強制性交等致傷事件の刑事手続を解説

今回は、強制性交等事件の被害者が逃走するために3階から飛び降りた結果、傷害を負わせてしまった場合の刑事手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の弁護士が解説いたします。

~ケース~

北海道江別市に住むAさんは、かねてから強制的に性交することを望んでいた女性V宅に侵入し、Vを床に押し倒すなどしたうえで、強制的に性交しようとしました。
ところが、VはAさんを払いのけ、Aさんから逃れるために3階の窓から飛び降りたところ、脊椎を骨折するなどの重傷を負いました。
怖くなったAさんはV宅から逃亡し、自宅で数日間、今まで通りに過ごしていました。
ある日、Aさんの自宅に札幌方面江別警察署の多数の警察官が現れました。
警察官はAさんに逮捕状を示し、Aさんを住居侵入罪及び強制性交等致傷罪の疑いで逮捕しました(最高裁昭和35年2月11日決定を参考にしたフィクションです)。

~Aさんに成立する犯罪~

住居侵入罪強制性交等致傷罪が成立する可能性が高いと思われます。

(強制性交等致傷罪)
刑法第181条2項は、「第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する」としています。

AさんがVを床に押し倒し、Vと強制的に性交しようとした行為は「第百七十七の罪(強制性交等罪)」の未遂犯を構成する可能性が高いです。
「第百七十七条の罪」の未遂罪を犯したことと因果関係のある死傷結果が生じた場合においては、強制性交等罪に留まらず、強制性交等致傷罪が成立することになります。
強制性交等致傷罪の法定刑は「無期又は六年以上(20年以下)の懲役」となっており、非常に重く、裁判員裁判対象事件でもあります。

ケースの場合はVがAさんから逃れるために窓から飛び降りた結果、傷害を負っています。
Aさんが直接Vを殴るなどした結果、Vに傷害を負わせたわけではありません。
このような場合においても「よって人を死傷させた」場合にあたるのでしょうか。

判例によれば、被害者が被害を免れようとしたために生じた死傷についても因果関係が認められるとされているようです。
ケースのモデルになった最高裁昭和35年2月11日決定は、「被害者が救いを求めて2階から飛び降りたために負傷した場合」について、強姦行為(当時の罪名は「強姦」です)と傷害結果との間に因果関係があることを認めています。
これによれば、Aさんの行った強制性交等未遂行為によって、Vに傷害を負わせたと評価される可能性が高いです。
したがって、Aさんに強制性交等致傷罪が成立する可能性が高い、ということになります。

(住居侵入罪)
正当な理由がないのに、人の住居に侵入する犯罪です。
V宅が住居に該当することに問題はないでしょう。
「侵入」とは、管理権者の意思に反する立入りを意味します。

Vは、他人が自身に対して強制性交等罪を犯す目的で自宅に立ち入ることを容認しなかったと思われます。
上記の事実関係によれば、Vと強制的に性交する目的でV宅に立ち入った行為は、住居侵入罪を構成する可能性が高いと思われます。
住居侵入罪の法定刑は「三年以下の懲役又は十万円以下の罰金」となっています。

~今後の弁護活動~

ケースの事件は裁判員裁判対象事件であり、起訴された後も、公判前整理手続が行われ、事件が長期化することが見込まれます。
裁判員が存在するという負担もありますし、この時点で事件が報道されている可能性も濃厚に存在します。
このような重い手続を乗り越えるために、刑事事件に熟練した弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

有罪判決を受ける場合は、刑の減軽事由が存在しない限り、必ず実刑判決が言い渡されるでしょう。
なるべく刑務所に入る期間が短くなるように、被害者に対して真摯に謝罪する必要があります。
Vに賠償すべき損害額は、Vが脊椎を骨折していることから、1千万円を超えることもありえます。
それでも、可能な限り賠償を尽くすことにより、反省の態度をアピールすることはできます。

可能な限り有利な判決を獲得するために善後策を尽くしていきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が住居侵入、強制性交等致傷事件を起こしてしまいお困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご相談ください。

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