北海道函館市の公務執行妨害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務札幌支部の弁護士が解説します。
【事例】
Aさんは、憲法の改正を求める市民団体に所属しており、北海道内でたびたびデモ行進に参加していました。
ある日、北海道函館市にてデモが行われることを知ったAさんは、それに参加して憲法改正を叫びながら市内を行進することにしました。
そのデモは大規模なものであり、北海道函館中央警察署が治安維持のために介入するまでに至りました。
熱が入りすぎたAさんは、本来のルートから外れて行進を行おうとし、それを制止しようと近づいた警察官の体を掴むなどの暴行に及びました。
(フィクションです。)
【公務執行妨害罪について】
公務員が職務を行うに当たり、その公務員に対して暴行または脅迫を加えた場合、公務執行妨害罪が成立する可能性があります。
刑法が公務執行妨害罪を通して保護しているのは、国や地方公共団体の事務である公務の円滑な遂行です。
そのため、公務執行妨害罪の主眼は公務の保護にあり、暴行・脅迫が向けられる公務員の保護ではないと考えられています。
このことから、公務執行妨害罪の手段となる暴行や脅迫は、怪我を負わせたり恐怖心を抱かせたりするものにとどまりません。
公務の円滑な遂行を阻害する危険さえあれば、暴行や脅迫の程度が激しかったり、実際に公務が阻害されたりせずとも、公務執行妨害罪に当たる可能性があります。
上記事例では、Aさんが警察官に対して体を掴むなどの暴行を加えています。
体を掴むという行為自体はさほど危険なものではありませんが、先述のとおり「暴行」と評価される可能性は十分あります。
そうすると、Aさんには公務執行妨害罪が成立し、①3年以下の懲役、②3年以下の禁錮、③50万円以下の罰金のいずれかが科されるおそれがあります。
【公務執行妨害罪の弁護活動】
~弁護士を通じて不起訴処分又は無罪判決になるよう主張~
身に覚えがないにも関わらず、公務執行妨害罪の容疑を掛けられてしまった場合(人違いの場合)、弁護士を通じて、警察や検察などの捜査機関及び裁判所に対して、不起訴処分又は無罪判決になるよう主張する必要があります。
この場合、アリバイや真犯人の存在を示す証拠を提出したり、公務執行妨害罪や業務妨害罪を立証する十分な証拠がないことを指摘したりすることが重要になります。
~職務行為の適法性を争う~
公務執行妨害事件について、相手方公務員が行っていた職務が違法である疑いがある場合には、職務行為の適法性を争うことで不起訴処分又は無罪判決になるよう主張することが考えられます。
この場合は、犯行当時の客観的状況や目撃者の証言などから公務員の職務行為が違法であることを出張していく必要があります。
【無罪判決について】
過去にあった警察官に対する公務執行妨害事件の無罪判決について、報道によると、弁護士は、被害者である警察官の立会いで行われた実況見分の結果が記載されている実況見分調書が正確でないことを理由に「被害者である警察官の供述は信用できない。」ことを主張していたようです。
実況見分調書とは、実況見分の結果を記載した司法書類で、実況見分を行った警察官が作成するものです。
まず、実況見分とは、事件現場の様子や、犯行状況、被害状況を明らかにするために行われるもので、裁判で問題となったのは、被害者である警察官の指示、説明の下で行われる被害者見分の結果を記載した実況見分調書です。
実況見分調書には、実況見分の様子が、文章と写真によって明らかにされており、その場所の見取り図も添付されているのですが、その内容は数センチ単位まで細かく記載された正確なものであるのが通常です。
しかし、この事件で作成された実況見分調書に添付されている見取り図は、実際の事件現場の構造と異なっていたことから、裁判官は「どうして不正確な(実況見分)調書が作成されたのか判然としない。」と指摘しています。
さらに被害者である警察官が、裁判において証言を変遷していることなどから、裁判官は「証言を信用してよいのか、ためらいが残る」と指摘して、無罪判決を言い渡したようです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部では、豊富な刑事事件の経験を有する弁護士が、様々な要望に沿えるよう力を尽くします。
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