保護責任者遺棄致死事件での情状弁護

保護責任者遺棄致死事件での情状弁護

幼児に対するネグレクト等によりお子さんが亡くなってしまったという場合に問題となる保護責任者遺棄致死罪と、その際に行うことになるであろう情状弁護について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。

【ケース】

北海道浦河郡在住のAさんは、一人で1歳4月になる実子Vの子育てをしていました。
しかし、Aさんは子育てに疲れてしまい、Vさんを家に残して方々で飲み歩くなどの生活を続けていて、食事は与えなかったり、与えたとしても簡素なものしか与えなかったりと、ネグレクトと呼ばれるような生活を続けていました。
ある日、自宅に帰ったところ残していたVが冷たくなっていることに気付き、119番通報しましたがVさんは死亡してしまいました。
救急隊員からの通報を受けて臨場した北海道浦河郡を管轄する浦河警察署の警察官は、Aさんを保護責任者遺棄致死罪で逮捕しました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【保護責任者遺棄致死罪について】

保護責任者遺棄致死罪は、保護を必要とする者を保護の無い状態にさらすことにより、死に至らしめた場合に成立する罪です。
保護を必要とする者については刑法218条に列挙されている①老年者②幼年者③身体障碍者④病者が対象となります。

ケースについてはVが1歳4月ですので、②が問題となります。
幼年者(あるいは老年者)は年齢だけで決まるものではなく、「扶助を必要とする」者なのか否かによって判断されますが、一般的には7~8歳未満の者についてはこれに当たると考えられています。
そして、Vの親であることから、Aには保護する責任があると評価されます。
幼年者であるVは自分で食事を用意することなど出来ないため、保護責任者であるAがVに食事を与えなければならないにも関わらずネグレクトをしているため、保護責任者遺棄致死罪が適用されます。
なお、保護責任者遺棄致死罪の法定刑は3年以上20年以下の懲役です。

刑法218条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処す る。
同219条 前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
同205条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。

【情状弁護について】

一般の会話などでも「情状酌量の余地あり」などという言葉を用いる場合があるかもしれません。
刑事事件では、この情状と呼ばれる事情を主張することで、弁護人が被告人の量刑をより軽くするための弁護活動を行うことになります。

そもそも、刑事事件の裁判官は、刑事裁判で弁護側・検察官側双方の主張を聞き、被告人が有罪か無罪か、有罪だった場合はその量刑(どれくらいの刑事罰を科すことが妥当か)を判断します。
その過程で、検察官は捜査段階で収集した証拠に基づき、被告人が起こした事件について説明したうえで、その証拠などを列挙します。
反対に、弁護人は被告人が犯人性を否認している場合であれば証拠についての異議申立てなどを行うほか、認めている場合には情状弁護を行い減刑を目指します。

情状には、犯情(事実)と一般情状があります。
犯情とは、被告人がどのような事件を起こしたかという点にあります。
例えば、Aがガムテープや紐などを用意する、連絡をして待ち伏せしていたなどの計画的な犯行ではないという点や、飲酒の上での犯行であることなどが挙げられるでしょう。
一般情状は、例えば事件後にAが被害者に対して贖罪の意思を表していることや、被害弁済・示談を行った等、前科の有無、性に対するカウンセリングを受け、プログラムを受けている等の事情が挙げられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所では、保護責任者遺棄致死罪などの裁判員裁判対象となるような重大事件についても取り扱っております。
北海道浦河郡にて、家族が保護責任者遺棄致死罪で逮捕・勾留されていて、その後に行われる情状弁護について知りたいという場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご連絡ください。

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