医療事件について

業務上過失致死傷

医師が行う医療行為も「業務」ですから、医療行為中に必要な注意を怠る過誤があり、これにより患者を死亡させれば、業務上過失致死罪に問われます(刑法211条)。

 

虚偽診断書作成

医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、3年以下の禁錮または30万円以下の罰金に処されます(刑法160条)。他の偽造と異なり、内容を偽った行為を罰するものです。

〜その他の偽造について詳しくは 文書偽造・偽造文書行使 へ〜

 

医師法21条、33条の2第1号

医師法21条は「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。」と定めています。これに違反すれば、50万円以下の罰金に処されます(33条の2第1号)。

この届け出義務については、最高裁判所の判決によれば「警察官が犯罪捜査の端緒を得ることを容易にするほか,場合によっては,警察官が緊急に被害の拡大防止措置を講ずるなどして社会防衛を図ることを可能にするという役割をも担った行政手続上の義務と解される。そして,異状死体は,人の死亡を伴う重い犯罪にかかわる可能性があるものであるから,上記のいずれの役割においても本件届出義務の公益上の必要性は高いというべきである。」(最高裁判所第三小法廷平成16年4月13日判決)

自分に過誤があるときにこのような届け出をしなければならないとなると、警察に自己の犯罪の申告を強制されているようですが、最高裁は

「本件届出義務は,医師が,死体を検案して死因等に異状があると認めたときは,そのことを警察署に届け出るものであって,これにより,届出人と死体とのかかわり等,犯罪行為を構成する事項の供述までも強制されるものではない。

また,医師免許は,人の生命を直接左右する診療行為を行う資格を付与するとともに,それに伴う社会的責務を課するものである。このような本件届出義務の性質,内容・程度及び医師という資格の特質と,本件届出義務に関する前記のような公益上の高度の必要性に照らすと,医師が,同義務の履行により,捜査機関に対し自己の犯罪が発覚する端緒を与えることにもなり得るなどの点で,一定の不利益を負う可能性があっても,それは,医師免許に付随する合理的根拠のある負担として許容されるものというべきである。」

と述べ、憲法に反しないとしています。

 

「検案」

検案については、同じく最高裁が「「検案」とは,医師が死因等を判定するために死体の外表を検査することをいい,当該死体が自己の診療していた患者のものであるか否かを問わないと解する」としています(最高裁判所第三小法廷平成16年4月13日判決)。

死体の外表を検査して異状があれば警察に届け出るのであり、診療経過に異常があったからといって届け出るものではありません。

 

「異状」とは

「異状」について、裁判例で示したものは見当たりません。最高裁も「異状死体は,人の死亡を伴う重い犯罪にかかわる可能性があるものであるから」と示していますが、そもそも何が「異状死体」かを明らかにするものではありません。

日本法医学会の平成6年5月の「異状死ガイドライン」では、「基本的には、病気になり診療をうけつつ、診断されているその病気で死亡することが「ふつうの死」であり、これ以外は異状死と考えられる。」とし、具体的ガイドラインとして、外因による死亡や原因が明らかでない死亡の他、

【4】診療行為に関連した予期しない死亡、およびその疑いがあるもの注射・麻酔・手術・検査・分娩などあらゆる診療行為中、または診療行為の比較的直後における予期しない死亡。診療行為自体が関与している可能性のある死亡。 診療行為中または比較的直後の急死で、死因が不明の場合。 診療行為の過誤や過失の有無を問わない。」

と、医師の過誤による死亡の疑いがあるものまで「異状」死に含めています。

当時の厚生省の死亡診断書記入マニュアルでは、「(注)「異状」とは「病理学的異状」でなく、「法医学的異状」を指します。「法医学的異状」 については、日本法医学会が定めている「異状死ガイドライン」等も参考にしてください。」などと、この異状死ガイドラインを参照する旨の記載がありました。

これに加えて、「また、外因による死亡またはその疑いのある場合には、異状死体として24時間以内に 所轄警察署に届出が必要となります。」との記載がありました。これが「死体…を検案し」との文言にもかかわらず、経過に異常があればすべて警察に届け出なければならないかのような誤解を医療現場に与えていました。

なお、現在の死亡診断書記入マニュアルには異状死ガイドラインを参照する旨の記載はありません。また、「外因による死亡またはその疑いのある場合には、異状死体として24時間以内に 所轄警察署に届出が必要となります。」との記載も削除されました。

 

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