盗聴は刑事事件になる?ならない?
いわゆる盗聴行為が刑事事件に発展する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説致します。
【ケース】
北海道札幌市豊平区在住のAさんは、札幌市豊平区の会社に勤める会社員です。
Aさんは会社の同僚であるVさんに恋慕していて、Vさんに交際相手がいるのか知りたいと考えました。
そこで、Vさんの言動を確認するべく盗聴器を仕掛けることを思いつき実行しました。
ある日、Aさんの自宅に豊平区内を管轄する豊平警察署の警察官が来て、盗聴の件で家宅捜索に来た旨説明を受けました。
≪ケースはすべてフィクションです。≫
【盗聴罪という罪はない】
他人の声や生活音を同意なく録音したり傍受したりする行為を俗に盗聴と呼ばれます。
モラルの問題として盗聴が問題であることは言わずもがなですが、法律上、盗聴全般を取り締まる法律はありません。
会議や日常のなかで、公開されることを前提としていない会話や、電話での会話がスクープやSNS上に流出したりしているのを耳にしたことがあるかもしれませんが、必ずしも法律上問題となるわけではありません。
【盗聴で問題となる罪】
とはいえ、盗聴により刑事罰が科される場合として、以下のような場合が考えられます。
・住居侵入罪
被害者の自宅内の音声を盗聴しようとする場合、被害者宅に入って盗聴器を設置する場合が考えられます。
もしこれが、被害者に無断で被害者宅に侵入して盗聴器を設置した場合、住居侵入罪に問われます。
条文は以下のとおりです。
刑法130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
・盗聴器の設置で問題となる罪
次に、盗聴器の設置で問題となる罪が考えられます。
例えば、盗聴器を隠すために被害者の鞄などに穴をあける等の場合は、器物損壊罪が適用されます。
条文は以下のとおりです。
刑法261条 前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
・固定電話の音声を盗聴する行為
電話線を用いて通信が行われる固定電話の音声を盗聴する行為は、有線電気通信法という法律に違反する可能性があります。
条文は以下のとおりです。
有線電気通信法9条 有線電気通信の秘密は、侵してはならない。
同法14条 第9条の規定に違反して有線電気通信の秘密を侵した者は、2年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
・被害者のスマホを用いた盗聴
上記のほか、被害者のスマートフォンを用いた盗聴が考えられます。
例えば、被害者のスマートフォンをウイルスに感染させるなどして不正な方法で盗聴を行った場合はコンピューターウイルスに関する罪が、被害者のスマートフォンを勝手に操作した場合には不正アクセスの罪が、それぞれ成立する恐れがあります。
条文はそれぞれ以下のとおりです。
(コンピューターウイルスに関する罪)
刑法168条の2第1項 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1号 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
2号 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
(不正アクセスの罪)
不正アクセス行為の禁止等に関する法律
3条 何人も、不正アクセス行為をしてはならない。
11条 第3条の規定に違反した者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
【盗聴で捜査を受けたら弁護士へ】
これまでにご説明したとおり、盗聴罪という罪はありませんが、盗聴の目的でした行為が罪に当たる場合や、盗聴そのものが罪に当たる場合もあります。
ケースのAさんのように、盗聴が理由で捜査を受けることになったという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご連絡ください。
在宅事件の場合、事務所にて無料で相談を受けることができます。
ご家族が逮捕・勾留された場合は初回接見サービス(有料)をご案内致します。