児童にたいする性犯罪について

13歳未満の児童に対しては、同意があっても強制性交等や強制わいせつが成立します。しかし、児童が13歳以上であっても、成人と比べ特に性的搾取や虐待に会いやすく、また児童の心身に与える影響は極めて大きいことになります。そこで、児童の保護のため、特別な定めがあります。

 

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護に関する法律

(以下、この頁では「法」と書きます。)

法2条1項で、「児童」とは18歳に満たない者と定められています。

ポルノ規制のためには漫画やゲームなどの登場人物の児童の性描写も取り締まる必要があり、漫画やゲームに登場する18歳未満の者も法のいう「児童」にあたるか議論がありますが、法の1条は「児童の権利を擁護することを目的」としており、保護の対象が実在する児童であることは明らかです。児童を性欲の対象とする風潮を防止するなどという観念を直接保護しているわけではありません。

したがって、モデルが実在すらしていない児童の性的な描写のある漫画やゲームを持っていても、同法違反では処罰されません。

法は2条2項では児童買春について次のように定めております。

この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。

一 児童

二 児童に対する性交等の周旋をした者

三 児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者

児童本人以外の大人にお金を渡しても児童買春に当たります。一方、誰に対して何ら利益の供与なく児童と性交等をしてもここで禁止されている児童買春には当たらないことになります。

児童買春をした者は5年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます(法4条)。児童買春のあっせんをした者、あっせんをする目的で人に児童買春をするように勧誘をした者は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処され、またはこれらの罪を併科されます(法5条1項、6条1項)。

これらを業としたものは、7年以下の懲役及び1000万円以下の罰金に処されます。

法は2条3項で児童ポルノについて次のように定めております。

この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。

一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態

二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部(でんぶ)又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

写真やパソコン、スマートフォンなどのデータで児童を相手、または児童による性交や性交類似行為を写したもの。

他人が児童の性器などを触る行為又は児童が他人の性器を触る行為における児童の姿態を写したもの、
児童に布地の小さい水着を着せて写したもの、
用便中の児童を盗撮したもの、

などが当たります。公共の場所を歩いている女子児童のスカートの中を盗撮したようなものは基本的に児童ポルノには当たりません。

なお、「描写」は基本的に写真撮影です。しかし、CGなどでも精巧に作られ、被写体を忠実に再現したようなものは、被写体となる人物が児童と認識でき、被写体と同一と認められるようなものであれば「児童ポルノ」に該当する可能性があります。

自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます(法7条1項)。

「自己の性的好奇心を満たす目的」が必要であり、親が幼い子供の裸で動き回るところを撮影した場合は一応「児童ポルノ」を所持していることになりますが、「自己の性的好奇心を満たす目的」がないため本罪に当たりません。

児童ポルノを提供した者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処されます(法7条2項)。これは「自己の性的好奇心を満たす目的」がなくとも成立します。児童ポルノを製造や所持した場合も同様に罰されます(法7条3項から5項)。

不特定もしくは多数の者に提供し、または公然と陳列した者は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処され、またはこれを併科されます(法6条6項)。不特定多数への提供、公然陳列目的で製造や輸出入した者も同様に罰
されます(法6条7項、8項)。

児童買春や児童ポルノ製造目的で児童を売買した者は1年以上10年以下の懲役に(法8条1項)、さらに外国の児童をその居住国外に移送した日本国民は2年以上20年以下の懲役に処されます(法8条2項)。

 

児童福祉法

児童に淫行をさせる行為をした者は10年以下の懲役もしくは300万円以内の罰金に処されるか、この両方を科されます(児童福祉法34条1項6号・60条1項)。

児童は満18歳に満たない者です。

「淫行」については「児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいうと解するのが相当であり、児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は、同号にいう「淫行」に含まれる。」とされています。

「淫行させる行為」とは、「直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をも包含する」とされています(最高裁第二小法廷決定昭和40年4月30日)。

「そのような行為に当たるか否かは,行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断する」とされています(平成28年6月21日最高裁第一小法廷決定)。

学校の教師が自分が担任をしている生徒に性交をする場合などが当たります。

 

淫行条例

上記の法律によれば、お金を出したりせず、写真も撮ったりせず、初めて会ったような13歳以上の青少年と性交等をした場合は処罰されないことになります。

そのような場合でも青少年の健全な育成を害すると考えて、各都道府県は「青少年保護育成条例」、「青少年健全育成条例」といった都道府県の条例で青少年に対する性交を処罰しています。

長野県の平成28年11月施行の「子供を性被害から守るための条例」をもって、すべての都道府県で青少年に対する淫行が処罰されることになりました。

北海道の場合は、「北海道青少年健全育成条例」があり、以下のように定めています。

第38条 何人も、青少年に対し淫行又はわいせつな行為をしてはならない。

2 何人も、青少年にわいせつな行為をさせてはならない。

3 何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつな行為を教え、又は見せてはならない。

また、これらの行為が青少年に対して行われ、又は青少年がこれらの行為を行うことを知って、場所を提供し、又はあっせんすることを禁じています(同条例40条2号)

38条1項又は2項に反すれば2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(同条例57条1項)。38条3項に反すれば1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(同58条)。40条に反した者は、30万円以下の罰金に処されます(同61条4号。)
 
「淫行」や「みだらな」については、児童福祉法の場合と似ていますが、最高裁判所が「「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく,青少年を誘惑し,威迫し,欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。」(最高裁昭和60年10月23日大法廷判決)との判断を示し、その後の条例の適用も最高裁のこの解釈に従っています。

もっとも、これではどのような場合がこの「淫行」や「みだらな」に当たるか、当たらないかは明らかではありません。結婚を前提とする場合は当たらないなどとされていますが、結婚を前提とせずとも真剣交際中はどうなるのかなどの問題があります。

なお、他の法令は特に違反者が成人か青少年かを区別していませんが、淫行条例では、条例違反者自身が青少年のときは免責されます(北海道青少年健全育成条例68条など)。

 

児童の年齢について

児童に対する性犯罪も故意犯ですので、各法令に定められた年齢未満の者であることを認識し、またはしえたことが必要です。もしかしたら18歳未満かもと思っていても故意があると言えます。軽々しく18歳以上だと思っただけでは故意がないとは認められないことが多いです。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護に関する法律では9条で、児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由に児童買春のあっせんや売春の勧誘、児童ポルノの提供や製造、人身売買による処罰を免れることはできないと定められています。

ただし、知らないことに過失がないときは処罰されないと定められています。北海道青少年健全育成条例65条も同様に定められています。

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