放火事件でポリグラフ検査
放火事件で問題となる罪と、ポリグラフ検査という捜査手法について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説致します。
【ケース】
北海道日高郡新ひだか町在住のAは、ある日を境に後を付けられているような気がしました。
気になったAは後を付けていた者に何者かと声掛けしたところ、日高郡新ひだか町を管轄する札幌方面静内警察署の警察官であることを告げ、後日任意で出頭するよう求められました。
指定された日時に静内警察署に出頭したAは、取調室に入るよう言われ、そこで放火の嫌疑がかかっていることを知らされました。
Aは自身には身に覚えのないことだと否認を貫いたところ、警察官からは、次はポリグラフ検査を行うから同意してくださいと言われました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【放火で問題となる罪】
故意に火をつける行為を放火と呼び、例えば調理中に誤って火災を生じさせてしまう失火と区別されます。
放火に関する罪は、被疑者・被告人が何に火をつけたのかにより区別され、罰条もそれぞれ異なります。
①人がいる建物や住宅に放火した
オフィスや飲食店といった人がいる建物に放火した、あるいは、住宅などに放火した場合には、現住建造物等放火罪が成立します。
たとえ人が死傷しなかった場合でも、厳しい刑罰を科せられる可能性がある罪です。
罰条:死刑または無期もしくは五年以上の懲役に処する。(刑法108条)
②非現住建造物等放火罪
人がいない建物・住居として使用していない建物に放火した場合には、非現住建造物等放火罪が適用されます。
例えばオフィスビルが無人だった場合には②が適用されますが、オフィスに人が残っていた場合には①が適用されるということになります。
罰条:自己所有の建造物については一年以下の懲役又は十万円以下の罰金(刑法109条2項)
※但し、公共の危険を生じなかった場合には不可罰
:自己所有ではない建造物については二年以上の有期懲役(刑法109条1項)
③建造物等以外放火罪
①②にあたらない物に放火した場合には建造物等以外放火罪が適用される可能性が高いです。
罰則:自己所有物であれば一年以下の懲役又は十万円以下の罰金
※但し、公共の危険が生じなかった場合には不可罰
:自己所有ではない物であれば一年以上十年以下の懲役
※但し、公共の危険が生じなかった場合には不可罰
なお、①②にあたらない場合に、③ではなく森林法などの特別法に違反する場合もあります。
【ポリグラフ検査とは】
ポリグラフ検査は、被疑者が否認しているが、捜査機関はその者が事件に関与していると考えている場合などに用いられます。
ポリグラフ検査というと噓発見器と思いがちですが、その表現は正確ではなく、自分の記憶に反したことを言っている場合に反応する心拍数や発汗量などを測定する機械です。
ポリグラフ検査を行うためには被検者である被疑者の同意が必要です。
例えば、家宅捜索は任意で協力しなければ令状を用いた強制捜査ができますが、ポリグラフ検査の場合は令状による強制捜査はできません。
ポリグラフ検査を行うのは刑事課などの取調官ではなく、科学捜査研究所の専門技師です。
ポリグラフ検査は必ずしも証拠として使うために用いられるわけではなく、捜査機関が否認している被疑者を認めに転じさせるための心理的な作戦として用いることが考えられます。
一方で、証拠書類として請求することも考えられます。
このポリグラフ検査について、過去の判例を見ると、証拠能力を肯定している場合があります。
弁護士としては、起訴後に検察官側がポリグラフ検査を用いた証拠を請求した場合、同意するべきか否か慎重に判断する場合があるでしょう。
北海道日高郡新ひだか町にて、放火などの罪でポリグラフ検査の同意を求められた場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご相談ください。
在宅事件の場合、事務所にて無料でご相談いただけます。