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【お客様の声】覚醒剤所持事件で準抗告認容により釈放

2023-07-09

【お客様の声】覚醒剤所持事件で準抗告認容により釈放

覚醒剤を所持していた嫌疑で在宅捜査を行ったのち逮捕され勾留されたものの、勾留の決定に対する準抗告申立てを行い、準抗告が認容され釈放になったという事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説致します。

【事例】

北海道美唄市在住のAさんは、美唄市内の会社に勤める会社員です。
ある日、美唄市内を管轄する美唄警察署の警察官がAさんの家を訪れ、覚醒剤取締法違反で家宅捜索を行いました。
家宅捜索の結果、Aさんの部屋からごく少量の覚醒剤が入ったビニール袋と、覚醒剤を使用する際に利用する器具が発見され、警察官はAさんを在宅で捜査することにしました。

家宅捜索後に当事務所の弁護士による無料相談を受けたAさんは、検討のうえ当事務所の弁護士に弁護を依頼しました。
弁護士は、Aさんの捜査を担当する美唄警察署の警察官に対し、Aさんに逃亡や証拠隠滅のおそれがないとして在宅で捜査を進めるよう求めましたが、警察官はそれは難しいと説明しました。
そして、実際に鑑定の結果が出たのち、Aさんは通常逮捕され、弁護士が勾留しないよう求めたものの勾留が認められました。
そこで弁護士は、勾留の決定を行った裁判に対して不服申立ての手続きである準抗告の申立てを行いました。
結果的に弁護士が行った準抗告は認められ、Aさんは釈放されました。

≪守秘義務・個人情報保護のため、事件地や一部事件内容を変更しています。≫

【身柄拘束の手続きについて】

今回のAさんの事件では、弁護士はAさんの身柄拘束が不要である事案であると考え、まず弁護士は捜査機関(今回は警察官と検察官)と勾留の判断をする裁判官に対して勾留をしないよう求めましたが、警察官が逮捕し、検察官が勾留を請求し、勾留の請求を受けた裁判所の勾留裁判官は、Aさんに勾留が必要であると判断し、勾留の決定を下しました。

勾留請求は逮捕から72時間以内に行われる必要があり、裁判官が勾留を決定したことから、Aさんは勾留請求の日から10日間、身柄拘束されることになりました。
また、勾留は原則1度延長ができることから、最大で20日間、身柄拘束されることになります。

【勾留に対する準抗告申立て】

前章で勾留の手続きについて簡単に説明しましたが、勾留に対しては、不服申立ての手続きである準抗告申立てと、勾留の決定後に事情が変ったことを理由に勾留の取消しを求める勾留取消請求を行う手続きにより、釈放を求めることができます。

準抗告については、不服申立ての手続きですので、勾留の判断が誤りであるという主張を行います。
準抗告を受けた裁判所は、勾留の決定を下した裁判官とは別の裁判官が3人集まり(合議体)、勾留の判断について検討します。
弁護士が行った準抗告が認められた場合(認容された場合)には釈放されることになります。

なお、勾留の判断に際し裁判官が勾留却下の判断をした場合に、検察官が準抗告を申立てる場合もあります。
これについて合議体が勾留の判断が妥当ではないと判断した場合、勾留却下の判断は覆され、被疑者は勾留されます。

薬物事件の場合、釈放は極めて難しいと言えますが、今回のAさんの事例のように準抗告申立てなどにより釈放が認められる場合もあります。
覚醒剤所持の嫌疑でご家族が逮捕され勾留された場合、諦めることなく弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご連絡ください。
まずは弁護士が初回接見サービス(有料)を行い、準抗告が認められる可能性がある事件なのか等を確認のうえ、御報告致します。

【お客様の声】取調べでの言動に対して警察署へ抗議

2023-07-06

【お客様の声】取調べでの言動に対して警察署へ抗議

準強制わいせつ事件を起こしたとして捜査を受けていた事件で、警察署に抗議文を送付したという事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説致します。

【事例】

北海道夕張郡在住のAさんは、夕張郡内で出張マッサージの仕事をしています。
ある日、夕張郡内を管轄する栗山警察署の警察官から連絡があり、出頭するよう言われました。
心当たりがない中で出頭したAさんは、警察官から「何で呼ばれたか分かっているだろう」「心当たりがないはずがないだろう」と大声で聴かれたうえ、分からないと伝えたところ「マッサージを受けた女性が陰部を触られたと言っている」と言いました。
Aさんは「心当たりはない」「弁護士に相談したい」と言ったところ、更に厳しい口調で詰問されました。
更には、ポリグラフ検査(俗に言う噓発見器)を用いたり「お前の性癖も調べるぞ」と言ったりする等して、精神的に追い詰めるような言動が見受けられました。

Aさんは当事務所の弁護士による無料相談を受け、弁護を依頼されました。
弁護士は、まずはAさんから取調べでの状況について丁寧に聞き取りを行い、問題点を列挙したうえで、書面化して栗山警察署宛に抗議文を内容証明郵便で郵送しました。
その内容としては、
①当該取調官(警察官)の威圧的・威迫的な言動や態度を改めること
②取調べの様子を録音録画すること
を目的としていました。

弁護士が抗議文を郵送した後に行われたAさんの取調べでは、①取調官の態度は改善され、②取調べ状況の録音録画も行われました。

最終的に、Aさんの事件では検察官送致(いわゆる書類送検)すらされることなく、終了しました。
Aさんは事件化しなかったという結果に加え、取調べでの不安を払拭されたことに大変満足されていました。

≪守秘義務・個人情報保護のため、事件地や一部事件内容を変更しています。≫

【被疑者の取調べ】

取調べを受けている時点で、対象者は「被疑者」つまり罪を犯したと疑われている者であり、疑いが事実であるかどうかは不明です。
しかし、準強制わいせつ罪のような密室で行われていて目撃者がいないような事件の場合、警察官や検察官などの取調官は先に被害者の話(被害申告・供述調書)を見聞きすることから、被疑者が罪を犯したという認識で取調べを行う場合が少なくありません。
今回のAさんの場合も、施術を受けた者が被害申告した内容を前提に、警察官がAさんの取調べを行っています。
そのため、初めからAさんが「心当たりがない」と言っているにもかかわらず、嘘をついていることを前提に厳しい取調べが行われたと想像されます。

【取調べでの抗議】

Aさんのように、話を聞いてもらえず、厳しい口調で取調べが行われる、という場合は少なくありません。
そのような取調べが行われている場合、弁護士に依頼をして、弁護士に抗議文の提出や取調べ同行などの適切な対応により状況を改善することが望ましいと言えるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部では、これまでに数多くの刑事事件・少年事件の弁護活動を行ってきました。
Aさん以外にも、取調べで威迫的・脅迫的な取調べが行われ、精神的に追い詰められたことから、抗議文を提出したり取調べに同行したりといった活動を行いました。
北海道夕張郡にて、準強制わいせつ罪で取調べを受けている方、厳しい取調べで抗議して欲しいという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご連絡ください。

【新法】性的姿態撮影等処罰法の解説

2023-06-30

【新法】性的姿態撮影等処罰法の解説

国会で,「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下,「性的姿態撮影等処罰法」)が成立しました。
今回は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が,性的姿態撮影等処罰法の犯罪に関する部分の概要を解説いたします。

<目的>

性的姿態撮影等処罰法は,性的な姿態を撮影する行為やこれにより生成された記録を提供する行為等を処罰することを目的としております。
同時に,性的な姿態を撮影する行為により生じた物を複写した物等の没収を可能とし,あわせて,押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等の措置をすることによって,性的な姿態を撮影する行為等による被害の発生及び拡大を防止することを目的としております。

これまでは盗撮は各地方公共団体の条例により処罰されておりましたが,本法律により全国一律に処罰されることになり,法定刑もより重くなりました。
本法律は,日本国外において罪を犯した日本国民にも適用されます。
令和5年7月13日から施行されます。

<性的姿態等撮影罪>

以下の行為をした者は,3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金になります。

1 正当な理由がないのに,ひそかに,次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち,人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部,臀部又は胸部)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており,かつ,性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか,わいせつな行為又は性交等(性交,肛門性交,口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの)がされている間における人の姿態
2 不同意わいせつ罪の刑法第176条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により,同意しない意思を形成し,表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて,人の対象性的姿態等を撮影する行為
3 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ,若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ,又はそれらの誤信をしていることに乗じて,人の対象性的姿態等を撮影する行為
4 正当な理由がないのに,13歳未満の者を対象として,その性的姿態等を撮影し,又は13歳以上16歳未満の者を対象として,当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が,その性的姿態等を撮影する行為

これらの罪の未遂も罰せられます。
これらの罪と同時に,不同意わいせつ罪等が成立する可能性もあります。

不同意わいせつ罪の刑法第176条第1項各号
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し,表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ,若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し,若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

<性的影像記録提供等罪>

性的影像記録(性的姿態等撮影罪等により生成された電磁的記録その他の記録又は当該記録の全部若しくは一部を複写したもの)を提供した者は,3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金となります。
性的影像記録を不特定若しくは多数の者に提供し,又は公然と陳列した者は,5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し,又はこれを併科することになります。

<性的影像記録保管罪>

性的影像記録提供等罪をする目的で,性的影像記録を保管した者は,2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金となります。

<性的姿態等影像送信罪>

不特定又は多数の者に対し,以下の行為をした者は,5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し,又はこれを併科することになります。

1 正当な理由がないのに,送信されることの情を知らない者の対象性的姿態等の影像(性的影像記録に係るものを除く。次号及び第三号において同じ。)の影像送信(電気通信回線を通じて,影像を送ることをいう。以下同じ。)をする行為
2 不同意わいせつ罪の刑法第176条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により,同意しない意思を形成し,表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて,人の対象性的姿態等の影像の影像送信をする行為
3 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ,若しくは不特定若しくは多数の者に送信されないとの誤信をさせ,又はそれらの誤信をしていることに乗じて,人の対象性的姿態等の影像の影像送信をする行為
4 正当な理由がないのに,13歳未満の者の性的姿態等の影像(性的影像記録に係るものを除く。以下この号において同じ。)の影像送信をし,又は13歳以上16歳未満の者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が,当該13歳以上16歳未満の者の性的姿態等の影像の影像送信をする行為

情を知って,不特定又は多数の者に対し,前項各号のいずれかに掲げる行為により影像送信をされた影像の影像送信をした者も,同様に処罰されます。
これらの罪と同時に,不同意わいせつ罪等が成立する可能性もあります。

<性的姿態等影像記録罪>

情を知って,性的姿態等影像送信罪により影像送信をされた影像を記録した者は,3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金となります。
未遂も罰せられます。

これまでは各地方公共団体の条例で処罰されていた盗撮等が,国の法律で一律に処罰されることになり,しかも法定刑もより重いものになりました。
盗撮等をした場合,今後はより厳しい処分を受ける可能性が高まります。
逮捕され,身体拘束が長くなり,刑罰も重いものになるかもしれません。
事件を起こしてしまった場合,取調べ対応・被害者対応・裁判対応について,早い段階から検討して方針を決めなければなりません。
専門の弁護士によるサポートが必要になってきます。

<事務所紹介>

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は,刑事を専門とする弁護士が迅速に対応いたしますので,お気軽にお電話ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部では,刑事事件に関するご相談を初回無料で承っております。
無料法律相談のご予約は
フリーダイヤル0120-631-881(24時間受付中)
までお気軽にお電話ください。
家族が盗撮等の刑事事件で逮捕された場合は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の弁護士による有料の初回接見サービスをご利用ください。
接見して状況を確認した後,説明させていただいた後に,正式契約となったら事件を対応させていただきます。
迅速な対応が必要となりますので,お早めにご相談ください。

弁護士の接見交通権とは

2023-06-27

弁護士の接見交通権とは

被疑者・被告人が勾留されている状況での接見交通権について、例外的に行われる接見指定などと併せて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説致します。

【事例】

北海道岩見沢市在住のAさんは、岩見沢市内の会社に勤める会社員です。
Aさんは、知人Xさん、Yさんと打合せをしたうえで、岩見沢市内に住むVさんに因縁をつけて脅迫し、現金200万円を脅し取りました。
Vさんから恐喝事件での被害届を受けた岩見沢市内を管轄する岩見沢警察署の警察官は、Aさんらを恐喝罪で通常逮捕しました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【恐喝罪について】

今回のケースでは、Aさん、Xさん、YさんがVさんに因縁をつけて脅迫し、現金200万円を脅し取ったという事例を想定しています。
恐喝罪の条文は以下のとおりです。

刑法249条1項 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

【接見交通権について】

接見交通権とは、簡単に言うと逮捕・勾留されている被疑者・被告人と弁護人とが自由に面会することを認めるルールです。
ここでいう用語について触れておきます。

被疑者:罪を犯したと疑われ捜査されている人
被告人:罪を犯したと疑われ起訴されて刑事裁判を受ける前、あるいは裁判を受けている最中の人
弁護人:司法試験に合格して弁護士として登録し、且つ、その事件の被疑者・被告人の弁護をする立場にある者

接見交通権は刑事訴訟法で以下のとおり保障されています。

刑事訴訟法39条1項 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第31条第2項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。

よって、弁護人(及び弁護人になろうとする者、以下では「弁護人等」)は、立会人なしでの接見や書類の授受が認められています。
というのも、一般の方が面会をするうえでは、

・平日の日中の時間帯にしかできない
・逮捕段階では面会は認められていない
・時間は原則15分未満
・面会時には警察官などの立会いがある
・手紙などは内容を確認される

といった厳しい制約がありますが、弁護人等にはこれらの制限がありません。
理屈上は、24時間365日接見を行うことができるということになります。
(最も、護送中あるいは病院で受診をしている等、接見室が使えないような状況下で物理的に接見が出来ない場合もあります。)

【接見交通権と接見指定】

接見交通権が認められているため弁護人等は被疑者・被告人と自由に接見をすることができますが、例外的に、接見が制限される場合があります。

刑事訴訟法39条3項 検察官、検察事務官又は司法警察職員…は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第1項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。

まず、接見を制限できるのは起訴前、すなわち被疑者段階に限られます。
起訴された被告人に対しては、制限は及びません。
次に、接見を制限できるのは「捜査のため必要がある」場合に限られます。
そして、その場合に警察官や検察官・検察事務官は、弁護人等に対して、接見等の日時等を指定することができるとしています。
ゆえに、接見を制限することはできても、接見を禁止することはできません。

以前は、この接見指定が多く活用され、弁護人等であっても接見の時間は15分まで、といった厳しい時間的制約があったようです。
しかし、この接見指定について争った裁判で、最高裁は

・原則としていつでも接見の機会を与えなければならない
・「取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合」にのみ制限できる
・その場合、弁護人と協議してできる限り速やかな接見のための日時等を指定することで、被疑者が弁護人と防禦の準備をすることができるような措置を取る必要がある

としています。(最判平3・5・10ほか)

現在では、弁護人が接見を制限される場合としては、別の弁護士接見が行われていて接見室が空いていない場合や、検察庁・裁判所での接見の場合など、それほど多くありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所では、弁護活動の最中に接見交通権が侵害された場合、捜査機関に対し抗議をするなど毅然とした態度で対応します。
それだけ、刑事弁護において接見交通権は重要な権利と言えます。
北海道岩見沢市にて、恐喝事件で家族が逮捕された場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の弁護士による初回接見サービス(有料)をご利用ください。

強盗をして逮捕された

2023-06-24

強盗をして逮捕された

強盗罪を犯してしまったら,逮捕・勾留され,実刑で長期間刑務所に入る可能性があります。
被害者への示談活動や,事実を争うのであればきちんと裁判の準備をしなければなりません。
今回は,強盗罪について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。

【強盗罪の成立要件】

(強盗)
第236条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は,強盗の罪とし,五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者も,同項と同様とする。

本条は,財産的法益だけでなく人格的法益も保護法益としております。
財物に対する占有を奪取する犯罪である点で窃盗罪と共通しますが,暴行・脅迫を財物奪取の手段とする点でより重く処罰するものです。

暴行は,身体に向けられた不法な有形力の行使をいいます。
脅迫は,害悪の告知をいいます。
財物奪取の目的遂行の障害となり得る者に対して加えられれば足り,必ずしも財物を所持する者に加えられる必要はありません。

暴行・脅迫の程度としては,被害者の反抗を抑圧するに足りるものであることを要します。
被害者に加えられた暴行・脅迫の程度の判断は,社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものかどうかという客観的基準によって決められます。
客観的に反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫が加えられた以上,現実に被害者の反抗が抑圧されなかったとしても,強盗罪における暴行・脅迫となります。
暴行・脅迫の程度の判断は,暴行・脅迫の態様だけではなく,犯行場所・犯行時刻・周囲の状況・相手方の性別・年齢・体格等も考慮して具体的に判断されることになります。

強取とは,相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を手段として,財物の事実上の占有を自己又は第三者に取得させることをいいます。
行為者が相手方から財物を奪取する場合はもちろん,相手方が交付した財物を受領することも,それが相手方の自由意思に基づくものでない限り,強取に当たります。
暴行・脅迫により反抗を抑圧された被害者が気付かないうちに財物を奪取した場合,反抗を抑圧された被害者が財物を放置して逃げた後にこれを取得した場合も,強取に当たります。
反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を加えて財物を取得した場合には,仮に相手方に恐怖心を抱かせたものの反抗を抑圧するに至らなかったとしても,強盗(既遂)罪が成立します。
被害者が専ら犯人を憐れんで財物を交付した場合には,意思に反する財物の交付があったとはいえず,暴行・脅迫が手段となっているともいい難いので,強取に当たらず,強盗未遂罪となります。
暴行・脅迫を加えて財物を奪取する意思で,まず財物を奪取した後に被害者に暴行・脅迫を加えた場合も,強取に当たります。

本罪は故意犯であり,暴行・脅迫を加えて相手方の反抗を抑圧し,その財物を奪取することの認識を有することが必要です。
故意に加えて,不法領得の意思が必要です。
不法領得の意思は,権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいいます。

本条第2項の強盗利得罪は,財産上不法の利益を得るとは,不法に財産上の利益を得ることをいいます。
財産上の利益とは,本条第1項の財物以外のすべての財産上の利益を指し,積極的財産の増加であると,消極的財産の減少であるとを問いません。
債務の免除・履行期の延期・債務負担の約束・財産的価値のある役務(輸送サービス等)の提供等は,いずれも財産上の利益に当たります。
必ずしも相手方による処分行為を必要とするものではなく,反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を加えた結果,相手方が事実上償務の弁済請求ができない状態に陥った等の場合には,強盗利得罪が成立します。

実行の着手は,財物奪取の目的で相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を加えた時点で認められます。
財物奪取の意図なく暴行・脅迫を加え,相手方の反抗抑圧状態に乗じて財物を奪取する場合には,財物奪取に着手した時点で強盗罪の実行の着手が認められます。

既遂は財物の取得の時期を基準とし,暴行・脅迫により財物に対する被害者の占有を排し,これを自己又は第三者の実力支配下に置いた時に,既遂となります。

相手方の反抗を抑圧するに足りない程度の暴行・脅迫により,瑕疵があるものの一応相手方の意思に基づく占有の移転があれば,恐喝罪となります。

【窃盗の後の行為により成立する事後強盗罪】

(事後強盗)
第238条 窃盗が,財物を得てこれを取り返されることを防ぎ,逮捕を免れ,又は罪跡を隠滅するために,暴行又は脅迫をしたときは,強盗として論ずる。

事後強盗罪は,窃盗犯人が財物を取得した後に人に発見されてこれを取り返されるのを防ぐ目的で暴行・脅迫を加えた場合,あるいは財物取得の有無を問わず,逮捕を免れ又は罪跡を隠滅する目的で暴行・脅迫を加える場合に成立します。
居直り強盗と同様にその犯行形態の実質的違法性やしばしば相手の殺傷という重大な結果を伴う点で,その処分について強盗と同様に取り扱うこととしたものです。
本罪は昏酔強盗とともに準強盗と呼ばれております。

本罪は窃盗犯人を主体とする犯罪です。
窃盗犯人とは,窃盗の実行に着手した者をいい,財物を取り返されることを防ぐ目的の場合は窃盗が既遂となっていることが前提となりますが,それ以外の目的の場合は未遂・既遂を問わないことになります。

本罪が成立するためには,財物を取り返されることを防ぐ目的・逮捕を免れる目的・罪跡を隠滅する目的のうち,少なくともいずれか1個の目的で相手に暴行・脅迫を加えることが必要です。
犯人にこのような目的があれば足り,相手が現実に財物を取り返そうとしたり犯人を逮捕しようとしていたか否かは問いません。

財物を得てこれを取り返されることを防ぐ目的は,暴行・脅迫によることなく財物を自己の事実上の占有下に置いた後,被害者側からその財物を取り返されるのを防ぐ目的をいいます。

逮捕を免れる目的は,窃盗未遂又は既遂の犯人が,被害者や警察官等から取り押さえられて身柄を拘束されるのを防ぐ目的をいいます。
現に相手が逮捕しようとする必要はなく,自己が逮捕される事態を回避するために暴行・脅迫を加えた場合も,本罪が成立します。

罪跡を隠滅する目的は,後日窃盗犯人として検挙され,処罰されることになると認められる罪跡を隠滅しようとする意図をいいます。

事後強盗罪も強盗として論じられる以上,暴行・脅迫の程度も,強盗罪の場合と同様に相手の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要します。
強盗罪の場合と同様に,暴行・脅迫の態様のほか,犯行場所,犯行時刻,周囲の状況,相手方の性別・年齢・体格等を考慮し,当該暴行・脅迫が,相手方の財物の取返しや窃盗犯人の逮捕等の意思を制圧するに足りる程度のものであるかを客観的に判断することになります。
暴行・脅迫の相手方は,窃盗の被害者だけではなく,財物を取り返そうとする者・窃盗犯人を逮捕しようとする者など,本条所定の各目的を遂げるのに障害となる者であれば足ります。

事後強盗罪が成立するためには,財物取得の場面と暴行・脅迫の場面との間の場所的・時間的関係や,状況としての繋がりなどを総合して,当該暴行・脅迫が財物の取得と密接な関連性を有すると認められる状況の下に行われることが必要です。

本罪の実行の着手は,窃盗犯人が,本条所定の目的で相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫に着手した時点で認められます。
事後強盗強盗として論じられる以上,その既遂・未遂の基準も強盗罪と同様に財物取得の有無,窃盗の既遂・未遂により決せられます。

【被害者を眠らせたり気絶させたりして財産を奪う昏睡強盗罪】

(昏酔強盗)
第239条 人を昏酔させてその財物を盗取した者は,強盗として論ずる。

相手方を昏酔させてその反抗を抑圧し,財物を盗取する行為は,暴行・脅迫を手段としなくてもその実質的違法性の程度は強盗罪と同程度であり,強盗として取り扱われることになります。
本罪は事後強盗とともに準強盗と呼ばれます。

昏酔させるとは,一時的又は継続的に,相手方に意識喪失その他意識又は運動機能の障害を生じさせて,財物に対する有効な支配を及ぼし得ない状態に陥らせることをいいます。
失神させたり,眠らせたり,麻痺させたりすることをいいます。
方法は,薬物や麻酔薬の使用等が考えらます。
相手を昏酔させる行為は,財物盗取の目的でされなければなりません。

盗取とは,相手方が昏酔状態にあり,財物奪取を阻止し得ない状態にあることに乗じて,財物を奪取して財物を自己の事実的支配の下に置くことをいいます。

実行の着手は,財物盗取の目的で相手方を昏酔させる行為に着手した時に認められます。
既遂時期は,他人の占有を排除し,財物を自己の事実的支配の下に置いた時となります。

【強盗に関する特別法】

他に特別罪として,以下のものがあります。

盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律
第2条 常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第二百三十五条,第二百三十六条,第二百三十八条若ハ第二百三十九条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ竊盗ヲ以テ論ズベキトキハ三年以上,強盗ヲ以テ論ズベキトキハ七年以上ノ有期懲役ニ処ス
一 兇器ヲ携帯シテ犯シタルトキ
二 二人以上現場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ
三 門戸牆壁等ヲ踰越損壊シ又ハ鎖鑰ヲ開キ人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
四 夜間人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
第3条 常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三回以上六月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル
第4条 常習トシテ刑法第二百四十条ノ罪(人ヲ傷シタルトキニ限ル)又ハ第二百四十一条第一項ノ罪ヲ犯シタル者ハ無期又ハ十年以上ノ懲役ニ処ス

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は,刑事を専門とする弁護士が迅速に対応いたしますので,お気軽にお電話ください。
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無料法律相談のご予約は
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窃盗事件を起こしてしまった

2023-06-21

窃盗事件を起こしてしまった

窃盗事件を起こしてしまったら,逮捕・勾留されて刑事処分を受けることになってしまうかもしれません。
被害者への示談活動や,事実を争うのであればきちんと裁判の準備をしなければなりません。
今回は,窃盗罪について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。

【窃盗罪が成立するための要件】

(窃盗)
第235条 他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

窃盗罪の保護法益は,占有です。
社会における財産的秩序は,所有権等の本権の存否自体よりも,むしろ占有が有する本権推定機能に対する信頼を基礎にしていると考え,財物の所持自体が保護されるべき対象であるとされています。
刑法第242条は,「自己の財物であっても,他人が占有し,又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは,この章の罪については,他人の財物とみなす。」とされていて,自己の財物でも他人が所持する物は窃盗罪の客体となることを示しております。
法令上所持を禁じられている物に関しても,法律上正当にこれを所持する権限を有するかどうかを問わず,物の所持という事実上の状態それ自体が独立の法益として保護されることになります。
共同占有物・共有物の場合には,共同占有者の1人が他の者の占有を排除して自己の単独占有に移せば,その限りで占有・本権の侵害があることになるから,本罪が成立することになります。

占有・所持は,人が物を実力的に支配する状態,物を事実上支配・管理する状態をいいます。
このような事実上の支配があるとするためには,主観的要素としての支配の意思と,客観的要素としての支配の事実が必要です。
支配の意思とは,物を事実上支配・管理しようという意欲・意思をいいます。
事実上の支配をなし得る能力が全くない者,生まれたばかりの赤ん坊等は,占有の主体とはなり得ません。
支配の意思は,必ずしも個々特定の財物に向けられた具体的なものであることを必要とせず,時間的・場所的に包括的なもので足ります。
自宅や倉庫内に存在する財物については,その存在を具体的に知らなくても支配意思が認められるし,不在のときも支配の意思が認められます。
支配の意思は,不断に積極的意思が存続することを必要とせず,潜在的に支配を継続する意思があれば足ります。
積極的に支配を放棄する意思が示されない以上,一時自宅の中で所在を失念している物にも支配意思は及んでいるし,睡眠中のような財物の存在を意識しない状況のときでも支配意思は損なわれません。
支配の事実は,占有の客観的要素であります。
必ずしも現実の握特を必要とせず,単純に物理的に判断されるものではありません。
具体的事案で事実上の支配・占有の有無を決するについては,財物自体の特性,占有者の支配の意思の強弱,距離等による客観的・物理的な支配関係の強弱,等で判断されます。

窃取とは,財物の占有者の意思に反して,その占有を侵害し,自己又は第三者の占有に移すことです。
実行の着手は,他人の財物の占有を侵害する具体的危険が発生する行為を行った時点で認められます。
具体的事案において判断する場合には,対象となる財物の形状,窃取行為の態様,犯行の日時・場所等の諸般の状況が考慮されることになります。
既遂時期については,犯人が目的となる財物の他人の占有を排除して,自己又は第三者の占有に移した時点となります。
具体的事案における既遂時期の判断に当たっては,実行の着手の判断と同様に,対象となる財物の形状,窃取行為の態様,犯行の日時・場所等の諸般の状況が勘案されることになります。

本罪は故意犯であり,財物の占有者の意思に反して,その占有を侵害し,自己又は第三者の占有に移すことについての認識が必要となります。
金銭的な利欲目的の存在は必要ありません。
故意については,錯誤があるときが問題となります。
客体について他人所有物を無主物と誤信していれば,窃盗の故意を欠くことになります。
目的物を占有離脱物と誤信していれば,窃盗の故意を欠き,占有離脱物横領罪で処断されることになります。
目的物を自己所有と誤信しても,他人が占有していることを併せて認識していれば,故意は認められます。
他人の所有・占有を認識していれば,その他人が誰であるかを誤信していても,故意の存在に影響はありません。

故意の他に,不法領得の意思が必要となります。
不法領得の意思とは,権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいいます。
前段の権利者排除意思の部分が,使用窃盗・一時使用を窃盗罪として罰しない機能を果たし,
後段の利用・処分意思が,毀棄・隠匿罪と区別する基準としての機能を果たすことになります。
経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思にいう経済的用法とは,その物の本来の用途にかなったとか,財物から生じる何らかの効用を享受するということで足ります。
利用し又は処分することも,必ずしも経済的な意義を有する必要はありません。
性的目的で下着を盗んだ場合等も,窃盗罪が成立します。

本罪が既遂に達した後は,犯罪は終了し違法状態が継続していると考えられるから,この段階で犯人が目的物を損壊したり費消したりしても,それは既に窃盗罪によって包括的に評価されているので,不可罰的事後行為となり,別に器物損壊罪や横領罪は成立しません。
窃盗罪では評価され尽くしていない新たな法益侵害を伴う場合は,別個の罪が成立します。
盗品を売却する際に買主を欺けば,詐欺罪が成立します。
窃取した預貯金通帳を利用して,真正な権利者であるように装って預金を払い戻した場合も,詐欺罪が成立します。
窃取したキャッシュカードや騙取したローンカードを不正に利用して,現金自動支払機から現金を払い戻せば,自動支払機の管理者との関係で現金の窃盗罪が成立します。

【窃盗罪以外に問題となる特別法の条文】

窃盗罪の特別法として,以下のものがあります。

盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律
(常習特殊窃盗罪)
第2条 常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第二百三十五条,第二百三十六条,第二百三十八条若ハ第二百三十九条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ竊盗ヲ以テ論ズベキトキハ三年以上,強盗ヲ以テ論ズベキトキハ七年以上ノ有期懲役ニ処ス
一 兇器ヲ携帯シテ犯シタルトキ
二 二人以上現場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ
三 門戸牆壁等ヲ踰越損壊シ又ハ鎖鑰ヲ開キ人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
四 夜間人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
(常習累犯窃盗罪)
第3条 常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三回以上六月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル

森林法
第197条 森林においてその産物(人工を加えたものを含む。)を窃取した者は,森林窃盗とし,三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

【事務所紹介】

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強制性交等罪で逮捕された

2023-06-15

強制性交等罪で逮捕された

強制性交等罪を犯してしまったら,逮捕・勾留され,実刑で長期間刑務所に入る可能性が高いと言えます。
被害者への示談活動や,事実を争うのであればきちんと裁判の準備をしなければなりません。
今回は,強制性交等罪・準強制性交等罪について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。

・(被害者が13歳以上)強制性交等罪が成立する場合とは

(強制性交等)
第177条 十三歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いて性交,肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は,強制性交等の罪とし,五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し,性交等をした者も,同様とする。

個人の性的自由・性的自己決定権を保護法益とします。
被害者となり得る人は,女性に限らず,男性も含まれます。
加害者も,男性だけでなく,女性も含まれます。

暴行は,身体に向けられた不法な有形力の行使をいいます。
脅迫は,害悪の告知をいいます。
暴行・脅迫は,性交等をしようとする相手方に対して向けられる必要があります。
脅迫は,その告知した内容が虚偽のものであってもよく,犯人が害悪の実現に影響力を有するものとして告知されれば足ります。
暴行・脅迫は,被害者の反抗を著しく困難にする程度のもので足り,反抗を抑圧する程度に達する必要はありません。
その程度については,暴行・脅迫の態様のほか,時間的・場所的状況,被害者の年齢・精神状態等の諸般の事情を考慮して客観的に判断されることになります。
性犯罪に直面した被害者が恐怖のあまり抵抗できなくなることも少なくない等という被害者の心理や,被害者と相手方との関係性等を十分踏まえた検討がなされることになります。
暴行のみを断片的に取り上げればそれ自体はそれほど強いものとはいえなくても,その余の事情として被害者が被害を受けるに至ったそれまでの経過やその際に置かれていた立場・状況等をも併せて考慮して,当該暴行が被害者の性的意思決定の自由を抑圧し,反抗を著しく困難にする程度に達するといえるものか判断することになります。

本条の実行行為としては,性交に加え,肛門性交及び口腔性交が含まれており,これらを性交等といいます。
性交とは,膣内に陰茎を入れる行為をいいます。
肛門性交とは,肛門内に陰茎を入れる行為をいいます。
口腔性交とは,口腔内に陰茎を入れる行為をいいます。
性交等には,行為者が自己又は第三者の陰茎を被害者の膣内・肛門内・口腔内に入れる行為だけでなく,自己又は第三者の膣内・肛門内・口腔内に被害者の陰茎を入れる行為を含みます。

因果関係として,暴行・脅迫が性交等の時点まで継続する必要はないが,暴行・脅迫によって反抗を著しく困難にする状態が性交等の時点においても存在することが必要です。

・(被害者が13歳未満)強制性交等罪が成立する場合とは

被害者が13歳未満の場合は,暴行・脅迫がなくても成立します。

13歳未満の者に対する場合を除き,被害者の真意に基づく承諾があれば,本罪は成立しません。
承諾は,自由な意思決定による真意のものである必要があります。
黙示の承諾でもよいが,その場逃れのための真意に基づかないときは,承諾する旨の言動があったとしても,ここにいう承諾ではありません。
反抗を著しく困難にする程度の暴行・脅迫があるときは,特別の事情がない限り,自由な意思決定による真意の承諾とは認められないことになります。

本罪は,故意犯です。
前段については,13歳以上であることの認識は不要であり,後段については,13歳未満であることの認識が必要です。
被害者が自由な意思決定による真意の承諾をしたものと誤信したときは,故意を欠くことになります。
しかし,安易に信じても,故意が阻却されることはありません。
誤信の有無についても,被害者の心理等に関連する心理学的・精神医学的知見等を踏まえた上で,犯人の認識していた事実等に基づき,適切に判断される必要があります。
反抗を著しく困難にする程度の暴行・脅迫を自ら行った場合に,被害者の真意の承諾があると誤信したと認められるには,特別の客観的事情の存在が必要です。

実行の着手時期は,前段では手段となる暴行・脅迫を開始した時点,後段では性交等に至る客観的な危険性が認められる行為を開始した時点,となります。
手段となる暴行・脅迫といえるには,性交等の遂行を可能にするような客観的事情が必要です。
性交等の行為を行った時点で既遂となります。
性器の一部没入で既遂に達し,射精することを要しません。

・相手がお酒や薬などで意識がハッキリしない中での性交等

(準強制性交等)
第178条 2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて,性交等をした者は,前条の例による。

本条が適用されるのは,13歳以上の者に対し,その心神喪失又は抗拒不能の状態に乗じ,あるいは暴行・脅迫によらずに心神喪失又は抗拒不能にして,性交等をした場合です。

心神喪失とは,精神的な障害によって正常な判断力を失った状態をいいます。
抗拒不能とは,心理的又は物理的に抵抗ができない状態をいいます。
類型的には,睡眠・酩酊・高度の精神遅滞等のように被害者が性交等について認識できない場合と,他の行為を装ったときのように性交等自体については認識しながらも錯誤のために自由意思に従って行動する能力を失っている場合があります。
心神喪失・抗拒不能の程度については,完全不能でなくともよく,反抗が著しく困難な状態で足り,常識的に不能といえれば認められます。

実行行為は,心神喪失又は抗拒不能の状態を利用して,あるいは暴行・脅迫によらずに心神喪失又は抗拒不能にして,性交等をすることです。
心神喪失又は抗拒不能の状態を利用した例としては,被害者が高度の精神遅滞の状態にあるのを利用した場合,睡眠中であるのを利用した場合,泥酔状態にあるのを利用した場合,第三者の暴行・脅迫によって抗拒不能の状態にあるのを利用した場合などがあります。
他方,暴行・脅迫によらずに心神喪失又は抗拒不能にした例としては,被害者に密かに睡眠剤を飲ませ,あるいは催眠術を使うなどしてそのような状態にした場合があります。
以上のような例に対し,詐欺的手段,例えば,結婚の約束や金品の贈与の約束等によって,主観的には抗拒不能の状態になったとしても,それは動機の錯誤ないし緑由の錯誤に過ぎず,客観的には承諾しないことも可能な状況にあると認められるから,本条に該当しません。

故意として,被害者が心神喪失又は抗拒不能の状態にあることを認識していることが必要です。

着手時期は,心神喪失又は抗拒不能に乗じた場合には,性交等に至る客観的な危険性が認められる行為を開始した時点です。
性交等に向けて通常行われる行為やそれに接着した行為を開始することが必要です。
他方,心神を喪失させ又は抗拒不能にさせて性交等をした場合の着手時期は,性交等を行う目的をもって手段となる行為,心神を喪失させ又は抗拒不能にさせる行為を開始した時点となります。

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スピード違反で書類送検

2023-06-12

スピード違反で書類送検

スピード違反により書類送検されたという事例を想定して、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説致します。

【ケース】

北海道千歳市在住のAさんは、千歳市内の会社に勤務する会社員です。
Aさんは事件当日、法定速度である60km/h以下で走行する必要がある公道で103km/hにて走行していました。
Aさんのスピード違反を現認した北海道警察署の警察官は、Aさんを後方から追尾する方法でスピード違反を確認し、千歳市内にある千歳警察署に同行を求めました。

Aさんは2度の取調べを受けたのち、書類送検される旨の説明を受けました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【スピード違反について】

我が国で自動車や二輪車等を運転する場合、道路交通法をはじめとする法律に則って運転をすることが義務付けられています。
そのうち、運転をする速度については、道路交通法22条1項で「車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。」と定められていて、具体的には道路交通法施行規則にて「法第22条第1項の政令で定める最高速度…のうち、自動車及び原動機付自転車が高速自動車国道の本線車道…以外の道路を通行する場合の最高速度は、自動車にあつては60キロメートル毎時、原動機付自転車にあつては30キロメートル毎時とする。」と定められています。
よって、普通自動車の場合、法定速度である60km/hを超える速度で運転することは禁止されています。(高速自動車国道については100km/h(同法27条1項1号))
また、40km/h等と最高速度を制限している道路においては、その速度を超えた速度で運転することが出来ません。
これに違反した場合、速度超過となり、道路交通法に違反することとなります。
故意に速度超過した場合の法定刑は「6月以下の懲役又は10万円以下の罰金」(道路交通法118条1項1号)です。

通常、超過速度が30km/h未満(高速道路では40km/h)の場合は交通反則告知書(俗に言う青切符)で処理されます。
一方で、超過速度が30km/h以上の場合、告知書(俗に言う赤切符)での処理になるため罰金となる可能性があります。
また、80km/h以上の場合には正式裁判になり、禁錮刑あるいは懲役刑が言い渡される可能性があります。

【書類送検について】

書類送検という言葉は事件報道などでよく耳にすると思われます。
警察官などの捜査機関により捜査(例えば、取調べや実況見分など)が行われた後、一部の軽微な犯罪の除き、原則として検察官に事件が送られます。
被疑者が逮捕されている場合、逮捕から48時間以内に検察官に送致されます。
しかし在宅で捜査が行われた場合、身柄拘束は行われていないため、書類のみが送致されます。
これを俗に書類送検と言います。

在宅で捜査を受けている方は切迫感に欠けるため、自身が書類送検されるという認識がない(あるいはその説明を受けていたが忘れていた)という方も多く、突然検察庁から郵便物や連絡が来て驚くという方も少なくありません。
また、慌てて検察官による取調べを受けた結果、自身の認識とは異なる調書が出来上がったり、よくわからないまま略式手続に同意して前科が付いてしまうという方もおられます。
書類送検が見込まれる事件では、書類送検される前に弁護士に相談・依頼をして、必要な弁護活動を進めていくことが望ましいと言えるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所では、スピード違反を含め多くの交通事件・事故の弁護活動を経験してきました。
北海道千歳市にて、スピード違反により捜査を受けている方、書類送検される可能性がある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご連絡ください。

詐欺で逮捕された

2023-06-09

詐欺で逮捕された

詐欺事件を起こしてしまったら,逮捕・勾留され,長期間身体拘束される可能性があります。
金額が大きかったり前科がある場合は,実刑で刑務所に入ることになるかもしれません。
早期に弁護士を通じて釈放を求めて,被害者と示談交渉をする必要があります。
事実関係について争いがあれば,取調べ対応を慎重にして,裁判に備える必要があります。
今回は,詐欺罪・特に刑法第246条第1項の詐欺罪について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。

・詐欺罪の条文

(詐欺)
第246条 人を欺いて財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する。

・詐欺の相手方

詐欺罪の保護法益は,個人の財物の占有です。
物の所持という事実上の状態それ自体が保護されます。
他人の占有する他人の財物が客体となります。
財物の所有者としての他人は,自然人であると法人その他の団体であるとを問いません。
国や地方公共団体も含まれます。
動産だけでなく,不動産も含まれます。

・詐欺罪に当たる行為

行為は,人を欺いて財物を交付させることです。
欺く行為の相手方は,必ずしも財物の所有者又は占有者であることを要しないが,その財物について事実上又は法律上財産的処分行為をなし得る権限ないし地位を有する者でなければなりません。
欺く行為は,必ずしも特定人に向けられる必要はなく,いわゆる広告詐欺のように,不特定人に向けられたものでも認められます。
訴訟詐欺は,裁判所を欺いて勝訴の判決を得,敗訴者から財物を交付させる場合をいいます。
欺かれた者と財物の交付者とが異なるが,詐欺罪が成立します。
一方,クレジットカード詐欺は,クレジット会員が代金支払の意思も能力もないのに自己名義のクレジットカードを使用して,加盟店から物品を購入し又は飲食する場合をいいます。
加盟店に対する関係で1項詐欺罪が認められます。
不正に入手した他人名義又は架空名義のクレジットカードを使用して,加盟店から物品を入手する場合について,加盟店に対する1項詐欺罪が認められます。

欺くとは,人を錯誤に陥らせる行為をすることをいいます。
錯誤とは,観念と真実との不一致を指します。
機械を相手とする詐欺的行為は,人を欺く行為ではないから,詐欺罪とはならず,窃盗罪となります。
欺く手段・方法は,何らの制限もなく,言語によるものでも動作によるものでもよく,直接的な方法によるものでも間接的な方法によるものでも認められます。
作為によると不作為によるとを問いません。
積極的に詐術を用い,虚偽の事実を告知する場合はもちろん,事実を告知しないことにより,相手方が既に錯誤に陥っている状態を継続させ利用する場合も,詐欺罪は成立し得ます。
ただし,当該不作為が詐欺罪にいう欺く行為に当たるといえるためには,不作為犯が成立するための法的な告知義務が行為者に認められる場合であることを要します。
法的な告知義務が認められる場合としては,法令に規定されている場合のほか,契約上・慣習上・条理上認められる場合もあり得ます。
人を欺く行為は,これにより相手方が錯誤に陥り,行為者の希望するような財産的処分行為をするに至らせるような性質のものであることが必要です。
必ずしも法律行為の要素に関する虚偽の表示であることを要せず,法律行為の動機に関して錯誤に陥らせる場合でも,相手方が真実を知れば財物の交付をしないであろうというべき重要な事項につき虚偽の意思表示をするものであれば,詐欺罪に当たります。
現在の事実及び過去の事実のほか,将来起こり得る事実に関する事柄であっても,それが関連する現在又は過去の事実を偽り将来を推測する場合には,人を欺く行為の内容たり得ます。
価値判断や意見の表示も,欺く行為たり得ます。
人を欺く行為は,当該具体的状況の下で一般人を錯誤に陥れる可能性のあるものでなければなりません。
一般人を錯誤に陥れる可能性があるか否かは,行為の際の具体的事情を考慮して,一般的・客観的見地から判断されます。
商品を売買する場合など経済活動の場面において,売り手が多少の駆引きや誇張した広告・宣伝文句を用いることは,日常生活において見受けられるところであり,取引上における信義則に反しないと認められる場合には,欺く行為に当たらないとされています。

財物を交付させるとは,相手方の錯誤に基づく財産的処分行為によって財物の占有を自己又は第三者が取得することをいいます。
錯誤は観念と真実との不一致を指すが,財産的処分行為をするように動機づけられるものであれば足ります。
財産的処分行為と認められるためには,主観的要件として財産を処分する意思と,客観的要件として財産を処分する事実とが必要です。
財産を処分する事実は,法律行為に限らず,事実行為でも認められます。
法律行為としての財産的処分行為の意思表示は,民事上無効なものや取り消し得るものであっても,詐欺罪の成立に影響しません。
交付があったといい得るためには,相手方の財産的処分行為の結果として,行為者側に財物の占有が移転することが必要です。
欺く行為に基づいて財物を交付する者は,通常欺かれた者自身であるが,欺かれた者の財産的処分行為に拘束される地位・状態にある者も交付者に含まれ,必ずしも同一人になるとは限りません。
処分行為者をして行為者以外の第三者に財物を交付させても詐欺罪に当たります。
第三者の範囲は,行為者との間に特別な事情が存在する者に限られ,全く無関係な第三者に財物を交付させた場合は,詐欺罪は成立しません。

詐欺罪の実行の着手時期は,行為者が財物を騙し取る意思で欺く行為を開始した時点に認められ,相手方が錯誤に陥ったかどうかを問いません。

詐欺罪が既遂に達するには,行為者の人を欺く行為によって相手方が錯誤に陥り,それに基づく処分行為によって財物の占有を行為者又は第三者に移転することが必要です。
欺く行為,錯誤,処分行為,財物の移転の間には,それぞれ因果関係がなければなりません。
財物の占有を行為者又は第三者に移転するとは,財物に対する被害者の支配力を排除して,行為者自身又は行為者と一定の関係にある第三者がその財物を支配内に置くことをいいます。

詐欺罪は財産罪であるから,その成立には被害者に財産上の損害が生じたことを要します。
被害者が民事上保護されても,詐欺罪の成立には影響がありません。
人を欺いて財物の交付を受けた場合に,行為者がその中の一部分について正当に受領し得る権利を有するときにも,欺く行為がなければ全体として交付を受けることができないときには,詐欺罪は交付を受けた財物全部について成立します。
人を欺く手段として対価を提供した場合においても,詐欺罪が交付を受けた財物全部について成立します。

・故意犯処罰の原則

詐欺罪の故意が認められるためには,行為者が相手方を欺いて錯誤に陥らせ,その財産的処分行為によって財物を交付させ,自己又は第三者が占有を取得すること及びその因果関係について認識していることが必要です。
その認識は,確定的なものでなく未必的なものであっても足ります。
他人の財物を騙し取る意思は,自己を利するためであると,他人を利するためであるとを問いません。
後日返済する意思があっても詐欺罪が成立します。
詐欺罪の主観的要件として,故意のほかに不法領得の意思を必要とします。
不法領得の意思は,権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思となります。

・事務所紹介

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事弁護を専門とする弁護士が多数在籍しております。
北海道で詐欺事件などの刑事事件で逮捕・勾留され,相談・依頼したいという方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の弁護士による有料の初回接見サービスをご利用ください。
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公務執行妨害罪で逮捕された

2023-06-03

公務執行妨害罪で逮捕された

公務員に対して暴行や脅迫をして,逮捕されることがあります。
今回は,公務執行妨害罪・職務強要罪について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。

公務執行妨害罪とは

(公務執行妨害)
第95条 公務員が職務を執行するに当たり,これに対して暴行又は脅迫を加えた者は,三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

本罪は,公務員によって行われる国又は地方公共団体の作用である公務を保護法益とします。
公務員に向けられた行為を対象としますが,直接に公務員の地位自体を保護するものではありません。
適法な公務の遂行に限って保護されると解されます。
公務の円滑な遂行と国民の利益・人権との間で利害が対立することがあり,特に公務の適法性を判断するに当たっては,両者の利益のバランスをどう取っていくのかということが判断されます。

本罪の客体は「公務員」です。
公務員でない非公務員も,公務員の補助者としてその公務の補助をした場合で,非公務員に対し加えられた暴行・脅迫が当該公務員に向けられたものであると解されるときは,本罪が成立することがあります。

「職務」は,広く公務員が取り扱う事務の全てを含みます。
官庁における公務員のデスクワーク,国公立大学の入試事務や講義,国公立病院の業務等も,本罪によって保護されます。

公務の適法性

公務員の職務は適法でなければなりません。
公務員の違法な行為まで本罪による保護を与えるべきではないからです。
しかし,ここでの適法性は,あくまでも刑法上の適法性であり,当該職務執行の根拠法令上の適法性とは別個に判断されます。
要件としては,①当該公務員の抽象的・一般的職務権限に属するものであること,②当該公務員がその職務を行う具体的職務権限を有すること,③職務行為の有効要件である法律上の重要な条件・方式を履践していること,が必要となります。
①の抽象的職務権限は,必ずしも法令で具体的に規定されたものであることを要しません。
③の要件が,最も実質的で重要な要件となります。
公務員の職務行為には,その有効要件として法律上一定の方式が要求されることが多く,こうした方式を履践しない行為は当該法令では不適法ということになります。
しかし,刑法上も全てその保護に値しないというわけではなく,わずかな方式違反に過ぎない場合や訓示規定に違反する場合などは,直ちに職務執行の適法性を失わせるものではありません。
職務の適法性は,暴行・脅迫から保護するに値する公務という実質的基準で判断されます。
判断基準としては,裁判所が法令を解釈して客観的に決めることになります。
判断の基準時は,当該職務執行時の状況を基礎に判断されます。
なお,公務員の職務執行が適法でないため本罪が成立しないときでも,暴行罪・脅迫罪は成立し得ることになりますが,そのような場合には正当防衛の成否が問題になることが考えられます。

「執行するに当たり」とは,現に職務を執行中である場合というよりは広く,職務を執行するに際しての意味となります。
具体的・個別的に特定された職務の執行を開始してからこれを終了するまでの時間的範囲だけでなく,当該職務の執行と時間的に接着してこれと一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為に限って,公務執行妨害罪による保護の対象となります。

公務執行妨害罪における妨害の方法

「暴行」は,暴行罪とは異なり,公務員に向けられた有形力の行使であれば認められます。
公務員の身体に対して直接向けられる必要はなく,その補助者や物に対して加えられることによって,間接的に当該公務員に物理的・心理的に影響を与えるような間接暴行でも認められます。
暴行の程度は,公務員の職務の執行を妨害するに足るものでなければなりません。

「脅迫」は,人を畏怖させるに足る害悪の告知の全てを含みます。
直接公務員に対するものに限らず,公務員の補助者に対するものでも認められます。
現に相手を畏怖させたことは必要ではありません。
脅迫の程度は暴行と同じく,公務員の職務の執行を妨害するに足るものでなければなりません。

本罪は,暴行・脅迫が加えられることによって,直ちに既遂に達します。
現実に職務執行が妨げられたことは必要ではありません。
この意味で,本罪は危険犯です。

公務執行妨害罪での故意

故意として,公務員が職務執行中であることと,これに対して暴行・脅迫を加えることの認識が必要です。
公務の執行を妨害する目的は必要ではありません。
公務員の職務行為が客観的には適法であるのに,違法であると誤信して暴行・脅迫を加えた場合が問題となります。
違法と思うだけの特殊な事情の認識があった場合は,故意が阻却されます。
その特殊な事情が,例えば軽微な瑕疵を過度に重大視して適法性を欠くと誤信したといった場合は,故意は阻却されません。
単に自分なりの解釈・評価によるだけの場合は,故意は阻却されません。

(職務強要)
第95条 2 公務員に,ある処分をさせ,若しくはさせないため,又はその職を辞させるために,暴行又は脅迫を加えた者も,前項と同様とする。

「処分」は,広く公務員が職務上なし得べき行為をいいます。
それにより一定の法律上の効果を生じさせるようなものであることは必要でありません。
本罪は公務員の正当な職務執行を保護するばかりでなく,広くその職務上の地位の安全をも保護しようとするものであります。
当該公務員の職務に関係ある処分であれば足り,その職務権限内の処分であるとその職務権限外の処分であるとを問いません。

適法な処分をさせるためであっても,作為を強要すること自体非難に値することなので,本罪が成立します。
違法・不当な処分をさせないための場合は,行為時に処分の重大な違法性が明白な場合まで保護するには及ばないから,これを阻止する場合は本罪に該当しません。
それ以外の場合には,たとえ不当な処分であってもそれを阻止するために暴行・脅迫を加えれば,本罪を構成します。

「職を辞させる」は,公務の執行を妨害する手段として辞職させようとする場合の他,公務の執行とは無関係に単なる個人的事情から辞職させようとする場合も含みます。
この目的の場合を特に辞職強要罪ということもあります。

目的が達せられることを要せず,所定の目的をもって暴行・脅迫を加えれば,直ちに既遂に達します。

公務執行妨害罪での流れ

公務執行妨害罪・職務強要罪で逮捕されたら,逮捕・勾留合わせて最長23日間,警察署の留置場などで身体拘束される可能性があります。
家族等と連絡を取ることは制限され,連日捜査機関による取調べを受けるため,被る精神的苦痛は非常に大きなものとなります。
特に警察官への公務執行妨害罪であれば,捜査機関は厳しい対応をしてくる可能性が高いです。
当然,会社や学校に行くことはできません。
逮捕されたことが会社や学校に知られてしまう可能性も高まります。
逮捕されることで,報道される可能性が高まります。

検察官や裁判所に釈放を求めていくことになりますが,釈放が認められるハードルは高く,簡単には認められません。
刑事に強い弁護士に依頼した方が,釈放は認められやすくなります。
証拠隠滅と逃亡のおそれがあるかが判断されることになります。
被害者に対して不当な働きかけが行われる可能性があると評価されることが多いです。
そこで,そのような可能性はないことを具体的に説得的に示していくことが必要です。

起訴後は保釈を求めていくことになります。
保釈とは,起訴された後,一定額の金銭を支払うこと等を条件に釈放される制度をいいます。
保釈金の額は,裁判所が,犯罪の軽重や情状,被告人の経済状態,生活環境などの一切の事情を考慮して,その事件で被告人の逃亡を防ぐためにはどのくらいの金額を納めさせるのが適当かを判断した上で決定します。
保釈金の相場は,一般的に200万円前後となることが多いですが,事件によっては500万円を超える場合もあります。
保釈を取り消されて保釈金が没収されることがなければ,裁判が終わった後に裁判の結果が無罪でも有罪でも保釈金は返還されます。
しかし,保釈中に問題を起こしたら,再び身体が拘束され,預けた保釈金は没収される可能性があります。
保釈支援協会で保釈金を貸してくれることもあります。

暴行・脅迫をしていないにもかかわらず,相手が警察に被害を訴えて,警察が捜査や逮捕をしてくることがあります。
密室の取調室で,「被害者がこう言っている」「証拠はもうそろっている」などと言われ,警察の言われるままに話を持っていかれ,不当な内容の供述調書が作成されてしまいます。
刑事に詳しい弁護士のきちんとしたサポートが必要になってきます。
取調べでどのようなことを言うか,弁護士と相談しながら進めていきます。
警察の威圧的な取調べが行われていたら,弁護士が抗議をしたり,黙秘を指示したりして,きちんと対応しなければなりません。
こちらに有利な証拠がないか,検討することにもなります。
起訴されて裁判となったら,きちんとこちらの主張をしていかなければなりません。

刑事事件ではスピードが大切です。
すぐに弁護士に連絡し,相談しましょう。
逮捕後最大72時間は,たとえ家族の方でも逮捕された人との接見ができませんが,弁護士が代わりに連絡を取ってくれます。
逮捕直後に不当な取調べが行われ,不利な内容の調書が作成されてしまうかもしれません。
早く弁護士が接見し,取調べへの対応方法に関してきちんとしたアドバイスをする必要があります。

事務所紹介

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事を専門とする弁護士が迅速に対応いたしますので,お気軽にお電話ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部では,公務執行妨害罪などの刑事事件に関するご相談を初回無料で承っております。
無料法律相談のご予約は
フリーダイヤル0120-631-881(24時間受付中)
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