北海道砂川市の偽計業務妨害事件について、弁護士法人あいち刑事総合法律事務札幌支部の弁護士が解説します。
【事件】
北海道砂川市に住むAさんは、近所のスーパーと商品購入をめぐって揉めたことがあり、その腹いせに、そのスーパー店内のパン売り場で販売されている食パンに、縫い針を混入しました。
そしてその後、その食パンを買った客からスーパーに「食パンに縫い針が混入されていた。」と電話連絡があり、スーパーは縫い針が混入されたことが発覚したのです。
スーパーから被害届を受理した北海道砂川警察署が捜査を開始し、Aさんは偽計業務妨害で通常逮捕されました。
(フィクションです)
【偽計業務妨害罪】
偽計業務妨害罪とは、虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の業務を妨害する罪です。
本罪は、刑法233条後段に規定され、刑事罰は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。
本罪の行為の客体は、「人の業務」です。
「業務」とは、職業その他社会生活上の地位にもとづいて継続して行う事務をいいます。
業務については、経済的活動に該当する場合が多いものですが、経済的活動ではない公益活動、宗教活動も本罪の対象になり得ます。
適法な業務であることが必要かについては、法律に違反している業務であっても、違法性が顕著なもの以外、業務に該当するというのが一般的見解です。
都道府県知事の許可のない浴場の営業でも、業務に該当することを認めた判例があります。
「虚偽の風説を流布」するとは、客観的真実に反する内容の噂を不特定または多数の人に伝播させることをいいます。
「偽計」を用いるとは、人を欺き、誘惑し、または、人の錯誤・不知を利用することをいいます。
偽計が認められた具体例としては、
〇 内容虚偽の仮処分申請書を提出し、係判事を欺いて得た仮処分命令にもとづき社屋を明け渡させて経営を不能にした行為
〇 そば店に3か月の間に970回にわたり無言電話をかけて業務を妨害した行為
〇 外面から分からないように漁場の海底に障害物を沈め,漁網を破損させた行為
〇 他紙の購読者を奪おうと企て,自己の経営する新聞を改題し体裁等を酷似させて発行した行為
〇 他人名義で虚偽の電話注文をして,徒労の商品配達をさせた行為
〇 「マジックホン」という機器を使用して,電話機に対する課金装置の作動を不可能にした行為
などがあります。
事例のような売り物である食品に針を刺すといった行為はお店に対する業務妨害罪となるわけですが、針を刺すという人にけがをさせかねない危険な行為ということを考えると、偽計ではなく威力ではないかとも思われます。
事例の場合、客が連絡してくるまで被害者であるスーパーはパンに針が刺さっているということを知らずその意思を制圧されたわけではないので威力ではなく、他の商品にも針が刺さっているかもしれないというお店の錯誤を誘発させる偽計ということになります。
そのような行為によって商品の点検をするなどさせてお店の業務を妨害しているのです。一方、犯人がお店に電話などをして「食パンに針を仕込んだ。」と告げた場合には,お店の意思を制圧するに足りるだけの勢力を用いたということになり,威力業務妨害ということになります。
【早期釈放を実現するには】
被疑者として逮捕された場合、その後48時間以内に事件が検察庁に送られ、検察庁で24時間以内に勾留請求が行われる可能性があります。
そして、もし裁判官が勾留の妥当性を認めれば、逮捕中の被疑者は10日から20日もの間拘束されていまいます。
逮捕を含めると身体拘束の期間は最長23日間に及び、様々な不利益を受けることが予想されます。
この間に行うべきことの一つとして、被疑者の釈放を実現するための身柄解放活動が挙げられます。
特に重要なのは、長期の身体拘束である勾留が決定する前の段階です。
この段階では、検察官と裁判官に対して、被疑者が逃亡や証拠隠滅に及ぶおそれが低いことや、仮に及ぼうとしてもそれを阻止できることを主張する必要があります。
勾留がつく理由というのは基本的に逃亡と証拠隠滅のおそれの存在なので、この点を解消することが不可欠となってくるのです。
上記事例のように恐喝などの粗暴な面が見られる場合、被害者(被害店舗)との接触がどうしても懸念されるところです。
そうしたケースでは、やはりその点のフォローが非常に重要になってくるでしょう。
早期の釈放に向けてベストな対応を行うなら、ぜひ弁護士に事件を依頼して的確な弁護活動を行ってもらってください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部では、刑事事件のスペシャリストを自負する弁護士が、一日でも早い釈放の実現に向けて尽力します。
ご家族などが営業妨害をして逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご相談ください。
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