自転車への放火~放火と器物損壊~

自転車への放火で、放火罪若しくは器物損壊罪となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説します。

~ケース~

仕事がうまくいかず、むしゃくしゃしていた会社員のAさんは、持っていたライターで、北海道余市町の民家の軒下にある自転車のサドル部分に火をつけました。
炎が上がったのを確認して、Aさんはその場を離れました。
しかし、炎は自転車の真横に止まっていたバイクに燃え移り、バイクカバーを燃やしました。
炎は民家の軒下にかかるくらいになり、燃えたすすが隣の庭にも飛散していました。
隣の家の住人が、炎に気が付き、すぐに消化しました。
北海道余市警察署は、周囲の防犯カメラの映像などから、Aさんを特定し逮捕しました。
(フィクションです。)

放火に関する罪

刑法は、放火に関する罪として、現住建造物等放火罪、非現住建造物等放火罪、建造物等放火罪を規定しています。

(1)現住建造物等放火罪

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱抗を焼損する罪です。

本罪の対象は、「現に人が住居に使用し」ている又は「現に人がいる」、「建造物、汽車、電車、艦船、鉱抗」です。
「現に人が住居に使用している」というのは、犯人以外の者が、起臥侵食の場所として使用していることを意味し、人が現在しているか否かを問いません。
「現に人がいる」というのは、放火の当時に、犯人以外の者が中にいることを指します。

本罪の行為は、上の客体に「放火」して「焼損」させることです。
「放火」とは、目的物の燃焼を惹起させる行為や、それに原因力を与える行為をいいます。
つまり、家に直接火をつける行為だけでなく、家に火をつけるために布団に火をつける行為も含みます。
「焼損」とは、火が放火の媒介物を離れて目的物に燃え移り、目的物が独立して燃焼を継続し得る状態に達することをいいます。
その主要部分が毀損することや、効用が害されることまで必要とされません。

(2)非現住建造物等放火罪

放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱抗を焼損した場合に成立する罪です。
焼損したものが自己の所有物であるときは、公共の危険を生じさせた場合のみ、処罰の対象となります。

「公共の危険」とは、不特定又は多数人の生命、身体、財産に危険を感じさせる状態をいいます。
「公共の危険」が生じたか否かは、火力の程度、他人の住居などとの隣接状況、当時の風向・風速・気温などの気象状況、昼間か夜間かなどの事情から一般人を基準として判断されます。

(3)建造物等以外放火罪

放火して、現住建造物等放火罪および非現住建造物等放火罪に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせる罪です。

本罪の対象は、現住建造物等放火罪と非現住建造物等放火罪に規定する物以外の物であって、例えば、自転車、バイク、航空機、門、塀、橋、畳、机、椅子、ごみ箱などがあります。

それでは、上のケースについて検討してみましょう。

他人の財物に放火し黒焦げにしてしまった場合、通常は、他人の財物を損壊したとして器物損壊罪が成立します。
しかし、火の勢いが強く延焼の危険が発生するなどして、公共の危険を生じさせた場合、建造物等以外放火罪が成立することになります。
つまり、器物損壊罪と建造物等以外放火罪との違いは、公共の危険が発生したか否かです。

Aさんが自転車のサドルに放火しましたが、火の勢いが弱かったり、住人や隣人がすぐに炎に気づき消火したことにより、自転車のサドルを黒焦げにさせただけだった場合、公共の危険が発生したとまではいえず、器物損壊罪が成立するにとどまるでしょう。
しかし、火の勢いが強く、自転車の隣にあったバイクにも燃え移り、バイクカバーを燃やした上、民家の軒下にかかるほどの炎でしたし、隣の家の庭には燃えたすすが飛散している状況においては、民家や近隣の家にも延焼する可能性はあり、公共の危険性が生じたと言えるでしょう。
そのため、Aさんは、器物損壊罪ではなく、建造物等以外放火罪に問われることになります。
もし、炎の勢いがおさまらなかったり、隣人の発見がさらに遅れ、民家の軒下の一部にも燃え移り、炭化させてしまった場合には、現住建造物等放火罪が成立する可能性があります。

現住建造物等放火罪の法定刑は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役と、非常に重い罪です。
建造物等以外放火罪も、1年以上10年以下の懲役と、罰金刑はありません。

ご家族が放火事件で逮捕され、対応にお困りであれば、できる限り早期に弁護士にご相談されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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