保釈を認めてほしい
逮捕・勾留されて正式起訴されたら、その後も勾留で身体拘束が継続されるのが原則です。
保釈の手続きについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。
<保釈とは>
保釈は、保釈保証金を裁判所へ預けることを条件として、勾留の執行を停止し、被告人を釈放する制度です。
起訴された後の被告人について認められ、起訴前の被疑者には認められません。
保釈には、権利保釈、裁量保釈、義務的保釈の3つがあります。
請求による保釈と職権による保釈があります。
保釈の裁判は勾留ごとになされますので、保釈が認められたとしても、別罪で逮捕・勾留されて釈放されないことがあります。
保釈に関する処分は、第一回公判期日までは裁判官が行い、その後は裁判所が行います。
保釈請求は、上訴申立ての有無にかかわらず、上訴提起期間中にもすることができます。
裁判所・裁判官が、保釈の判断をする前に、検察官の意見を聴かなければなりません。
保釈許否の裁判に対しては、抗告・準抗告の申立てをして争うことができます。
保釈許可の裁判に対しても、保釈保証金の額や保釈条件に不服があるときは、不服を申し立てることができます。
保釈を許す場合には、保証金額を定めなければなりません。
保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければなりません。
保証金の没取という威嚇によって、被告人の逃亡を防止することを目的としています。
この保証金の没取という威嚇は、罪証隠滅の防止をも目的としています。
実刑判決後の再保釈の場合は、金額が第一審のときよりも高くなる場合がほとんどです。
保釈を許す場合には、被告人の住居を制限しその他適当と認める条件を附することができます。
保釈にあたっては、ほとんど全ての場合に制限住居が定められています。
適当と認める条件とは、被告人の逃亡および罪証隠滅を防止するのに必要かつ有効な条件をいいます。
通常付されている条件として、住居変更につき裁判所の許可を得ること、ある日数以上の旅行につき裁判所の許可を得ること、被害者等事件関係者に対する直接または弁護人を除く他の者を介しての接触禁止、などがあります。
保釈を許す決定は、保証金の納付後に執行され、釈放されることになります。
保釈保証金の準備が厳しい場合は、日本保釈支援協会や全国弁護士共同組合連合会などから手数料を支払って借りることもできます。
<権利保釈>
刑法第89条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
刑事訴訟法第89条は、適法な保釈の請求があったときは、本条各号所定の事由がある場合を除き、必ず保釈を許さなければならないとして、権利保釈を定めております。
禁錮以上の刑に処する判決の宣告があった後は、権利保釈は認められません。
逃亡や再犯のおそれは、権利保釈の除外事由とされていません。
特に、4号の罪証隠滅のおそれが最も問題となります。
罪証隠滅のおそれは具体的・実質的に判断されるべきですが、裁判官・裁判所はこのおそれを簡単に認めている傾向があります。
<裁量保釈>
同第90条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
権利保釈が認められなかったとしても、刑事訴訟法第90条の考慮事情を判断して、保釈が認められる場合があります。
中心となるのは、「保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度」であり、具体的・実質的に判断されることになります。
犯罪の性質、情状、被告人の経歴、行状、性格、前科、健康状態、家族関係、公判審理の進行状況等諸般の事情を総合考慮して判断されることになります。
裁量保釈が相当であるかは、勾留されている犯罪事実について中心に考えるべきですが、判断資料として他の犯罪事実が考慮されることがあります。
<義務的保釈>
同第91条 勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。
勾留が不当に長くなったら、義務として保釈は認められなければならなくなります。
しかし、不当に長いというのは、単なる時間的観念ではなく、事案の性質、犯罪の軽重、審理の経過、審判の難易等諸般の状況から総合的に判断されるべき相対的な観念とされています。
そのため、この義務的保釈が認められることはほとんどありません。
<保釈の取消と保証金の没収>
同第96条 裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。
一 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
二 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
四 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
五 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
② 保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で保証金の全部又は一部を没取することができる。
③ 保釈された者が、刑の言渡を受けその判決が確定した後、執行のため呼出を受け正当な理由がなく出頭しないとき、又は逃亡したときは、検察官の請求により、決定で保証金の全部又は一部を没取しなければならない。
刑事訴訟法第96条の取消事由があれば、裁判官・裁判所の裁量により、保釈が取り消され、保釈保証金が没収されることがあります。
保釈取消・保釈保証金没収の裁判に対しては、抗告・準抗告の申立てをして争うことができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部では、これまで数多くの保釈請求を行ってきました。
身体拘束されている期間は、精神的にも肉体的にも厳しいものがあります。
保釈を通すには専門家の周到な検討と準備が必要です。
北海道で逮捕・勾留され、保釈も含めて相談・依頼したいという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の弁護士による有料の初回接見サービスをご利用ください。
接見して状況を確認した後、説明させていただいた後に、正式契約となったら事件を対応させていただきます。
迅速な対応が必要となりますので、お早めにご相談ください。