札幌市の不正アクセス事件における保護処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務札幌支部の弁護士が解説します。
【事例】
北海道札幌市北区に住むAさん(17歳)は、日頃から同区内に住む同級生のVさんにからかわれていたため、たまには仕返しをしてやろうと考えました。
そこで、AさんはVさんがよく遊んでいるオンラインゲームのアカウントに勝手にログインし、ゲーム内のアイテムを見境なく削除していきました。
翌日、アイテムが消えていることに気づいたVさんは、北海道北警察署に不正アクセス被害にあったことを相談しました。
ほどなくしてAさんは不正アクセス禁止法違反の疑いを持たれたため、Aさんの両親は弁護士に保護処分について聞いてみました。
(フィクションです。)
【不正アクセスについて】
不正アクセスは、IDとパスワードを用いたりコンピュータの不備を利用したりするなどして、本来であればアクセス権限がないコンピュータにアクセスをする行為です。
不正アクセス被害の増加を受け、日本では「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(通称:不正アクセス禁止法)が定められました。
不正アクセス禁止法は、「不正アクセス行為」の内容を定義したうえで、不正アクセス行為およびそれにつながる行為の禁止や、不正アクセス行為の防止に向けた国の責務などを定めています。
不正アクセス行為を行った場合、不正アクセス禁止法違反により3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
上記事例では、AさんがVさんのオンラインゲームのアカウントに勝手にログインしています。
その過程で、AさんはVさんのアカウントのIDとパスワードを用いていると考えられます。
そうすると、Aさんの行為は不正アクセス禁止法2条4項1号の不正アクセス行為に当たることになるでしょう。
ちなみに、不正アクセス行為の処罰に関して、それに用いたIDやパスワードをどのように入手かという点は問われません。
ただし、不正アクセス行為につながるIDやパスワードの不正取得、提供、保管などは、不正アクセス禁止法により罰則を伴う規制が別途行われています。
【少年事件における保護処分】
少年、すなわち20歳未満の者を被疑者とする刑事事件は、少年事件として通常の刑事事件とは異なる取り扱いが行われます。
通常の刑事事件では刑罰による制裁および犯罪予防が目指されるのに対し、少年事件では保護処分による少年の更生が目指されることになります。
その理由は、少年の心身は未だ発達段階にあり、性格や嗜好などが将来的に変化する可能性を秘めていると考えられているからです。
少年事件は、検察庁に送致されて取調べなどの捜査が行われた後、原則としてその全てが家庭裁判所に送致されることになります。
家庭裁判所では、非行事実の有無とその内容や、少年の素行、性格などについて調査を行ったうえで、必要に応じて少年審判を行います。
そして、少年審判の結果、更生に向けた具体的な処分である保護処分の内容が決定されることになります。
保護処分には、①保護観察、②児童自立支援施設・児童養護施設送致、③少年院送致の3つがあります。
それぞれの特徴は、おおむね以下のとおりです。
①保護観察
保護観察官および保護司の指導・監督のもと、他の施設に行くことなく自宅などで更生を図る処分です。
②③と異なり自宅での更生が中心となるため、保護処分の中では最もソフトなものと言えるでしょう。
②児童自立支援施設・児童養護施設送致
まず、児童自立支援施設送致は、不良行為を行い、またはそのおそれがある少年や、家庭環境などを理由に生活指導などを要する少年に対して行われます。
その名のとおり少年の自立に向けた支援が行われますが、施設に入所する場合と自宅などから通う場合の両方があります。
また、児童養護施設送致は、保護者の不在や虐待などにより適切な養護が望めない少年に対して行われます。
児童自立支援施設と異なり、自立支援だけでなく養護も目的とする点に特色があります。
③少年院送致
自宅などを離れて少年院に収容し、更生に向けた指導・教育を受けさせる処分です。
保護処分の中で最も強度のものであり、教育を兼ねていることから学校のような役割も併せ持ちます。
以上で見たように、保護処分には様々な種類があり、いずれが適切かは少年ひとりひとりにより異なってきます。
選択される保護処分の見通しも個々の事案により異なってくるので、もし何かお悩みであれば弁護士に相談してみるとよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部では、少年事件に詳しい弁護士が、保護処分を含む少年事件のポイントをしっかりとお伝えいたします。
お子さんが不正アクセスをしてしまったら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご相談ください。
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