傷害事件で起訴猶予を目指す活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説します。
~事例~
北海道札幌市北区の居酒屋で、会社員のAさんは、会社の同僚と飲食していました。
隣に居合わせたグループが周囲を気にせず騒ぎ立てており、居酒屋の店長は何度もそのグループに静かにするよう注意していました。
しかし、一向に静かにする様子がないグループに対して、苛立ちを隠せないAさんは、直接グループに対して、「もう少し周りにも気を遣ってもらえませんか。」と言いましたが、グループの一人が、「うるさいなー、おっさん。」と言い返してきました。
お酒も入っていることもあり、かっとなったAさんは、言い返してきた男性に掴みかかり、男性の頬を殴ってしまいました。
店長の通報を受けて駆け付けた北海道札幌北警察署の警察官は、Aさんから事情を聞いています。
(フィクションです。)
Aさんは、暴行または傷害事件の被疑者として警察の取調べを受けることになるでしょう。
逮捕されない場合には、身体拘束を受けないまま捜査が進んでいきます。
何度か取調べのために警察署に出頭しなければなりません。
警察での捜査が終了すると、今度は事件が検察庁に送られます。
被疑者を起訴するかしないかを判断するのは、検察官です。
検察官は、被疑者を取調べ、収集された証拠を検討した上で、起訴するか否かを決めます。
不起訴処分について
検察官が、今回の事件については起訴しないとする処分を「不起訴処分」といいます。
この不起訴処分は、その理由に応じて、以下の4つの分類されます。
(1)嫌疑なし
捜査を遂げた結果、検察官が被疑者の嫌疑がないと判断した場合に行われる不起訴処分です。
被疑事実について、被疑者がその行為者でないことが明白なとき、または犯罪の成否を認定すべき証拠がないことが明白なときに適用されます。
例えば、新たに真犯人が判明した場合などです。
(2)嫌疑不十分
捜査を遂げた結果、検察官が裁判において有罪であることを立証することが困難だと判断した場合になされる不起訴処分です。
被疑者が当事者であり人違いでないかどうか、被疑者の行為が犯罪に当たるかどうか、といった点について、証拠がなかったり十分な証拠を示すことができなかった場合、検察官は嫌疑不十分として不起訴処分にします。
(3)親告罪の告訴取り下げ
親告罪とは、犯罪被害者などの告訴権者による告訴がなければ、検察官が公訴を提起することができない犯罪のことをいいます。
例えば、名誉棄損罪、侮辱罪、ストーカー規制法違反、過失傷害罪、器物傷害罪などです。
親告罪の場合、被害者が告訴すると、警察は捜査を開始し、検察官に事件を送致しますが、その後、被害者が告訴を取り下げた場合には、検察官は起訴することができません。
その場合には、不起訴処分となります。
(4)起訴猶予
捜査を遂げた結果、裁判において有罪であることを立証することができる場合であっても、被疑者の境遇や犯罪の軽重、犯罪後の状況等を鑑みて、検察官の裁量により起訴を猶予し不起訴処分とします。
不起訴処分の多くが、この起訴猶予によるものです。
容疑を認めている場合には、弁護士は、起訴猶予による不起訴処分獲得を目指した活動を行うことになります。
起訴猶予を目指す活動
起訴猶予とするかどうかを決める際、次のような要素が考慮されます。
・被疑者の性格、年齢、境遇
・犯罪の軽重
・情状
・犯罪後の事情
◇被疑者の性格、年齢、境遇◇
被疑者の性質や素行、前科前歴の有無、家庭状況や職業、特に両親その他監督保護者の有無や住居定職の有無、若年または老年、学生であるか等が考慮されます。
◇犯罪の軽重◇
法定刑の軽重や、法律上刑の加重減軽の事由の有無、被害の程度などが考慮されます。
◇犯罪の情状◇
犯罪の動機・原因・方法・手口、被疑者の利得の有無、被害者との関係、犯罪に対する社会の関心、社会に与えた影響等が考慮されます。
◇犯罪後の事情◇
被疑者の反省の有無、謝罪や被害回復の努力、家族等の監督者保護者の有無を含めた環境調整の可能性の有無、被害者に対する被害弁償の有無、示談の成否、被害感情などが考慮されます。
上の事例のような被害者がいる傷害事件では、何よりも被害者への謝罪と被害弁償、そして示談を成立させることが重要な弁護活動のひとつになります。
加害者と被害者が直接交渉することは、感情論的になり交渉が難航したり、法外な示談金が請求されたりするおそれもありますので、弁護士を介して行うのがよいでしょう。
また、お酒が入って気が大きくなった末の暴行とも言えますので、今後はお酒を控えること、家族による監督が期待できることなど、再犯防止に向けて動いていることもしっかり主張することが重要です。
このような活動は、刑事事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が傷害事件を起こし対応にお困りであれば、弊所の弁護士に一度ご相談ください。
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