北海道松前町の放火事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務札幌支部の弁護士が解説します。
【事例】
北海道松前町に住む会社員Aさん(35歳)は、3年前に亡父から相続した一軒家(築60年)に妻と二人で暮らしていました。
築年数が古いことから建替えを考えていたAさんは、自分の家に放火して、火災保険金を騙し取ることを思いつき、アパートを借りて、しばらくの間は、そのアパートで生活することにしました。
そして引っ越しを終えて荷物を運び出した後に、和室の畳に灯油をまき、火のついたタバコをその近くに放置して、しばらくすると灯油に引火して火災が発生するように仕掛けをして家を出ました。
しかし、火災が発生した直後に、近所の住民が火災に気付いて消火したので、畳一枚を焼損するにとどまったのですが、その後、北海道松前警察署に逮捕されました。
(フィクションです)
【放火罪について】
建造物等(建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑)を放火して焼損したり、それ以外の物を放火して公共の危険を生じさせたりした場合、放火罪が成立する可能性があります。
公共の危険とは、不特定または多数人の身体や財産を脅かす危険だと考えられています。
放火罪は、大きく分けると①他人の住居または他人の建造物等を放火する場合、②①以外の建造物等を放火する場合、③建造物等以外を放火する場合の3つがあります。
①は現住建造物等放火罪、②は非現住建造物等放火罪、③は建造物等以外放火罪と呼ばれており、成立要件や法定刑がそれぞれ異なります。
放火の罪における「現住」とは、「現に人が家屋に使用している」若しくは「現に人がいる」の何れかです。
今回の事件で、Aさんは、すでに引っ越しを終えて家を出た後に放火しているので、非現住建造物に当たると考えられます。
【自己所有と他人所有】
今回の事件でAさんは、3年前に亡父から相続した自宅に放火していますので、一見すると刑法109条2項の適用を受けそうです。
しかし刑法第115条に「差押え等に係る自己の物にかかる特例」が定められています。
この条文によりますと、保険に付した物件に放火した場合には、他人の物を焼損した時と同じ、刑法109条1項の適用を受ける旨が明記されています。
つまりAさんの行為に対しては、他人所有の非現住建造物等放火罪が適用されるのです。
【放火の既遂?未遂?】
Aさんは、家を出た後に発火するように仕掛けをして家を出ており、その後実際に畳に引火し火災が発生しています。
しかし家屋その物には延焼せずに、畳一枚を焼損するに止まったというのですから、これが「焼損」といえるかが問題となります。
放火の既遂時期については、火が媒介物を離れ目的物に燃え移り、目的物が独立して燃焼を継続し得る状態に達すれば焼損(既遂)になるとしています。
ところがAさんの事件では畳しか燃えていません。
取り外し自由な雨戸、板戸、畳等は建造物の一部ではないとされているので、建造物を焼損する目的でこれらの物を焼損したにとどまったときは、建造物そのものを焼損したことにはならないと解せれます。
つまりAさん行為は、他人所有の非現住建造物等放火未遂罪が適用されるのではないでしょうか。
【保釈による身柄解放】
放火罪は重大な犯罪であるため、捜査機関に発覚すれば逮捕および勾留の可能性はかなり高いと言えます。
そして、もし勾留中に起訴されると、被疑者勾留が被告人勾留へと切り替わり、最低でも2か月は身体拘束が伸びてしまいます。
そうした事態に陥った際、身柄解放を実現する有力な手段として保釈の請求が考えられます。
保釈とは、裁判所に対して指定された金額の金銭を預けることで、一時的に被告人を釈放する手続を指します。
保釈の最大の強みは、起訴前に釈放を実現できなかった事件において釈放を実現できる可能性がある点です。
保釈の際に預ける金銭は、証拠隠滅や逃亡などを図ると没収される担保のような役割を持ちます。
そして、その金額は不審な行動を抑制するに足る高額なものとなっているので、そうした行動には出ないだろうと考えられて釈放が認められやすいのです。
ただし、保釈を認めてもらうには、その前段階として保釈請求が認容される必要があります。
保釈請求に当たっては、法律の専門家である弁護士の視点が重要となることは否定できません。
ですので、保釈を目指すのであれば、保釈請求を含めて弁護士に事件を依頼することをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部では、刑事事件に強い弁護士が、長期間拘束されている方の保釈の実現に全力で取り組みます。
ご家族などが放火罪の疑いで逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご相談ください。
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