交通違反の身代わり出頭

北海道江別市の交通違反の身代わり出頭事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務札幌支部の弁護士が解説します。

【事件】

Aさんは、江別市内で運送会社を営んでいます。
先日、Aさんの会社に勤める従業員が、休みの日にひき逃げ事件を起こしてしまいました。
この従業員は、自宅でお酒を飲んでいる最中に、近所のコンビニまでお酒を買いに車で出かけた際に、信号待ちの車に後方から追突し、相手方に怪我を負わせたようです。
その時に運転していた車は、Aさんの会社名義の車でした。
飲酒運転の発覚をおそれた従業員は事故現場から逃走して、Aさんに助けを求めました。
Aさんは、従業員が警察に逮捕されてしまうと、翌日からの会社の運営に影響が及ぶと考え、自宅にいた、Aさんの妻に頼み込んで、妻を江別警察署身代わり出頭させたのです。
しかし、取調べを担当した警察官によって、すぐに身代わり出頭が発覚してしまい、翌日に、Aさんや従業員も警察署に呼び出されてしまいました。
そこでAさんは、犯人隠避罪教唆犯として取調べを受けています。
(フィクションです。)

犯人蔵匿罪・犯人隠避罪~刑法第103条~

罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者の逃走を手助けしたら、犯人蔵匿罪若しくは犯人隠避罪に抵触します。

~犯人蔵匿罪・犯人隠避罪の客体~
これらの犯罪の客体となるのは①罰金以上の刑に当たる罪を犯した者、又は②拘禁中に逃走した者です。
ひき逃げ(他罪は不問とする。)は、当該運転者の運転に起因するものである場合、罰則は10年以下の懲役又は100万円以下の罰金と定められているので、ひき逃げした犯人の逃走を手助けした場合は、犯人蔵匿罪犯人隠避罪の対象となります。

~犯人蔵匿罪・犯人隠避罪の行為~
蔵匿…場所を提供すること。(自分の家に匿ったり、潜伏する部屋を用意したりする行為)
隠避…蔵匿以外の逃走を助ける一切の行為。(逃走資金や逃走用の車や衣類等、携帯電話機を用意する行為など)
身代わり出頭する行為も、犯人隠避罪でいう「隠避行為」に当たりますので、従業員に代わって出頭したAさんの妻は犯人隠避罪に問われるでしょう。

~犯人蔵匿罪・犯人隠避罪の罰則~
裁判で有罪が確定すれば「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科せられます。
犯人蔵匿罪・犯人隠避罪の量刑は、逃走犯の犯した犯罪や社会的反響の大きさと、蔵匿期間等の犯行形態によって左右されますが、初犯であっても実刑判決の考えられる犯罪です。
また、逃走した犯人の親族については、刑を免れる可能性があります。

教唆犯

刑法第61条に「教唆犯」が規定されています。
教唆とは、犯罪の意思がない人をそそのかして、犯罪を実行することを決意させて実行させることをいいます。
・教唆の方法
教唆の方法に制限はありません。明示的な方法に限られず、黙示的な方法であってもよいとされています。
・教唆の内容
詳細に特定する必要までありませんが、ある程度は教唆する事件の内容を特定しなければなりません。
・教唆の故意
被教唆者が犯行を実行することを認識・認容する必要があります。
・未遂の教唆
未遂犯を教唆した場合であっても、教唆の故意がある以上、教唆犯が成立します。
逆に、犯罪を教唆したが、被教唆者が犯罪を実行しなかった、いわゆる教唆の未遂については、犯罪が実行されていないので教唆犯については不可罰となります。

教唆犯は、正犯の刑が科せられるので、もしAさんが、犯人隠避罪教唆犯として起訴されて有罪が確定した場合は、犯人隠避罪の法定刑である「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が適用されます。

江別市の交通違反で、身代わり出頭させた方、犯人隠避罪で警察の取調べを受けている方は、刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご相談ください。
事務所での法律相談料は初回無料です。

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー LINE予約はこちら