今回は、酒に酔ってタクシー強盗事件を起こしてしまった方の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の弁護士が解説いたします。
~ケース~
Aさんは、居酒屋で酒を飲んだ後、タクシーで帰路につきました。
札幌市厚別区の自宅に着いたので、運転手はAさんに対して精算を求めましたが、Aさんは上着に入れていたカッターナイフを示し、「うるせえ、つべこべいうと殺すぞ」と脅迫しました。
運転手が驚いている隙にAさんはタクシーを降車し、自宅で眠りにつきました。
1時間も経たないうちに、Aさんの自宅に札幌方面厚別警察署の警察官が現れ、「ここまでタクシーに乗ったみたいだけど、料金を踏み倒したらしいな」と告げました。
警察官は、Aさんがタクシー強盗事件の犯人であると断定したため、Aさんを強盗の疑いで逮捕しました。(フィクションです)
~Aさんの行為は単なる料金の踏み倒しではない~
Aさんの行為は、単なる料金の踏み倒しではなく、「強盗罪」(刑法第236条2項)を構成しうるものです。
(参考)刑法
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
強盗罪の法定刑は「5年以上20年以下の有期懲役」となっており、起訴され、有罪判決を受ける場合には、刑が減軽されない限り、即、実刑となってしまいます。
また、捜査段階においても、勾留が長期化する可能性があり、起訴後も保釈が実現できなければ、外に出られない可能性が十分見込まれます。
早期に弁護士を依頼し、迅速に対応することが必要です。
~「財産上不法の利益を得」とは?~
ケースの事件では、金品を強奪しているわけではないので、軽く考えられてしまう場合もあるかもしれません。
しかし、刑法第236条2項にある通り、暴行又は脅迫を用いて、「財産上不法の利益を得」、又は「他人にこれを得させた」場合であっても、強盗罪が成立します(「2項強盗」などと呼ばれます)。
財産上不法の利益を得るとは、「不法に」財産上の利益を得ることをいい、利益自体が「不法」であることは必要ありません。
財産上の利益の典型例として、「債務の免除」、「履行期の延期」、「財産的価値のある役務の提供」等が挙げられ、タクシー料金を支払わない行為も「財産上の利益」に該当する可能性が極めて高いでしょう。
~今後の弁護活動~
(身柄解放活動の実施)
適切な弁護活動を行わなければ、勾留が長期化し、当分の間、外に出られなくなる可能性が高いでしょう。
勾留の阻止、勾留決定に対する準抗告、勾留取消請求を弁護士に行ってもらい、なるべく早く外に出られるように活動してもらうのがよいと思われます。
もっとも、強盗事件は重大な罪ですので、証拠隠滅や逃亡のおそれが高いとされ、身柄解放は容易には認められません。
また、起訴後も勾留されている場合には、保釈の実現を目指す必要があります。
しかし、これも容易ではありませんし、仮に認められたとしても保釈保証金は高額となるでしょう。
(不起訴処分を目指す)
強盗事件は半分近くが起訴されてしまいます。
先述の通り、強盗事件が起訴され、有罪判決を受けてしまうと、刑務所に行かなくてはならなくなる可能性が高いです。
ハードルは極めて高いですが、もし不起訴処分を獲得できれば、裁判にかけられることがないので、刑務所に行く可能性はなくなります。
ケースの事件において不起訴処分を獲得するためには、誠心誠意、被害者(タクシー会社や運転手)に対して謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(「被害者は、Aさんに対して寛大な処分を求める」などの意思を表明する条項です)付の示談を成立させることが重要と思われます。
強盗事件においては示談金も高額になりがちであり、示談交渉にかける時間はもちろん、お金を工面する時間も必要になるかもしれません。
弁護士に依頼するタイミングは、逮捕された直後であっても、早すぎるということはありません。
早期に弁護士を依頼し、有利な事件解決を目指して活動してもらいましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が強盗の疑いで逮捕されてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご相談ください。