駅の窃盗事件で逮捕
駅での置き忘れ物が持ち去られてしまった事例を題材に、窃盗罪と占有離脱物横領罪の区別などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。
事例
北海道札幌市南区在住のAは、札幌市南区内の会社に勤める会社員です。
ある日、札幌市南区内の駅構内を利用していたVはベンチに手荷物を忘れたまま電車に乗り込み、忘れ物の手荷物に気付いたAは家に持ち帰りました。
他の利用客の証言やカメラの映像から、Aの犯行の可能性が浮上し、札幌市南区を管轄する札幌方面南警察署の警察官は、Aを窃盗の疑いで逮捕しました。
Aの家族は、刑事事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~ある日の駅構内での犯罪~
本稿を読んでいらっしゃる皆さんの中にも、本事例における被害者と同じような経験をした方も少なくないかもしれません。
また、反対にちょっとした出来心から、他人の物を持ち去っていってしまった加害者側の人もいるでしょう。
特に公共交通機関の発達した都市部においては、連日のようにこのような事件が起きていることは想像に難くありません。
本件Vは、休日に買い物を楽しんだ後、帰りがけに少し駅構内のベンチで休んでいました。
しかし、タイミングよくX地下鉄B駅のホームに電車が来たことから、その日購入した商品や財布を入れていた手荷物をそのままベンチに置き忘れてしまったのです。
そのままVは電車に乗り、降りた駅でC地下鉄に乗り換え、D駅からさらに電車に乗り込みました。
ここで、やっと冷静になったVは、財布を含めた手荷物をX地下鉄B駅のベンチに置き忘れてしまったことに気付いたのです。
ここで、運が良ければ誰かが忘れ物として、手荷物をB駅に届けてくれたかもしれません。
しかし、Vが焦ってB駅に戻った時にはもはやベンチには手荷物はなく、駅員に聞いてもそんな荷物は届いてないとの話でした。
つまり、VはB駅ベンチに置き忘れた荷物を、被疑者Aに無断で持っていかれてしまったのです。
このような事例では、窃盗罪(刑法235条)が成立するのか、占有離脱物横領罪(刑法245条)が成立するのかが重要な問題になります。
なぜなら、窃盗罪の法定刑が「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であるのに対し、占有離脱横領罪は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」と、窃盗罪の方がより罪が重く規定されているからです。
Aがどの時点で占有を取得したか(=AがVの所有物を持ち去った時点でVの占有があったか)どうかが、上記犯罪の区別のポイントになります。
ここで問題となる占有とは、刑法的には、物に対する事実的な支配のことをいいます。
本件では、Aが、Vが置き忘れた手荷物を持ち去った時点は、VがB駅の電車に乗り込んだ直後です。
窃盗罪が規定する行為である「窃取」(刑法235条)とは、被害者から加害者に占有を移転する行為であり、被害者の占有の有無はこの行為の時点で判断されることになります。
したがって本時点では、(占有の事実とはあくまで法律的な概念であるため)まだ手荷物の占有はVに残っていると考えるのが通常ですから、Aの行為により重い窃盗罪が成立することになるでしょう。
~駅構内・周辺における窃盗事件等~
特に多数人が集う都市部の駅構内やその周辺には、防犯上多数のカメラが設置されており、そこで働いている駅員は当然のことながら、鉄道警察隊も常時巡回しており、事件発覚のリスクは非常に高いです。
駅構内やその周辺は、窃盗等の罪に限らず、痴漢や盗撮など(いわゆる迷惑防止条例違反行為)も含め、犯罪が発覚しやすい状況にあるため、通常逮捕・現行犯逮捕等がされやすい環境です。
もしも、魔が差して他人の忘れ物などを持ち去ってしまった場合は、逮捕等されなかった場合にも事件が発覚する可能性は決して低くありません。
したがって、いち早く刑事事件に詳しい弁護士にその後の対処法を含め相談することが重要になります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は、置き引きなどの窃盗事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
北海道札幌市南区にて、窃盗や横領事件で逮捕された方のご家族は、弊所フリーダイヤル(0120-631-881)に今すぐお電話下さい。