不正アクセス禁止法で逮捕

北海道千歳市の不正アクセス禁止法事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務札幌支部の弁護士が解説します。

【事例】

北海道千歳市に住むAさんは、友人Vさん宅に遊びに行った際に、Vさんが目を離した隙に無断でVさんの携帯電話とパスワードを利用して有料のインターネットサイトにアクセスし、情報サービスを受けました。(情報料1,000円相当)
後日、Vさんにその情報サービスの請求が来て、Vさんは千歳警察署に相談、後日、Vさんは不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反千歳警察署逮捕されました。
(フィクションです。)

1 不正アクセス禁止法について

コンピュータの普及によって私たちの生活は劇的に変わりましたが、その一方で、ハッカーや 悪質なコンピュータ利用者から情報を守る必要も出てきました。
不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)」は、「不正アクセス行為」を禁止することでネットワーク上の脅威を排除し、ネットワーク社会の健全化に努めるものです。
ここにいう「不正アクセス行為」とは、ホームページ編集、ネット注文、データ閲覧などの利用に際して識別符号(ID・パスワードや指紋、音声など)の入力を求めているコンピュータにネットワークを通じ て入り込み、これを利用できる状態にしたり、実際に利用する行為を指します。

具体的には、
他人へのなりすまし(2条4項1号)
→ 他人のID・パスワード等を無断で利用してコンピュータの認証を受けること
セキュリティホールの攻撃(2条4項2・3号)
→ 特殊な情報を入力してアクセス制御機能を回避し、セキュリティホール(プログラム上の不備でセキュリティが脆弱な部分)からコンピュータに侵入すること
をいいます。

不正アクセス行為を行った者には3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます(11条)。
また、他人の識別符号を無断で第三者に提供する行為も「不正アクセス行為を助長する行為」として禁止されています。提供の相手方が不正アクセス目的で取得しようとしていることを知りながら提供したとき は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金、知らなかったときでも30万円以下の罰金が科されることになっています(12条2号、13条)。

2 事例検討

インターネットの有料情報サービスが窃盗罪詐欺罪の客体となり得るか、また、他人のパスワードを利用したアクセス行為が不正アクセス禁止法に抵触するかが問題となります。
窃盗罪の客体は、固体・液体・気体の有体物に限らず電気についても管理可能であることからこれに当たるとされています。しかしながら、携帯電話を利用してインターネットにアクセスする、つまり、情 報の不正入手については、詐欺罪等の客体に当たる余地はあるものの窃盗罪の客体とはなり得ないので、事例の場合、窃盗罪は成立しません。

一方、詐欺罪の成立に関しては、「欺き行為→錯誤→財産的処分行為→財物又は財産上不法の利益の取得」という順次因果関係があることを必要とし、人が欺く行為が存在すればその後の因果関係が切れて も詐欺未遂罪が成立する余地はありますが、事例の場合、人を欺く行為が認められないことから、詐欺(未遂)罪も成立しません。

また、不正アクセス禁止法における不正アクセスとは、他人のIDとパスワードを窃用することにより他人になりすますなどした上、コンピュータの利用ができるようにする行為をいい、事例のように無断で 他人のパスワードを利用してインターネットにアクセスして情報サービスを受ける行為はまさしくこれに当たります。
以上のことから、事例については窃盗罪等の財産犯は成立しませんが、不正アクセス禁止法第3条が成立することになります。
なお、別論になりますが、相手方との会話のために単に携帯電話を無断で使用(通話)する行為については、現在のところ適用される刑罰法令もなく、民事上の責任を負うにとどまります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
弊所は、これまでに、不正アクセス禁止法を含む様々な刑事事件において、勾留阻止身柄解放の多数の実績がありますので、ぜひご相談くださいませ。
刑事事件専門で実力を培われた弁護士による多様な弁護活動をご用意しております。
初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。
また、すでに逮捕されている場合には、初回接見サービスにより弁護士接見させていただきます。

●初回法律相談無料
札幌方面千歳警察署までの初回接見料金:38,700円
札幌拘置所までの初回接見料金:36,300円

 

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