北海道美唄市の器物損壊事件における不起訴処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の弁護士が解説します。
~ケース~
北海道美唄市在住のAさんは知り合いのVさんに恨みを持っており、Vさんの管理する金魚の養殖池の水門部を開き、金魚を放流してしまった。
防犯カメラの映像からAさんの犯行であることが発覚し、VさんはAさんに弁償をするように要求したがAさんは聞き入れなかった。
業を煮やしたVさんはAさんを刑事告訴することした。
後日、Aさんは北海道美唄警察署で事情を聞かれることになった。
(フィクションです)
~何罪になるのか?~
Aさんの行為は何らかの違法な行為であるとはわかると思いますが、具体的にはどのような犯罪になるのでしょうか。
Aさんの行為は「養殖池の水門を開け、養殖されていた金魚を放流した」というものです。
勝手にVさんの管理する養殖池のある敷地に入っていますので建造物侵入罪(刑法130条)の成立が考えられます。
ただし、主たる行為は金魚の放流となっていますので建造物侵入罪は付随的な犯罪行為といえるでしょう。
金魚を放流する、すなわち「動物を逃がす」という行為を直接明示的に規定した法文はありませんが、刑法261条(器物損壊・動物傷害罪)になるとされています。
条文は以下の通りです
刑法261条
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
この法文からは動物を逃がす行為が該当すると読み取るのは困難です。
しかし、「物を損壊」とは物理的な破壊のみならず、「物の効用を失わせる一切の行為」とされています。
同様に理解しますと、「傷害」とは怪我をさせるといった行為のみならず「効用を失わせる一切の行為」とされます。
損壊と傷害の違いは客体が「物」であるか「動物」であるかということになります。
そのため、他人の動物を逃がすという行為は愛玩目的、営利目的といった効用を失わせる行為になりますので動物傷害罪を構成することになり、判例もそのような見解となっています(大判明治44年2月27日刑録17輯197頁)。
~親告罪~
親告罪とは、告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪です。
Aさんの行為に適用されるであろう器物損壊罪をはじめ、名誉毀損罪、侮辱罪、秘密漏示罪、過失傷害罪、私用文書等毀棄罪、略取誘拐罪や親族間の窃盗罪等がこれに当たります。
ちなみに平成29年の刑法改正までは、強制わいせつ罪や強姦罪(現在の強制性交等罪)等も親告罪とされていましたが、現在は非親告罪となっています。
~親告罪の刑事弁護活動~
器物損壊罪・動物傷害罪は親告罪となっています(刑法264条)ので被害者の刑事告訴がなければ検察官は公訴を提起することができません。
親告罪には
・告訴がなければ起訴できない
・一度取消した告訴は、同じ事実で再び告訴できない
という決まりがあります。
そのため器物損壊罪のような親告罪の刑事弁護活動は、被害者との示談が最優先されます。
未だ被害者が告訴していない場合は、示談書の中で告訴しないことを約束してもらい、既に告訴してしまっている場合は、告訴を取消すことを約束してもらうのです。
器物損壊(動物傷害)事件の場合、逮捕され勾留されることは稀で、基本的には在宅のまま事件が進行していきます。
在宅事件の場合、勾留された場合の様に10日間や20日間という日数制限がありませんので、比較的ゆっくりと手続が進んでいきます。
検察官としても、告訴が取り下げられると公訴が提起できない関係上、示談成立の有無が確定するのを待つケースが多いと思われます。
また、弁償等しなかった場合には民事訴訟によって損害賠償請求されることも考えられますので、可能な限り弁償等の示談をすることが重要です。
示談をすれば、今後民事訴訟をしないといった条項などを示談書に盛り込むことも可能です。
まずは弁護士に相談されることをおすすめいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は刑事事件専門の法律事務所です。
器物損壊事件で示談交渉によって不起訴とした事例は数多くあります。
まずは0120-631-881までお気軽にご相談ください。
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