職務質問で銃刀法違反事件に発展
銃刀法違反の問題に発展する行為と、職務質問について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。
【ケース】
北海道余市郡在住のAさんは、余市郡内で自営業で生活をしています。
Aさんは過去に仕事で現金を持っていたところを強盗に襲われたことがあり、護身のため、ジャケット内側のポケットに合口(刃物)を呑んでいました。
その際、余市郡を管轄する余市警察署の警察官がAさんに対し職務質問を行い、その際の所持品検査でAさんが合口を所持していることが発覚しました。
刃体の長さは20cmほどあったこともあり、余市警察署の警察官は、Aさんを銃刀法違反で現行犯逮捕しました。
≪ケースはすべてフィクションです。≫
【銃刀法違反について】
まずは刃物を所持していた場合に問題となる銃砲刀剣類所持等取締法(以下、銃刀法)及び軽犯罪法の条文について見て行きます。
銃刀法22条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが8センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。
同31条の18第2項 次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2号 第22条の規定に違反した者
軽犯罪法1条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
2号 正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
今回Aさんの事例で想定しているのは、刃体の長さが20cmの合口です。
そして、その合口を懐に吞んでいたことから、刃物を携帯していた、あるいは隠し持っていたということができます。
刃体の長さが6cm以上あることから、Aさんの場合は銃刀法違反に当たると考えられます。
なお、銃刀法は「業務その他正当な理由」がある場合については、刃物の所持を禁止していません。
例えば、Aさんが引越しの最中で多くの梱包を開封する必要がある場合には正当な理由があると認められますし、板前さんが自分の包丁を自宅から職場に持ち運んでいる最中であれば業務上の理由ということが言えるでしょう。
しかし、Aさんが主張する「護身の目的」というのは、正当な理由には当たらないとされています。
【職務質問について】
Aさんが合口を所持していると発覚したきっかけは、警察官による職務質問とそれに付随する所持品検査によるものでした。
職務質問については、以下のとおり規定されています。
警察官職務執行法2条
1項 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。
2項 その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができる。
3項 前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。
4項 警察官は、刑事訴訟に関する法律により逮捕されている者については、その身体について凶器を所持しているかどうかを調べることができる。
職務質問については上記のとおり規定されていますが、所持品検査については上記4項で「逮捕されている者については…凶器を所持しているかどうかを調べることができる。」と規定されています。
Aさんは、所持品検査を受けた時点では逮捕されていないため、所持品検査については任意に行われていると考えられます。
Aさんが所持品検査に納得して応じていた場合には特段問題にはなりませんが、Aさんが拒否しているにも拘わらず警察官が無理やりAさんの懐に手を入れて合口を取り出した場合などでは、任意の範囲を超えて所持品検査をしたと評価される恐れがあります。
職務質問が適切に行われたかどうかについては、慎重に確認をする必要があるでしょう。
北海道余市郡にて、家族が職務質問と所持品検査を受け、合口を所持していたことが発覚し銃刀法違反で逮捕された場合、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の初回接見サービスをご利用ください(初回接見サービスは有料です。)。