上告の提起
上告は高等裁判所のした一審判決又は二審の判決に対して行うことができます(刑事訴訟法405条)。その提起期間は控訴と同じく、前審の判決宣告の翌日から14日です(刑事訴訟法373条・414条)。上告の申し立ても最高裁判所ではなく、前審の高等裁判所です(刑事訴訟法374・414条)。
上告趣意書
上告を申し立てて受理されると、上告趣意書の提出期限が定められ(刑事訴訟法376条1項・414条)、申立人に通知されます(刑事訴訟規則236条1項・266条)。この提出期限内に上告趣意書を差し出さなければ、上告棄却の決定がされてしまいます(刑事訴訟法386条1項1号・414条)。
上告趣意書提出期間も延長することができますが、裁判所の裁量で決められるものです。また、提出期間の延長の理由は自分の仕事が忙しいなどでは足りず、共犯者が複数いたり、証拠が膨大であったりするなど、事件が複雑であることが必要となります。
保釈
上告審中であっても勾留されていれば保釈請求をすることができます。もはや最終審であり刑罰を受ける可能性が高くなっているためか、保釈が認められにくくなっています。保釈が認められるとしても一審二審と比べて保釈保証金が高額となってきます。二審と比べると、さらに50万円以上上乗せすることになります。
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上告申立理由
上告の理由は、控訴の理由よりさらに制限されており、憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤りがあること(刑事訴訟法405条1号)、最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと(刑事訴訟法405条2号)、最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所である高等裁判所の判例又は刑事訴訟法施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと(刑事訴訟法405条3号)の3つに限られています。
上告受理
上告申し立て理由がなくとも、最高裁判所は、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については、その判決確定前に限り、自ら上告審としてその事件を受理することができることになっています(刑事訴訟法406条)。上告に当たっては、上告理由だけでなく上告受理を狙って上告趣意書を作成することになります。
弁論を経ない上告棄却の判決
上告裁判所は、上告趣意書その他の書類によって、上告の申立の理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、判決で上告を棄却することができます(刑事訴訟法408条)。多くの事件はこの方法により処理されています。
判決
上告申立理由があるときは、判決で原判決は破棄されます(刑事訴訟法410条1項本文)。
ただし、判決に影響を及ぼさないことが明らかであるときは、上告は棄却されます(刑事訴訟法410条1項但書)。
また、従来の判例に反するときに、判例変更をして原判決を維持するのが相当であるときも、上告は棄却されます(刑事訴訟法410条2項)。
上告理由がなくとも、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること(刑事訴訟法411条1号)、刑の量定が著しく不当であること(刑事訴訟法411条2号)、判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること(刑事訴訟法411条3号)、再審の請求をすることができる場合に当たる事由があること(刑事訴訟法411条4号)、判決があった後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があったこと(刑事訴訟法411条5号)といった事由があって原判決を破棄しなければ明らかに正義に反するときは、原判決破棄の判決がなされます(刑事訴訟法411条)。
不法に管轄を認めたことを理由に原判決を破棄する場合は管轄権のある控訴裁判所又は一審裁判所に移送します(刑事訴訟法412条)。その他の理由で原判決を破棄するときは、原則として原裁判所又は一審裁判所に差し戻すか、原裁判所と同等の裁判所に移送します(刑事訴訟法413条本文)。
ただ、上告裁判所が訴訟記録や原裁判所及び一審裁判所で取り調べた証拠により直ちに判決することができるときは、自ら判決をすることができます(刑事訴訟法413条但書)。
被告人が上告した事件については原判決より重い刑を言い渡すことはできないこととなっています(刑事訴訟法402条・414条)。もっとも、検察官も控訴していた場合は原判決より重い判決となり得ます。