強制わいせつ事件で執行猶予付き判決

強制わいせつ事件で執行猶予付き判決を獲得する活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説します。

~事例~

北海道旭川市に住むAさんは、仕事や家庭の問題から生じたストレスを発散しようと、夜ランニングをしていました。
ランニング中、Aさんは、帰宅途中とみられる若い女性と遭遇しました。
女性はかなり酔っている様子で、公園のベンチに座り込みました。
Aさんは、女性の様子を伺っているうちに、ムラムラしてきたため、その女性に抱きつき、服の中に手を入れ、女性の胸を揉む等のわいせつ行為をしました。
Aさんはすぐ現場から逃走しましたが、その後も、何度か違う女性に対して同じようなわいせつ行為をしていました。
ある日、Aさんの家に北海道旭川中央警察署の警察官が訪れ、強制わいせつの疑いでAさんを逮捕しました。
余罪も複数あるため、「実刑も覚悟しておくことだな。」と警察官から言われ、Aさんは不安でたまりません。
(フィクションです。)

強制わいせつで逮捕されたら

強制わいせつ罪は、暴行または脅迫を用いて相手方にわいせつな行為をする犯罪です。
相手方が13歳未満である場合には、暴行または脅迫を用いずとも、ただわいせつな行為をすることにより、強制わいせつ罪は成立します。

強制わいせつ罪の法定刑、つまり、犯罪に対して科されるべきものとして、法令が罰則により規定している刑罰は、6月以上10年以下の懲役です。
強制わいせつ罪の法定刑に罰金は含まれません。
つまり、検察官は強制わいせつ罪で被疑者を略式起訴することはできません。
検察官が起訴する場合、公判請求の形で行うことになります。
検察官が公判請求すると、被告人は公開の法廷で審理されることになります。
裁判官が、検察官が主張する犯罪事実が合理的な疑いを入れる余地なく証明されたと判断すれば、被告人に有罪判決を言い渡します。
と同時に、被告人に科す刑罰も言い渡されます。
この刑罰は、法定刑の範囲内で決められます。
強制わいせつ罪であれば、6か月から10年までの範囲で懲役刑の期間が決められます。
10年もの間、刑務所で生活することもあり得るのです。

強制わいせつ罪の法定刑は6か月から10年と、なんともその範囲は広いですが、初犯であり、かつ、犯行態様が軽微であれば、実刑にはならず執行猶予が付くことが多いようです。
しかし、悪質なケースでは、執行猶予が付かず実刑となる可能性は高いです。

懲役刑というのは、刑務所に収容され、刑務作業を負う刑罰のことです。
懲役刑が執行されると、刑務所に収監されることになります。
ただ、刑の執行が猶予されると、直ちに刑務所に収監されることはなく、社会で通常の生活を起こることができます。
言い渡された刑の執行が猶予されることを「執行猶予」といいます。

執行猶予について

執行猶予は、判決で刑を言い渡すにあたり、一定の期間その刑の執行を猶予し、その猶予期間中罪を犯さず経過すれば、刑の言い渡しの効力を失わせる制度です。
執行猶予付きの判決であっても、有罪判決ですので、前科が付くことには変わりありません。
しかし、判決言い渡し後に刑務所に入るのと、社会に戻るとでは、その後の生活は大きく変わります。
そのため、正式裁判となり、かつ罪を認めている場合には、執行猶予を獲得することを目指します。

どのような事件でも執行猶予が付くとは限りません。
執行猶予を付けるには満たすべき要件があります。

執行猶予の要件

執行猶予には、刑の全部の執行猶予と刑の一部の執行猶予とがありますが、今回は前者の要件について説明します。

刑の全部の執行を猶予することができるのは、
①前に禁固以上の刑に処せられたことがない者、または、
②前に禁固以上の刑に処せられた者であっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑の処せられたことがない者
が、3年以下の懲役もしくは禁固または50万円以下の罰金の言い渡しがなされる場合です。

この場合、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間で刑の全部の執行を猶予することができます。

強制わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下の懲役ですので、3年以下の懲役が言い渡される可能性はあります。
その場合に、上の①または②に該当する者であり、かつ情状により、裁判官が執行猶予付き判決を言い渡すことはできます。

裁判官は、どのような点に着目して、科すべき刑罰を決めているのでしょうか。
考慮される要素には様々なものがありますが、その大枠は犯情で占められます。
犯情というのは、犯罪行為それ自体に関わる事情のことです。
罪を犯したことは認める場合でも、犯行態様の悪質性、被害者に与えた結果の重大性、犯行動機、計画性の有無など、検察官の主張に誤りがないか、あるいはそのような主張を裏付ける証拠があるのかどうか慎重に検討する必要があります。
科すべき刑罰を決めるにあたっては、犯情に加えて、一般情状についても考慮されます。
一般情状は、被告人の生い立ち・性格・年齢、人間・職業・家族関係、被害者の状況、被害の回復状況、被害弁償の具合、被害感情、被告人の再犯可能性や更生可能性など、広範囲に及ぶ事情を含みます。
強制わいせつ罪のように被害者がいる事件では、被害者の被害の回復、具体的に言えば、被害弁償や示談がなされているかといった点が重視されます。
また、再び性犯罪を起こすことがないよう専門的な治療を受けていることも更生可能性の有無を判断する上でも考慮されるでしょう。

以上の要素について、被告人にできるだけ有利な形で主張し、認められれば、執行猶予となり実刑を回避することができるでしょう。

そのためには、刑事事件に精通した弁護士による刑事弁護が望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、強制わいせつを含む刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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