当、不起訴不当、起訴をすべき旨の起訴議決をしたときは、合意は効力を失います(刑事訴訟法350条の11)。検察審査会の議決により起訴した事件については、協議の際の供述や合意による供述は証拠とすることはできません(刑事訴訟法350条の12)。

 

合意違反の効果

検察官が合意に違反して起訴したり、起訴の取下げをしなかった場合は、裁判所は公訴棄却の判決をします(刑事訴訟法350条の13第1項)。

特定の訴因及び罰条により公訴を維持する合意をしたにもかかわらず訴因変更などをしても裁判所はこれを許してはならないことになっています(刑事訴訟法350条の13第2項)。検察官が合意に違反した場合、協議中の供述及び合意により得られた証拠は証拠として用いることはできません(刑事訴訟法350条の14第1項)。

ただし、合意した被告人及び他の事件で証拠とされる場合のその他人が証拠とすることに同意した場合はなお証拠として用いることができます(刑事訴訟法350条の14第2項)。合意した被告人と他人の双方の同意があって、なお証拠として用いることが許されることからすれば、検察官が合意に違反した場合同意した被告人の事件と他人の事件との両方で証拠として用いることはできなくなると考えられます。

被告人が合意に違反して虚偽の供述をしたり証拠を偽造した場合は5年以下の懲役に処されます(刑事訴訟法350条の15第1項)。

 

合意する被疑者・被告人

合意すれば被疑者・被告人は不起訴の約束を得たり、合意以上の刑を科されないなどの利益を得られます。

そのため、被疑者・被告人は合意する誘惑にさらされます。捜査官の誘導により記憶と異なる供述をするよう流されるおそれは十分にあります。ここで記憶に反する供述をして後日供述が虚偽とされれば、虚偽供述をしたとして5年以下の懲役に処されてしまいます。

協議の場における供述では弁護人が必ず同席しているため弁護人の助けを得られますが、合意に基づく供述の場では通常の捜査と同じく弁護人の立ち合いは保証されていません。また、合意に基づく供述が合意した被告人自身の刑事事件で証拠として用いられる可能性があります。弁護人は被疑者・被告人と緻密に打合せ、虚偽供述をさせられないようにするとともに、供述の信用性も精査して合意以上の不利益を受けないようにします。

 

「他人の刑事事件」の「他人」である被疑者・被告人

合意したからといってそれにより得られた証拠の信用性まで担保されたとはいえません。特に合意した被疑者・被告人は不起訴等の利益に誘導され捜査機関の言うままに供述してしまうおそれがあります。証拠の関連性や供述の情況を精査して供述の信用性を争います。

 

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