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児童虐待で問題となる罪について弁護士事務所が解説:札幌市手稲区の架空の事例を通して

2023-11-27

児童虐待で問題となる罪について弁護士事務所が解説:札幌市手稲区の架空の事例を通して

児童虐待は、社会的にも法的にも重大な問題です。本記事では、札幌市手稲区を舞台にした架空の事例を用いて、児童虐待に関する法的側面を掘り下げます。この事例はフィクションであり、実際の事件や人物とは関連がありません。

1 児童虐待の定義と種類

児童虐待は、児童の健全な発達を妨げ、身体的、精神的、または感情的な害を与える行為です。この問題は多面的で、以下のような様々な形態をとります。

1.身体的虐待

  • 児童に対する身体的な暴力や傷害。
  • 打撃、揺さぶり、やけどなどが含まれます。

2.精神的虐待

  • 児童の精神的な健康や感情的な発達を害する行為。
  • 脅迫、侮辱、無視、過度な要求などが含まれます。

3.性的虐待

  • 児童を性的な行為に巻き込むこと。
  • 性的接触、ポルノへの露出などが含まれます。

4.ネグレクト(育児放棄)

  • 児童の基本的な身体的、感情的、教育的なニーズを無視する行為。
  • 食事、衣服、医療の提供不足、教育の機会の欠如などが含まれます。

これらの虐待形態は、しばしば重なり合い、複合的な問題を引き起こします。児童虐待は、児童の身体的、精神的な健康に深刻な影響を及ぼし、長期的な問題を引き起こす可能性があります。このため、早期の発見と適切な介入が非常に重要です。

2 札幌市手稲区の架空のケース

北海道札幌市手稲区に住む架空の家族を例に、児童虐待の事例を想定します。この家族には、2歳の実子がおり、親は日々のストレスから時に厳しい言葉を投げかけることがあります。ある日、子どもが学校でのトラブルを家に持ち帰り、そのことで親が感情的になり、子どもに対して身体的な暴力を振るってしまいます。この行為が近隣住民によって発見され、児童相談所に通報されることになります。

この事例では、以下の点に注目します。

  • 親のストレスが児童虐待につながる心理的背景。
  • 身体的暴力が児童虐待にあたる理由とその影響。
  • 近隣住民や児童相談所の役割と、通報後のプロセス。

この事例はフィクションであり、実際の事件や人物とは関連がありません。しかし、このような状況は現実にも存在し、児童虐待の深刻な問題を浮き彫りにします。反対に、不慮の事故で生じた怪我がきっかけで児童虐待が疑われるいわば冤罪の事件もあり、捜査機関側と弁護側とで主張が激しく対立する事例も多々存在します。

次に、この事例を踏まえて、児童虐待が疑われた際の法的手続きについて詳しく見ていきましょう。

3 法的対応:児童虐待が疑われた場合の手続き

児童虐待が疑われる場合、法的な手続きは複雑で多岐にわたります。このプロセスは、被害児童の保護と加害者への適切な対応を目的としています。以下に、主な手続きを概説します。

  1. 通報と初期対応
    • 児童虐待が疑われる場合、教師、医師、近隣住民などから児童相談所や警察に通報されることが一般的です。
    • 通報を受けた児童相談所や警察は、状況を把握し、必要に応じて現場に出向きます。
  2. 児童の一時保護
    • 虐待の疑いが強い場合、児童相談所は児童を一時保護することができます。
    • 一時保護は、児童の安全を確保し、詳細な調査を行うための措置です。
  3. 調査と評価
    • 児童相談所は、児童の身体的、精神的状態を評価し、家庭環境を調査します。
    • 必要に応じて、心理学者や医師などの専門家が関与することもあります。
  4. 法的措置
    • 虐待が確認された場合、加害者に対しては刑事訴追が行われることがあります。
    • 児童福祉法に基づき、児童の長期的な保護措置が検討されることもあります。
  5. 家庭への復帰または代替措置
    • 状況に応じて、児童は家庭に戻ることがありますが、家庭環境が改善されている必要があります。
    • 家庭環境が不適切な場合、養護施設などの代替措置が取られることがあります。

このプロセスは、児童の最善の利益を考慮して慎重に進められます。児童虐待の疑いがある場合、迅速かつ適切な対応が求められます。

4 加害者に科せられる罪と刑罰

児童虐待の加害者には、その行為の性質に応じて様々な罪が科せられる可能性があります。以下に、主な罪とその刑罰について解説します。

1.暴行罪

  • 身体的な虐待を行った場合、暴行罪が適用されることがあります。
  • 暴行罪は、刑法第204条により、15年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

2.傷害罪

  • 虐待が児童の身体に傷害を与えた場合、傷害罪が成立する可能性があります。
  • 傷害罪は、刑法第204条により、15年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

3.保護責任者遺棄罪

  • ネグレクト(育児放棄)の場合、保護責任者遺棄罪が適用されることがあります。
  • この罪は、刑法第217条により、7年以下の懲役に処せられる可能性があります。

4.監護者性交等罪

  • 性的虐待の場合、監護者性交等罪が成立する可能性があります。
  • この罪は、刑法第177条により、6月以上10年以下の懲役に処せられる可能性があります。

これらの罪に加えて、児童虐待の事案には、児童福祉法に基づく行政的な措置も伴います。加害者は、法的な刑罰に加えて、社会的な制裁や名誉の失墜などの重大な結果に直面することになります。

項目5:被害児童の保護と支援

児童虐待の被害に遭った児童の保護と支援は、法的にも社会的にも重要な課題です。以下に、被害児童への保護措置と支援体制について解説します。

児童相談所による保護

  • 児童虐待が疑われる場合、児童相談所は児童を一時的に保護することがあります。
  • この保護は、児童の安全を確保し、虐待から離れた環境でのケアを提供するためのものです。

医療機関での治療とケア

  • 身体的、精神的な傷害を受けた児童は、医療機関での治療が必要になることがあります。
  • 心理的なサポートも提供され、児童の回復を支援します。

心理的カウンセリングとサポート

  • 虐待の影響は心理的にも深刻であるため、専門のカウンセラーや心理療法士による支援が行われます。
  • このサポートは、トラウマの克服や感情的な安定を目指します。

教育的支援

  • 虐待を受けた児童は、学校生活において特別な配慮や支援を必要とすることがあります。
  • 教育機関は、これらの児童に対して適切な教育的支援を提供する責任があります。

長期的なケアとフォローアップ

  • 虐待の影響は長期にわたることが多いため、継続的なケアとフォローアップが重要です。
  • 児童の成長に合わせて、必要なサポートを提供し続けることが求められます。

被害児童の保護と支援は、単に身体的な安全を確保するだけでなく、心理的な回復と社会的な再適応を目指すものです。これらの措置は、児童の将来に大きな影響を与えるため、慎重かつ総合的なアプローチが必要です。

7 まとめと考察

本記事では、児童虐待の法的側面について、札幌市手稲区の架空の事例を通じて探求しました。ここで、重要なポイントをまとめ、児童虐待に対する法的側面の重要性について考察します。

児童虐待の多様性

  • 児童虐待は、身体的、精神的、性的虐待、ネグレクトといった多様な形態をとります。
  • それぞれの虐待形態には、異なる法的対応が必要です。

法的手続きの複雑さ

  • 児童虐待が疑われる場合、一時保護、調査、法的措置など、複雑な手続きが伴います。
  • これらのプロセスは、児童の最善の利益を考慮して慎重に進められるべきです。

加害者への法的責任

  • 加害者は、暴行罪、傷害罪、保護責任者遺棄罪など、様々な罪に問われる可能性があります。
  • 法的責任は、社会的な制裁と共に、加害者に重大な影響を与えます。

被害児童の保護と支援

  • 虐待を受けた児童に対しては、医療的、心理的、教育的な支援が不可欠です。
  • 長期的なケアとフォローアップにより、児童の回復と社会への再適応を支援します。
  1. 予防と社会的対策の重要性
  • 児童虐待の予防と対策は、法的枠組みの強化と社会全体の協力によって進められるべきです。
  • 啓発活動、早期介入、多機関間の協力が、予防の鍵となります。

児童虐待は、単なる個々の家庭の問題ではなく、社会全体が取り組むべき課題です。法的側面の理解と適切な対応は、児童を守り、健全な成長を支援するために不可欠です。

8 まとめと弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の紹介

本記事を通じて、児童虐待に関する法的側面を深く掘り下げてきました。この問題に対処するためには、法的知識と専門的な支援が不可欠です。ここで、児童虐待事件における専門的な支援を提供する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部を紹介します。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部について

  • この法律事務所は、児童虐待を含む刑事事件に特化した法律サービスを提供しています。
  • 専門知識を持つ弁護士が、被害者支援や加害者の法的代理など、幅広いニーズに対応します。
  • 事件の初期段階からの介入により、適切な法的手続きの進行を支援し、クライアントの権利を守ります。

サービスの特徴

  • 児童虐待事件における法的アドバイス。
  • 加害者側の取調べ対応や証拠収集といった弁護活動。
  • 緊急時の迅速な対応と、個々のケースに合わせたきめ細かいサービス。

札幌支部の役割

  • 札幌市及び周辺地域における児童虐待事件に特化したサービスを提供。
  • 地域社会との連携を重視し、地域に根差した法律サービスを展開。

児童虐待は、被害者の未来に深刻な影響を及ぼすだけでなく、社会全体にも大きな問題を投げかけます。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は、この複雑で繊細な問題に対して、専門的な知識と経験をもって対応します。児童虐待に関わる法的問題に直面した際には、専門家の支援を求めることが重要です。

北海道札幌市手稲区にて、児童虐待の疑いで捜査されている場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の弁護士に御相談下さい。

在宅事件の場合、事務所にて無料で相談を受けることができます。

現住建造物等放火罪:事例を交えた詳細な法律解説

2023-10-24

現住建造物等放火罪:事例を交えた詳細な法律解説

現住建造物等放火罪は、その名の通り、人が住んでいる建物に放火する行為に対する罪です。 この罪は非常に重く、最悪の場合、死刑にもされうる重大な犯罪です。 今回は、この罪についての法的側面を事例を交えて詳しく解説します。

項目1:現住建造物等放火罪とは?

現住建造物等放火罪(以下、現住放火罪)は、人が住んでいる建物や現に人がいる建造物に放火する行為に対する罪です。 この罪は、日本の刑法第108条に規定されています。 最も重い場合、死刑にもされうる非常に重大な犯罪です。

この罪は、放火行為によって不特定多数の人の生命・身体・財産に危険を及ぼす可能性があるため、非常に厳しく罰せられます。 具体的には、死刑、無期懲役、または五年以上の有期懲役が科される可能性があります。

法律用語で言うと、この罪は「公共の平穏を保護法益」としています。 つまり、この罪によって保護されるのは、公共の安全と平穏です。

項目2:この罪が成立する具体的な要件

現住放火罪が成立するためには、いくつかの具体的な要件が必要です。 まず、放火行為が行われた建造物が「現に人が住居に使用している」か「現に人がいる」状態である必要があります。

「現に人が住居に使用している」とは、その建造物が日常的に人の生活の場として使用されている状態を指します。 一方で、「現に人がいる」とは、放火が行われた瞬間に、その建造物内に人が存在している状態を意味します。

次に、放火行為自体ですが、「日的物の燃焼を惹起させる行為」または「それに原因力を与える行為」が必要です。 具体的には、目的物に直接火をつける行為や、媒介物に火をつけて目的物に火を移す行為などが該当します。

さらに、この罪は故意である必要があります。 つまり、行為者が放火によって建造物が燃えること、そしてその建造物が「現に人が住居に使用している」または「現に人がいる」状態であることを認識している必要があります。

以上のような要件が揃った場合、現住放火罪が成立します。

項目3:「放火」とは何か?

「放火」という言葉は一般的によく使われますが、法律の文脈での「放火」には特定の定義があります。 具体的には、「日的物の燃焼を惹起させる行為」または「それに原因力を与える行為」とされています。

この定義にはいくつかの要点があります。 まず、放火行為は必ずしも目的物に直接火をつける行為だけではありません。 媒介物に火をつけて、その火を目的物に移すような行為も放火とされます。

また、既に火がついている場所に油を注ぐなどして、火の勢いを助長・増大させる行為も放火に該当します。 このような行為は、火力の勢いを助長・増大させるという点で、放火行為と同視されます。

さらに、放火行為は故意である必要があります。 つまり、火をつける行為自体が偶然や事故であった場合、放火罪は成立しません。

項目4:不作為による放火の可能性

一般的に、犯罪は行為によって成立するものと考えられがちですが、不作為、すなわち何もしないことによっても犯罪が成立する場合があります。
このような状況は、不作為犯と呼ばれます。
現住放火罪においても、不作為による放火の可能性が考えられます。

例えば、火事に気づいたにも関わらず、消火活動を行わない、または消防への通報を怠った場合、その行為が放火に該当する可能性があります。
特に、その人が建物の所有者や管理者であり、消火の責任がある場合には、不作為によって現住放火罪が成立する可能性が高まります。

ただし、このような場合でも、行為者が火事によって「現に人が住居に使用している」または「現に人がいる」建造物が燃えることを認識している必要があります。
また、その人が消火活動を行う能力があったかどうかも重要な要素となります。

不作為による放火は、一見、行為による放火とは異なるように思えますが、法的には同じく厳しく罰せられる可能性があります。

項目5:実行の着手とは?

犯罪が成立するためには、単に犯罪の意志を持っているだけでは不十分です。 その意志を具体的な行動に移し、犯罪を「実行の着手」した状態で初めて、犯罪が成立する可能性があります。 現住放火罪においても、この「実行の着手」が非常に重要な要素となります。

「実行の着手」とは、犯罪を完成させるための具体的な行動を開始した状態を指します。 例えば、放火するためにガソリンを購入したり、火をつけるための道具を用意したりする行為は、実行の着手に該当する可能性があります。

しかし、これらの行為が必ずしも「実行の着手」に該当するわけではありません。 重要なのは、その行為が犯罪を完成させるための「直接的な手段」であるかどうかです。 例えば、ガソリンを購入する行為が、他の合法的な目的で行われた場合、実行の着手には該当しない可能性があります。

このように、「実行の着手」は犯罪が成立するかどうかを判断する重要な要素であり、具体的な事例や状況によってその評価が変わる可能性があります。

項目6:この罪が成立しない場合の他の罪

現住放火罪が成立しない場合でも、その行為が他の罪に該当する可能性があります。 例えば、放火行為が「現に人が住居に使用している」または「現に人がいる」建造物以外で行われた場合、一般的な放火罪(刑法第109条)や重大な場合には特定放火罪(刑法第110条)に該当する可能性があります。

また、放火行為が成立しなかった場合でも、その行為が他人の財産を損壊する可能性がある場合、器物損壊罪(刑法第234条)に該当することも考えられます。

さらに、放火行為が人の生命や身体に危険を及ぼす可能性がある場合、傷害罪や殺人罪に該当する可能性もあります。 特に、放火行為が他人の死亡につながった場合、殺人罪が成立する可能性が高くなります。

このように、現住放火罪が成立しない場合でも、その行為が他の罪に該当する可能性は高く、それぞれの罪に応じた刑罰が科される可能性があります。

項目7:弁護活動の重要性

現住放火罪は非常に重大な犯罪であり、その刑罰も厳しいため、弁護活動が非常に重要です。 特に、この罪が疑われる場合、早期の段階で専門の弁護士に相談することが求められます。

弁護士は、証拠の収集や事実関係の確認、さらには公判における弁護戦略の立案など、多岐にわたる活動を行います。 また、犯罪が成立するかどうかの微妙な要件、例えば「実行の着手」や「故意」などについて、専門的な知識と経験を持っています。

さらに、弁護士は被告人の人権を守る役割も果たします。 例えば、取り調べの際に不当な圧力がかかった場合や、証拠が不十分な場合には、その事実を明らかにして、適切な裁判が行われるように努力します。

このように、現住放火罪に関わる場合、弁護活動は被告人にとって、また社会にとっても非常に重要な活動です。 早期の段階での専門的な弁護が、より公正な裁判を実現するためには不可欠です。

項目8:まとめと弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の紹介

本記事では、現住建造物等放火罪について詳細に解説しました。 この罪は非常に重大な犯罪であり、成立する要件やその他に該当する可能性のある罪、さらには弁護活動の重要性についても触れました。 法律用語や要件が複雑であるため、専門的な知識と対応が必要です。

このような複雑な刑事事件に対応するためには、専門の弁護士の協力が不可欠です。 ここで、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部を紹介します。 同事務所は、刑事事件に特化した法律事務所であり、経験豊富な弁護士が在籍しています。 早期の段階での適切な弁護活動が、より公正な裁判を実現するためには不可欠です。

何か問題が発生した場合、早急に専門の弁護士に相談することを強くお勧めします。

強盗罪について

2023-10-12

強盗罪について

強盗罪は重罪であり,逮捕・勾留されて実刑で刑務所に入る可能性があります。
今回は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が,強盗罪について解説いたします。

【強盗罪の条文】

(強盗)
第236条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は,強盗の罪とし,五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者も,同項と同様とする。

【強盗罪の保護法益】

強盗罪は,財産的法益だけでなく,人格的法益をも,その保護法益としております。
暴行・脅迫を財物奪取の手段とする点に着目して,窃盗罪より重く処罰することにしております。
財物のみでなく,財産上の利益を得た場合も,同様に処罰されます。
相手方の反抗を抑圧するに足る程度の暴行・脅迫により,被害者の意思に反して,財物の占有を奪取する犯罪です。
反抗を抑圧するに足りない程度の暴行・脅迫の場合は,瑕疵があるものの一応は相手方の意思に基づく占有の移転があり,恐喝罪となります。

【強盗罪における暴行・脅迫】

暴行は,身体に向けられた不法な有形力の行使をいいます。
脅迫は,害悪の告知をいいます。
財物奪取の目的遂行の障害となり得る者に対して加えられれば足り,必ずしも財物を所持する者に加えられる必要はありません。

暴行・脅迫は,被害者の反抗を抑圧するに足りるものであることを要します。
被害者に加えられた暴行・脅迫の程度の判断は,社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものかどうかという客観的基準によって決することになります。
具体的事案における被害者の主観を基準に判断はされません。
客観的に反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫が加えられた以上,現実に被害者の反抗が抑圧されなかったとしても,強盗罪における暴行・脅迫となります。
その判断は,暴行・脅迫の態様だけではなく,犯行場所,犯行時刻,周囲の状況,相手方の性別・年齢・体格等も考慮して,具体的に判断されることになります。
同程度の暴行・脅迫であっても,それが行われた状況,犯人と相手方の性別・年齢等の事情等により,反抗を抑圧するに足りる程度のものかどうかの判断を異にする場合があります。
おもちゃのけん銃を突き付ける行為は,それが本物のけん銃ではないと容易に見破られる状況でされたのでない限り,反抗を抑圧するに足りるものといえます。

【強盗罪の強取とは】

強取とは,相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を手段として,財物の事実上の占有を自己が取得し,又は第三者に取得させることをいいます。
行為者が相手方から財物を奪取する場合だけでなく,相手方が交付した財物を受領することも,それが相手方の自由意思に基づくものでない限り,強取に当たります。
暴行・脅迫を加えて財物を奪取する意思で,まず財物を奪取した後に被害者に暴行・脅迫を加えた場合も,強取に当たります。

暴行・脅迫を加えて相手方の反抗を抑圧した後に,財物奪取の意思を生じ,財物を奪取した場合が問題となります。
新たに加えられる暴行・脅迫は,通常の強盗の場合に比して程度の弱いものでも反抗を抑圧するに足りると思われ,状況次第では犯人がその場に居続けるだけで足りる場合があります。
先に加えられた暴行・脅迫と人の存在とが相まって,財物奪取目的の暴行・脅迫と同視されることになります。

【強盗罪における故意】

故意の内容として,暴行・脅迫を加えて相手方の反抗を抑圧し,その財物を奪取することの認識を有することが必要です。
財物の種類・数量を個別的に認識する必要はなく,予定外の財物を奪取した場合にも故意に欠けることはありません。
窃盗罪同様,「権利者を排除して他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従って利用し又は処分する意思」である不法領得の意思も必要です。

【財産上の利益】

不法に財産上の利益を得たら,2項の強盗利得罪が成立します。
財産上の利益は,1項の財物以外のすべての財産上の利益を指し,積極的財産の増加であると,消極的財産の減少であるとを問いません。
債務の免除や履行期の延期,債務負担の約束,財産的価値のある役務・輸送サービスの提供等は,いずれも財産上の利益に当たります。

【強盗罪の着手時期】

財物奪取の目的で相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を加えた時点で,強盗罪の実行の着手が認められます。
強盗の故意でまず財物を奪取しても,暴行・脅迫が行われない限り,強盗罪の実行の着手は認められません。
財物奪取の意図なく,暴行・脅迫を加え,相手方の反抗抑圧状態に乗じて財物を奪取する場合には,財物奪取に着手した時点で強盗罪の実行の着手が認められます。

既遂は,財物の取得の時期を基準とし,暴行・脅迫により財物に対する被害者の占有を排し,これを自己又は第三者の実力支配下に置いた時となります。
まず財物を奪取した後に,暴行・脅迫を加えた場合には,これにより奪取した財物を確保した時点で強盗既遂となります。

【強盗罪の未遂犯処罰規定】

(未遂罪)
第243条 第二百三十五条から第二百三十六条まで,第二百三十八条から第二百四十条まで及び第二百四十一条第三項の罪の未遂は,罰する。
(強盗予備)
第237条 強盗の罪を犯す目的で,その予備をした者は,二年以下の懲役に処する。

未遂罪だけでなく,予備罪も処罰されます。
強盗罪の危険性,反社会性の大きさを考慮して,その予備行為を処罰することにより,強盗の実行に至る前にこれを鎮圧しようとしております。

【強盗の予備罪】

予備罪は目的犯であり,強盗の目的でその予備行為がされることを要します。
いわゆる居直り強盗や事後強盗の目的のように,相手方に暴行・脅迫を加える目的が未必的なものに止まる場合においても成立します。

予備とは,強盗罪の実行の準備行為をすることをいいます。
単なる計画や謀議だけでは足らず,強盗の決意を外部的に表現するような行為がされることを要します。

【窃盗からの暴行等で問題となる事後強盗罪】

(事後強盗)
第238条 窃盗が,財物を得てこれを取り返されることを防ぎ,逮捕を免れ,又は罪跡を隠滅するために,暴行又は脅迫をしたときは,強盗として論ずる。

事後強盗罪は,その犯行形態の実質的違法性やしばしば相手の殺傷という重大な結果を伴うことから,処罰されることになります。

本罪は窃盗犯人を主体とします。
窃盗犯人とは,窃盗の実行に着手した者をいいます。

財物を得てこれを取り返されることを防ぐ目的,逮捕を免れる目的,罪跡を隠滅する目的のいずれかの目的が必要になります。
相手が現実に財物を取り返そうとしたり犯人を逮捕しようとしていたか否かは問われません。

事後強盗罪も強盗として論じられる以上,暴行・脅迫の程度も,強盗罪の場合と同様に相手の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要します。
暴行・脅迫の相手方は,窃盗の被害者だけではなく,本条所定の各目的を遂げるのに障害となる者であれば足ります。

事後強盗罪が成立するためには,財物取得の場面と暴行・脅迫の場面との間の場所的・時間的関係や,状況としての繋がりなどを総合して,当該暴行・脅迫が財物の取得と密接な関連性を有すると認められる状況の下に行われることが必要です。

本罪の実行の着手は,窃盗犯人が,本条所定の目的で相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫に着手した時点で認められます。
事後強盗強盗として論じられる以上,その既遂・未遂の基準も強盗罪と同様に財物取得の有無,すなわち窃盗の既遂・未遂により決せられます。

【睡眠薬を飲ませる等により金品を盗む昏睡強盗罪】

(昏酔強盗)
第239条 人を昏酔させてその財物を盗取した者は,強盗として論ずる。

暴行・脅迫を手段としなくても,その実質的違法性の程度は強盗罪と同程度であると考え,昏睡強盗罪が成立することになります。
事後強盗罪とともに準強盗と呼ばれます。

昏酔させるとは,一時的又は継続的に,相手方に意識喪失その他意識又は運動機能の障害を生じさせて,財物に対する有効な支配を及ぼし得ない状態に陥らせることをいいます。
典型的には失神させたり睡眠状態に陥らせる場合がこれに当たりますが,意識はあっても身体的機能を麻痺させる場合も含みます。
昏睡させる方法は,薬物の使用,麻酔薬の施用等制限はありません。
相手を昏睡させる行為は,財物盗取の目的でされなければなりません。

【強盗の罪における弁護活動について】

これまで見てきたとおり、強盗に関する罪は多種多様で、成立した場合の刑事罰は重いものとなっています。
また、今回のブログで説明した強盗の結果、被害者が死傷してしまった場合には、強盗致死傷の罪が適用され、無期懲役や死刑といった厳しい刑事罰が科せられます。

強盗の罪で家族が逮捕されているという場合、身柄解放を求める活動、被害者との謝罪・弁済を行う活動、取調べ状況の確認やアドバイス、起訴後の公判・公判前整理手続など、様々な場面で事案に即した弁護活動が求められます。
北海道札幌市にて、家族が強盗罪で逮捕・勾留された場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の弁護士による初回接見サービス(有料)をご利用ください。

器物損壊事件の解説

2023-09-21

器物損壊事件の解説

器物損壊事件は日常生活でも頻繁に報道される犯罪の一つです。 この記事では、具体的な事例を想定しながら器物損壊が問題となる罪や罰について詳しく解説します。

器物損壊罪とは?

器物損壊罪とは、他人の所有する物を故意に壊す行為を指します。
この罪は一見単純に思えますが、具体的な事例や状況によっては刑法上の扱いが大きく変わることがあります。
例えば、損壊の意図があるかないか、損壊した物の価値などが影響を与えます。
日本の刑法では、このような行為を犯罪として処罰しています。
次の項目では、この罪に関する法的根拠を詳しく見ていきましょう。

法的根拠:刑法第261条

刑法第261条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

器物損壊罪の法的根拠は、日本の刑法第261条に明示されています。 この条文によれば、他人の物を損壊した者は、3年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金に処されるとされています。 この法条は一見シンプルですが、実際の裁判では多くの要素が考慮されます。 たとえば、損壊された物の価値や、犯行の動機、前科の有無などが刑の重さに影響を与えることがあります。

故意犯処罰の原則

器物損壊罪には、物を壊したという客観的な状況だけでなく、故意、つまりは意図した行為であるという主観面での要件があります。
器物損壊罪の条文には明記こそされていないものの、刑法38条1項で「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」と規定されていることから、原則として故意にした行為でない限り、罪には問われないのです。

例えば、相手を殴ろうと考えてゴルフクラブで被害者の頭を殴打した場合、これは故意にゴルフクラブで相手の頭を殴打していることから、故意が認められるとして殺人未遂罪や傷害罪が成立します。他方、公園でゴルフの素振りをしていたところ手が滑ってゴルフクラブが飛んで行ってしまったとして、通行人の頭に当たり怪我をした場合、これで傷害罪は成立しません。※ただし、過失(不注意)により怪我をさせたことによる過失傷害罪が成立する可能性はあります。

器物損壊罪については、過失犯処罰規定は設けられていないため、例えば道端で具合が悪くなって倒れた拍子にお店の看板を倒して壊してしまったとしても、器物損壊罪は成立しません。

具体的な事例:車窓を割る行為

一般的な器物損壊の事例としてよく挙げられるのが、車窓を割る行為です。
この行為は明らかに他人の所有物を損壊するものであり、刑法第261条に基づいて罰せられる可能性が高いです。
しかし、事例によっては、損壊した理由や状況が詳細に調査されます。
たとえば、何らかの事故や自然災害で窓が割れた場合、故意がないため刑事責任は問われません。
逆に、恨みや怒りから窓を割った場合、その故意性が重く見られ、罰金や懲役の可能性が高まります。
また、複数回にわたって同じ行為を繰り返した場合、ストーカー行為とも結びつき、より重い刑罰が科されることもあります。

刑罰と量刑基準

器物損壊罪での刑罰は、主に懲役または罰金となります。 具体的には、刑法第261条により、3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。 しかし、実際の刑罰は様々な要素によって決まります。 例えば、損壊した物の価値、被害者との関係、過去の犯罪歴、犯行の動機などが考慮されることが一般的です。 特に重要なのは「量刑基準」と呼ばれるもので、これに基づいて裁判所が刑罰を決定します。 量刑基準は裁判例や判例によっても影響を受けるため、同じような犯罪でも刑罰が異なる場合があります。

補償と民事訴訟

器物損壊事件は刑事訴訟だけでなく、民事訴訟にもつながる可能性があります。
つまり、刑事責任とは別に、被害者から損害賠償請求されるケースも多いです。
特に高額な物を損壊した場合、被害者はその価値に見合った賠償を求めるでしょう。
この際、被害者側が提出する証拠や、犯人側の賠償能力も裁判で考慮されます。
なお、民事訴訟においては、通常「過失」も問われる場合があります。
これは刑事訴訟とは異なり、故意でなくても賠償責任が発生する可能性がある点に注意が必要です。
したがって、器物損壊事件に巻き込まれた場合、刑事責任だけでなく、民事責任にも備える必要があります。

器物損壊事件における注意点

器物損壊事件は一見シンプルな犯罪に見えるかもしれませんが、多くの要素が影響を与える複雑な事件です。 故意や動機、損壊した物の価値、被害者との関係などが、刑罰や賠償金に大きく影響を与えます。 また、刑事訴訟だけでなく、民事訴訟の可能性も常に考慮する必要があります。 この記事を通じて、器物損壊事件についての基本的な知識と、注意すべきポイントを把握していただければと思います。 何か問題が発生した場合には、早急に専門の弁護士に相談することが最も安全な対応と言えるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部について

あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は、器物損壊事件をはじめとする各種刑事事件に精通した弁護士が多数在籍しています。 このような事件は、一見単純に思えても、法的には多くの複雑な要素が絡み合っています。 故意性、動機、被害者との関係性、そしてそれらがどのように量刑基準や損害賠償に影響を与えるかなど、専門的な知識と経験が必要です。

私たちの事務所では、器物損壊罪を始めとする各種法条に基づいた詳細な解説と実績があります。 事件の内容によっては、不起訴処分を獲得した事例も多数ございます。

何か問題が発生した場合、早急に専門の弁護士に相談することが重要です。 あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部では、一人一人のクライアントに対して最適な法的サービスを提供することをお約束します。 お気軽にご相談ください。

違法な取調べで作成された調書を破ったら?

2023-08-15

違法な取調べで作成された調書を破ったら?

被疑者を逮捕していないにも拘わらず、逮捕と同視し得るような状態において行った違法な取調べによって作成された調書の法的性質とそれを破った場合の問題点について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が判例を踏まえ解説致します。

【事例】

北海道虻田郡俱知安町在住のAさんは、北海道内を管轄する警察官によりとある嫌疑をかけられ、任意同行を求められました。
Aさんは身に覚えはなく任意同行には応じないと説明しましたが、警察官は令状なしに強引に警察署に連行し、Aさんが帰りたいと言ったにもかかわらず取調べを行いました。
最終的に警察官は供述調書(弁解録取書)を作成し、それを読み上げAさんに署名捺印を求めたところ、Aさんはこんな供述調書は違法で無効であるとして憤り、警察官が作成した調書を破りました。

≪最判昭57・6・24の判例を土台にしていますが、地名等はすべて変更しています。≫

【違法な取調べで作成された調書も公用文書に当たる】

今回Aさんの行為で問題となるのが、警察官が作成した供述調書(弁解録取書)を破ったという点です。
警察官は地方公務員であり、公務員が作成した文書を毀棄した場合、一般人が作成した契約書などを破棄する行為に比べ、重い罪である公用文書等毀棄罪が成立します。
条文は以下のとおりです。

(公用文書等毀棄)
刑法258条 公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

よって、Aさんは仮に無実の罪で違法な取調べを受けていたとしても、供述調書を破ったことで公用文書等毀棄罪(あるいは公務執行妨害罪)に問われることになり得ます。
しかし、違法な取調べで作成された供述調書は公用文書には当たらないのではないか、という点が問題となります。
これについて、原判決(高等裁判所の判決)では違法な取調べの過程で作成された供述調書を破いた場合、公用文書等毀棄罪は成立せず、被告人は無罪としました。
しかし最高裁判所は、取調べの違法性については直接の言及を避けつつ、その作成の過程で違法性が認められる場合でも、既にそれが文章としての意味・内容を備えている以上は、公用文書に当たるとして、それを毀棄した(破いた)被告人には公用文書等毀棄罪に問われるとしました。

【違法な取調べを受けたら冷静に弁護士に相談】

とはいえ、違法な取調べ(違法と疑われる取調べ)によって作成された供述調書については、証拠能力に疑義が生じ裁判で証拠として採用されないことが考えられます。
では、違法な取調べ受けた場合にはどうすれば良いでしょうか。

Aさんのように感情的になって供述調書を破るようなことはせず、供述や供述調書等への署名捺印は拒否することが望ましいと言えます。
そして、逮捕等されていなければ、すぐに弁護士に相談し、取調べに違法性がないかを検討したうえで、
・弁護人面前調書をつくるなどして証拠保全に努める
・弁護人から警察署長や警察本部に対し抗議する
・刑事裁判になった場合に証拠能力を争う

などの対応が必要となります。

北海道虻田郡にて、違法な取調べを受けた可能性があるという場合、公用文書等毀棄罪に当たるような行為をすることなく冷静に対応したうえで、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の弁護士による無料相談初回接見サービス(有料)をご利用ください。

【お客様の声】強要未遂事件で逮捕されるも不起訴

2023-07-30

【お客様の声】強要未遂事件で逮捕されるも不起訴

配偶者の不倫相手に対し電話やメールで繰り返し謝罪を求めたという強要未遂事件で逮捕されたものの、弁護人による示談交渉や取調べ対応の末不起訴になったという事案について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説致します。

【事例】

北海道芦別市在住のAさんは、芦別市内の会社に勤める会社員です。
Aさんには配偶者Xさんがいるところ、XさんがVさんと不倫関係にあることを知ったAさんは、Vさんに対し「お前がXと不倫していることは知っているんだ」「5分以内に謝罪に来なければどうなるか分かっているのか」などと繰り返し電話やメールで連絡を繰り返しました。

芦別市に住むVさんが芦別市内を管轄する芦別警察署に相談し被害届を提出したことで捜査が開始し、芦別警察署の警察官はAさんを強要未遂罪で通常逮捕しました。

≪守秘義務・個人情報保護のため、事件地や一部事件内容を変更しています。≫

【強要未遂罪について】

(強要罪)
刑法223条1項 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
(未遂犯処罰規定)
同3項 前二項の罪の未遂は、罰する。

強要未遂罪は、被害者に対して義務のないことをするよう強いたものの、結果的に被害者がそれに応じなかったという場合に成立する罪です。
今回のAさんの場合、(道義的問題があるかどうかという点は別にして)Vさんとしては謝罪する義務はないにも拘わらずそれを強いたものの、Vさんは謝罪する前に芦別警察署の警察官に相談して被害届を提出したため、その結果を遂げなかったことから、強要未遂罪に問われました。

【不起訴を求める弁護活動】

不起訴とは、検察官が公判請求(起訴)しないことを意味します。
起訴されなければ刑事裁判は開かれないため、被疑者は刑事罰が科せられることはありません。
不起訴の理由は「嫌疑なし・不十分(起訴できるだけの証拠がない)」「起訴猶予(起訴することができる証拠はあるが、起訴しない)」「被疑者死亡」「刑事告訴取消」など複数あります。

今回のAさんの事件の場合、部分的に被害者の主張と食い違っている部分がありましたが、大部分について罪を認めとても反省していました。
そこで弁護士は、Aさんの家族から依頼を受けた当日には弁護人選任届を提出し、Vさんとの示談交渉を行いました。
Vさんは当初、Aさんへの処罰感情が大きく示談交渉そのものを拒否されていましたが、弁護士が丁寧に説明を繰り返した結果、示談に応じてくださることとなりました。
示談書にはAさんがVさんに対し心からの謝罪を行うこと、賠償金を支払うこと、AさんがVさんに対し二度と連絡・接触しないこと、VさんがAさんに対し今回に限り厳しい刑事処分を求めないこと(宥恕条項)といった内容を約束する示談書を締結することができました。

なお、Aさんは大部分で罪を認めていましたが、一部やっていないことについてもやったとされ取調べを受けていたため、弁護士は2日に1度のペースで接見を行い、取調べ状況やAさんの心身の調子を確認しました。

Aさんの捜査を担当した検察官は、Aさんが罪を認めて謝罪し弁済していること、今後Vさんに接触しないことを誓約していること、VさんがAさんに対し今回に限り厳しい刑事処分を求めないことを示していることなどを踏まえ、Aさんを不起訴としました。
処分理由は「起訴猶予」であったと考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部では、強要未遂罪を含め数多くの刑事事件で弁護活動を行ってきました。
強要未遂罪は、未遂とはいえ罰金刑が用意されていないことから略式手続に付されることはないため、適切な弁護活動を行わなければ起訴され公開の法廷で刑事裁判を受けることになります。
また、民事上の損害賠償等の請求を受けるおそれもあります。
北海道芦別市にて強要未遂罪で家族が逮捕された場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の弁護士による初回接見サービス(有料)をご利用ください。

弁護士の接見交通権とは

2023-06-27

弁護士の接見交通権とは

被疑者・被告人が勾留されている状況での接見交通権について、例外的に行われる接見指定などと併せて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説致します。

【事例】

北海道岩見沢市在住のAさんは、岩見沢市内の会社に勤める会社員です。
Aさんは、知人Xさん、Yさんと打合せをしたうえで、岩見沢市内に住むVさんに因縁をつけて脅迫し、現金200万円を脅し取りました。
Vさんから恐喝事件での被害届を受けた岩見沢市内を管轄する岩見沢警察署の警察官は、Aさんらを恐喝罪で通常逮捕しました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【恐喝罪について】

今回のケースでは、Aさん、Xさん、YさんがVさんに因縁をつけて脅迫し、現金200万円を脅し取ったという事例を想定しています。
恐喝罪の条文は以下のとおりです。

刑法249条1項 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

【接見交通権について】

接見交通権とは、簡単に言うと逮捕・勾留されている被疑者・被告人と弁護人とが自由に面会することを認めるルールです。
ここでいう用語について触れておきます。

被疑者:罪を犯したと疑われ捜査されている人
被告人:罪を犯したと疑われ起訴されて刑事裁判を受ける前、あるいは裁判を受けている最中の人
弁護人:司法試験に合格して弁護士として登録し、且つ、その事件の被疑者・被告人の弁護をする立場にある者

接見交通権は刑事訴訟法で以下のとおり保障されています。

刑事訴訟法39条1項 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第31条第2項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。

よって、弁護人(及び弁護人になろうとする者、以下では「弁護人等」)は、立会人なしでの接見や書類の授受が認められています。
というのも、一般の方が面会をするうえでは、

・平日の日中の時間帯にしかできない
・逮捕段階では面会は認められていない
・時間は原則15分未満
・面会時には警察官などの立会いがある
・手紙などは内容を確認される

といった厳しい制約がありますが、弁護人等にはこれらの制限がありません。
理屈上は、24時間365日接見を行うことができるということになります。
(最も、護送中あるいは病院で受診をしている等、接見室が使えないような状況下で物理的に接見が出来ない場合もあります。)

【接見交通権と接見指定】

接見交通権が認められているため弁護人等は被疑者・被告人と自由に接見をすることができますが、例外的に、接見が制限される場合があります。

刑事訴訟法39条3項 検察官、検察事務官又は司法警察職員…は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第1項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。

まず、接見を制限できるのは起訴前、すなわち被疑者段階に限られます。
起訴された被告人に対しては、制限は及びません。
次に、接見を制限できるのは「捜査のため必要がある」場合に限られます。
そして、その場合に警察官や検察官・検察事務官は、弁護人等に対して、接見等の日時等を指定することができるとしています。
ゆえに、接見を制限することはできても、接見を禁止することはできません。

以前は、この接見指定が多く活用され、弁護人等であっても接見の時間は15分まで、といった厳しい時間的制約があったようです。
しかし、この接見指定について争った裁判で、最高裁は

・原則としていつでも接見の機会を与えなければならない
・「取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合」にのみ制限できる
・その場合、弁護人と協議してできる限り速やかな接見のための日時等を指定することで、被疑者が弁護人と防禦の準備をすることができるような措置を取る必要がある

としています。(最判平3・5・10ほか)

現在では、弁護人が接見を制限される場合としては、別の弁護士接見が行われていて接見室が空いていない場合や、検察庁・裁判所での接見の場合など、それほど多くありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所では、弁護活動の最中に接見交通権が侵害された場合、捜査機関に対し抗議をするなど毅然とした態度で対応します。
それだけ、刑事弁護において接見交通権は重要な権利と言えます。
北海道岩見沢市にて、恐喝事件で家族が逮捕された場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の弁護士による初回接見サービス(有料)をご利用ください。

強盗をして逮捕された

2023-06-24

強盗をして逮捕された

強盗罪を犯してしまったら,逮捕・勾留され,実刑で長期間刑務所に入る可能性があります。
被害者への示談活動や,事実を争うのであればきちんと裁判の準備をしなければなりません。
今回は,強盗罪について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。

【強盗罪の成立要件】

(強盗)
第236条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は,強盗の罪とし,五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者も,同項と同様とする。

本条は,財産的法益だけでなく人格的法益も保護法益としております。
財物に対する占有を奪取する犯罪である点で窃盗罪と共通しますが,暴行・脅迫を財物奪取の手段とする点でより重く処罰するものです。

暴行は,身体に向けられた不法な有形力の行使をいいます。
脅迫は,害悪の告知をいいます。
財物奪取の目的遂行の障害となり得る者に対して加えられれば足り,必ずしも財物を所持する者に加えられる必要はありません。

暴行・脅迫の程度としては,被害者の反抗を抑圧するに足りるものであることを要します。
被害者に加えられた暴行・脅迫の程度の判断は,社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものかどうかという客観的基準によって決められます。
客観的に反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫が加えられた以上,現実に被害者の反抗が抑圧されなかったとしても,強盗罪における暴行・脅迫となります。
暴行・脅迫の程度の判断は,暴行・脅迫の態様だけではなく,犯行場所・犯行時刻・周囲の状況・相手方の性別・年齢・体格等も考慮して具体的に判断されることになります。

強取とは,相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を手段として,財物の事実上の占有を自己又は第三者に取得させることをいいます。
行為者が相手方から財物を奪取する場合はもちろん,相手方が交付した財物を受領することも,それが相手方の自由意思に基づくものでない限り,強取に当たります。
暴行・脅迫により反抗を抑圧された被害者が気付かないうちに財物を奪取した場合,反抗を抑圧された被害者が財物を放置して逃げた後にこれを取得した場合も,強取に当たります。
反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を加えて財物を取得した場合には,仮に相手方に恐怖心を抱かせたものの反抗を抑圧するに至らなかったとしても,強盗(既遂)罪が成立します。
被害者が専ら犯人を憐れんで財物を交付した場合には,意思に反する財物の交付があったとはいえず,暴行・脅迫が手段となっているともいい難いので,強取に当たらず,強盗未遂罪となります。
暴行・脅迫を加えて財物を奪取する意思で,まず財物を奪取した後に被害者に暴行・脅迫を加えた場合も,強取に当たります。

本罪は故意犯であり,暴行・脅迫を加えて相手方の反抗を抑圧し,その財物を奪取することの認識を有することが必要です。
故意に加えて,不法領得の意思が必要です。
不法領得の意思は,権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいいます。

本条第2項の強盗利得罪は,財産上不法の利益を得るとは,不法に財産上の利益を得ることをいいます。
財産上の利益とは,本条第1項の財物以外のすべての財産上の利益を指し,積極的財産の増加であると,消極的財産の減少であるとを問いません。
債務の免除・履行期の延期・債務負担の約束・財産的価値のある役務(輸送サービス等)の提供等は,いずれも財産上の利益に当たります。
必ずしも相手方による処分行為を必要とするものではなく,反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を加えた結果,相手方が事実上償務の弁済請求ができない状態に陥った等の場合には,強盗利得罪が成立します。

実行の着手は,財物奪取の目的で相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を加えた時点で認められます。
財物奪取の意図なく暴行・脅迫を加え,相手方の反抗抑圧状態に乗じて財物を奪取する場合には,財物奪取に着手した時点で強盗罪の実行の着手が認められます。

既遂は財物の取得の時期を基準とし,暴行・脅迫により財物に対する被害者の占有を排し,これを自己又は第三者の実力支配下に置いた時に,既遂となります。

相手方の反抗を抑圧するに足りない程度の暴行・脅迫により,瑕疵があるものの一応相手方の意思に基づく占有の移転があれば,恐喝罪となります。

【窃盗の後の行為により成立する事後強盗罪】

(事後強盗)
第238条 窃盗が,財物を得てこれを取り返されることを防ぎ,逮捕を免れ,又は罪跡を隠滅するために,暴行又は脅迫をしたときは,強盗として論ずる。

事後強盗罪は,窃盗犯人が財物を取得した後に人に発見されてこれを取り返されるのを防ぐ目的で暴行・脅迫を加えた場合,あるいは財物取得の有無を問わず,逮捕を免れ又は罪跡を隠滅する目的で暴行・脅迫を加える場合に成立します。
居直り強盗と同様にその犯行形態の実質的違法性やしばしば相手の殺傷という重大な結果を伴う点で,その処分について強盗と同様に取り扱うこととしたものです。
本罪は昏酔強盗とともに準強盗と呼ばれております。

本罪は窃盗犯人を主体とする犯罪です。
窃盗犯人とは,窃盗の実行に着手した者をいい,財物を取り返されることを防ぐ目的の場合は窃盗が既遂となっていることが前提となりますが,それ以外の目的の場合は未遂・既遂を問わないことになります。

本罪が成立するためには,財物を取り返されることを防ぐ目的・逮捕を免れる目的・罪跡を隠滅する目的のうち,少なくともいずれか1個の目的で相手に暴行・脅迫を加えることが必要です。
犯人にこのような目的があれば足り,相手が現実に財物を取り返そうとしたり犯人を逮捕しようとしていたか否かは問いません。

財物を得てこれを取り返されることを防ぐ目的は,暴行・脅迫によることなく財物を自己の事実上の占有下に置いた後,被害者側からその財物を取り返されるのを防ぐ目的をいいます。

逮捕を免れる目的は,窃盗未遂又は既遂の犯人が,被害者や警察官等から取り押さえられて身柄を拘束されるのを防ぐ目的をいいます。
現に相手が逮捕しようとする必要はなく,自己が逮捕される事態を回避するために暴行・脅迫を加えた場合も,本罪が成立します。

罪跡を隠滅する目的は,後日窃盗犯人として検挙され,処罰されることになると認められる罪跡を隠滅しようとする意図をいいます。

事後強盗罪も強盗として論じられる以上,暴行・脅迫の程度も,強盗罪の場合と同様に相手の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要します。
強盗罪の場合と同様に,暴行・脅迫の態様のほか,犯行場所,犯行時刻,周囲の状況,相手方の性別・年齢・体格等を考慮し,当該暴行・脅迫が,相手方の財物の取返しや窃盗犯人の逮捕等の意思を制圧するに足りる程度のものであるかを客観的に判断することになります。
暴行・脅迫の相手方は,窃盗の被害者だけではなく,財物を取り返そうとする者・窃盗犯人を逮捕しようとする者など,本条所定の各目的を遂げるのに障害となる者であれば足ります。

事後強盗罪が成立するためには,財物取得の場面と暴行・脅迫の場面との間の場所的・時間的関係や,状況としての繋がりなどを総合して,当該暴行・脅迫が財物の取得と密接な関連性を有すると認められる状況の下に行われることが必要です。

本罪の実行の着手は,窃盗犯人が,本条所定の目的で相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫に着手した時点で認められます。
事後強盗強盗として論じられる以上,その既遂・未遂の基準も強盗罪と同様に財物取得の有無,窃盗の既遂・未遂により決せられます。

【被害者を眠らせたり気絶させたりして財産を奪う昏睡強盗罪】

(昏酔強盗)
第239条 人を昏酔させてその財物を盗取した者は,強盗として論ずる。

相手方を昏酔させてその反抗を抑圧し,財物を盗取する行為は,暴行・脅迫を手段としなくてもその実質的違法性の程度は強盗罪と同程度であり,強盗として取り扱われることになります。
本罪は事後強盗とともに準強盗と呼ばれます。

昏酔させるとは,一時的又は継続的に,相手方に意識喪失その他意識又は運動機能の障害を生じさせて,財物に対する有効な支配を及ぼし得ない状態に陥らせることをいいます。
失神させたり,眠らせたり,麻痺させたりすることをいいます。
方法は,薬物や麻酔薬の使用等が考えらます。
相手を昏酔させる行為は,財物盗取の目的でされなければなりません。

盗取とは,相手方が昏酔状態にあり,財物奪取を阻止し得ない状態にあることに乗じて,財物を奪取して財物を自己の事実的支配の下に置くことをいいます。

実行の着手は,財物盗取の目的で相手方を昏酔させる行為に着手した時に認められます。
既遂時期は,他人の占有を排除し,財物を自己の事実的支配の下に置いた時となります。

【強盗に関する特別法】

他に特別罪として,以下のものがあります。

盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律
第2条 常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第二百三十五条,第二百三十六条,第二百三十八条若ハ第二百三十九条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ竊盗ヲ以テ論ズベキトキハ三年以上,強盗ヲ以テ論ズベキトキハ七年以上ノ有期懲役ニ処ス
一 兇器ヲ携帯シテ犯シタルトキ
二 二人以上現場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ
三 門戸牆壁等ヲ踰越損壊シ又ハ鎖鑰ヲ開キ人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
四 夜間人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
第3条 常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三回以上六月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル
第4条 常習トシテ刑法第二百四十条ノ罪(人ヲ傷シタルトキニ限ル)又ハ第二百四十一条第一項ノ罪ヲ犯シタル者ハ無期又ハ十年以上ノ懲役ニ処ス

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は,刑事を専門とする弁護士が迅速に対応いたしますので,お気軽にお電話ください。
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公務執行妨害罪で逮捕された

2023-06-03

公務執行妨害罪で逮捕された

公務員に対して暴行や脅迫をして,逮捕されることがあります。
今回は,公務執行妨害罪・職務強要罪について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。

公務執行妨害罪とは

(公務執行妨害)
第95条 公務員が職務を執行するに当たり,これに対して暴行又は脅迫を加えた者は,三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

本罪は,公務員によって行われる国又は地方公共団体の作用である公務を保護法益とします。
公務員に向けられた行為を対象としますが,直接に公務員の地位自体を保護するものではありません。
適法な公務の遂行に限って保護されると解されます。
公務の円滑な遂行と国民の利益・人権との間で利害が対立することがあり,特に公務の適法性を判断するに当たっては,両者の利益のバランスをどう取っていくのかということが判断されます。

本罪の客体は「公務員」です。
公務員でない非公務員も,公務員の補助者としてその公務の補助をした場合で,非公務員に対し加えられた暴行・脅迫が当該公務員に向けられたものであると解されるときは,本罪が成立することがあります。

「職務」は,広く公務員が取り扱う事務の全てを含みます。
官庁における公務員のデスクワーク,国公立大学の入試事務や講義,国公立病院の業務等も,本罪によって保護されます。

公務の適法性

公務員の職務は適法でなければなりません。
公務員の違法な行為まで本罪による保護を与えるべきではないからです。
しかし,ここでの適法性は,あくまでも刑法上の適法性であり,当該職務執行の根拠法令上の適法性とは別個に判断されます。
要件としては,①当該公務員の抽象的・一般的職務権限に属するものであること,②当該公務員がその職務を行う具体的職務権限を有すること,③職務行為の有効要件である法律上の重要な条件・方式を履践していること,が必要となります。
①の抽象的職務権限は,必ずしも法令で具体的に規定されたものであることを要しません。
③の要件が,最も実質的で重要な要件となります。
公務員の職務行為には,その有効要件として法律上一定の方式が要求されることが多く,こうした方式を履践しない行為は当該法令では不適法ということになります。
しかし,刑法上も全てその保護に値しないというわけではなく,わずかな方式違反に過ぎない場合や訓示規定に違反する場合などは,直ちに職務執行の適法性を失わせるものではありません。
職務の適法性は,暴行・脅迫から保護するに値する公務という実質的基準で判断されます。
判断基準としては,裁判所が法令を解釈して客観的に決めることになります。
判断の基準時は,当該職務執行時の状況を基礎に判断されます。
なお,公務員の職務執行が適法でないため本罪が成立しないときでも,暴行罪・脅迫罪は成立し得ることになりますが,そのような場合には正当防衛の成否が問題になることが考えられます。

「執行するに当たり」とは,現に職務を執行中である場合というよりは広く,職務を執行するに際しての意味となります。
具体的・個別的に特定された職務の執行を開始してからこれを終了するまでの時間的範囲だけでなく,当該職務の執行と時間的に接着してこれと一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為に限って,公務執行妨害罪による保護の対象となります。

公務執行妨害罪における妨害の方法

「暴行」は,暴行罪とは異なり,公務員に向けられた有形力の行使であれば認められます。
公務員の身体に対して直接向けられる必要はなく,その補助者や物に対して加えられることによって,間接的に当該公務員に物理的・心理的に影響を与えるような間接暴行でも認められます。
暴行の程度は,公務員の職務の執行を妨害するに足るものでなければなりません。

「脅迫」は,人を畏怖させるに足る害悪の告知の全てを含みます。
直接公務員に対するものに限らず,公務員の補助者に対するものでも認められます。
現に相手を畏怖させたことは必要ではありません。
脅迫の程度は暴行と同じく,公務員の職務の執行を妨害するに足るものでなければなりません。

本罪は,暴行・脅迫が加えられることによって,直ちに既遂に達します。
現実に職務執行が妨げられたことは必要ではありません。
この意味で,本罪は危険犯です。

公務執行妨害罪での故意

故意として,公務員が職務執行中であることと,これに対して暴行・脅迫を加えることの認識が必要です。
公務の執行を妨害する目的は必要ではありません。
公務員の職務行為が客観的には適法であるのに,違法であると誤信して暴行・脅迫を加えた場合が問題となります。
違法と思うだけの特殊な事情の認識があった場合は,故意が阻却されます。
その特殊な事情が,例えば軽微な瑕疵を過度に重大視して適法性を欠くと誤信したといった場合は,故意は阻却されません。
単に自分なりの解釈・評価によるだけの場合は,故意は阻却されません。

(職務強要)
第95条 2 公務員に,ある処分をさせ,若しくはさせないため,又はその職を辞させるために,暴行又は脅迫を加えた者も,前項と同様とする。

「処分」は,広く公務員が職務上なし得べき行為をいいます。
それにより一定の法律上の効果を生じさせるようなものであることは必要でありません。
本罪は公務員の正当な職務執行を保護するばかりでなく,広くその職務上の地位の安全をも保護しようとするものであります。
当該公務員の職務に関係ある処分であれば足り,その職務権限内の処分であるとその職務権限外の処分であるとを問いません。

適法な処分をさせるためであっても,作為を強要すること自体非難に値することなので,本罪が成立します。
違法・不当な処分をさせないための場合は,行為時に処分の重大な違法性が明白な場合まで保護するには及ばないから,これを阻止する場合は本罪に該当しません。
それ以外の場合には,たとえ不当な処分であってもそれを阻止するために暴行・脅迫を加えれば,本罪を構成します。

「職を辞させる」は,公務の執行を妨害する手段として辞職させようとする場合の他,公務の執行とは無関係に単なる個人的事情から辞職させようとする場合も含みます。
この目的の場合を特に辞職強要罪ということもあります。

目的が達せられることを要せず,所定の目的をもって暴行・脅迫を加えれば,直ちに既遂に達します。

公務執行妨害罪での流れ

公務執行妨害罪・職務強要罪で逮捕されたら,逮捕・勾留合わせて最長23日間,警察署の留置場などで身体拘束される可能性があります。
家族等と連絡を取ることは制限され,連日捜査機関による取調べを受けるため,被る精神的苦痛は非常に大きなものとなります。
特に警察官への公務執行妨害罪であれば,捜査機関は厳しい対応をしてくる可能性が高いです。
当然,会社や学校に行くことはできません。
逮捕されたことが会社や学校に知られてしまう可能性も高まります。
逮捕されることで,報道される可能性が高まります。

検察官や裁判所に釈放を求めていくことになりますが,釈放が認められるハードルは高く,簡単には認められません。
刑事に強い弁護士に依頼した方が,釈放は認められやすくなります。
証拠隠滅と逃亡のおそれがあるかが判断されることになります。
被害者に対して不当な働きかけが行われる可能性があると評価されることが多いです。
そこで,そのような可能性はないことを具体的に説得的に示していくことが必要です。

起訴後は保釈を求めていくことになります。
保釈とは,起訴された後,一定額の金銭を支払うこと等を条件に釈放される制度をいいます。
保釈金の額は,裁判所が,犯罪の軽重や情状,被告人の経済状態,生活環境などの一切の事情を考慮して,その事件で被告人の逃亡を防ぐためにはどのくらいの金額を納めさせるのが適当かを判断した上で決定します。
保釈金の相場は,一般的に200万円前後となることが多いですが,事件によっては500万円を超える場合もあります。
保釈を取り消されて保釈金が没収されることがなければ,裁判が終わった後に裁判の結果が無罪でも有罪でも保釈金は返還されます。
しかし,保釈中に問題を起こしたら,再び身体が拘束され,預けた保釈金は没収される可能性があります。
保釈支援協会で保釈金を貸してくれることもあります。

暴行・脅迫をしていないにもかかわらず,相手が警察に被害を訴えて,警察が捜査や逮捕をしてくることがあります。
密室の取調室で,「被害者がこう言っている」「証拠はもうそろっている」などと言われ,警察の言われるままに話を持っていかれ,不当な内容の供述調書が作成されてしまいます。
刑事に詳しい弁護士のきちんとしたサポートが必要になってきます。
取調べでどのようなことを言うか,弁護士と相談しながら進めていきます。
警察の威圧的な取調べが行われていたら,弁護士が抗議をしたり,黙秘を指示したりして,きちんと対応しなければなりません。
こちらに有利な証拠がないか,検討することにもなります。
起訴されて裁判となったら,きちんとこちらの主張をしていかなければなりません。

刑事事件ではスピードが大切です。
すぐに弁護士に連絡し,相談しましょう。
逮捕後最大72時間は,たとえ家族の方でも逮捕された人との接見ができませんが,弁護士が代わりに連絡を取ってくれます。
逮捕直後に不当な取調べが行われ,不利な内容の調書が作成されてしまうかもしれません。
早く弁護士が接見し,取調べへの対応方法に関してきちんとしたアドバイスをする必要があります。

事務所紹介

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事を専門とする弁護士が迅速に対応いたしますので,お気軽にお電話ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部では,公務執行妨害罪などの刑事事件に関するご相談を初回無料で承っております。
無料法律相談のご予約は
フリーダイヤル0120-631-881(24時間受付中)
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暴力事件を起こした

2023-05-24

暴力事件を起こした

暴力事件を起こしてしまったら,逮捕・勾留される可能性があります。
早期に弁護士を通じて釈放を求めて,被害者と示談交渉をする必要があります。
事実関係について争いがあれば,取調べ対応を慎重にして,裁判に備える必要があります。
今回は,主な暴力犯罪について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。

・暴力の結果被害者が怪我をしなかった暴行事件

(暴行)
第208条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは,二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

暴行は,人の身体に対する不法な有形力の行使をいいます。
典型的なものとしては,殴る,蹴る,突く,押す,投げ飛ばす,等の人の身体への接触を伴う物理力を行使する行為があります。
傷害の結果を生じさせる程度のものでなくても認められます。
人の身体に向けられたものであれば足り,必ずしもそれが人の身体に直接接触することを要しません。
しかし,少なくとも,相手の五官に直接間接に作用して不快・苦痛を与える性質のものであることが必要です。
物理力・力学的作用や,音響・光・電気・熱等のエネルギーの作用を人に及ぼすことも含まれます。
暴行の故意として,人の身体に対し有形力を行使することの認識が必要です。
不法性は,行為の目的,行為当時の状況,行為の態様,被害者に与えられた苦痛の有無・程度等を総合して判断されます。

・暴力の結果被害者が怪我をした傷害事件

(傷害)
第204条 人の身体を傷害した者は,十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

人は犯人以外の自然人をいい,自分自身を傷つける行為は犯罪とはなりません。
身体は,肉体と精神的機能の双方を含みます。
傷害は,人の生理機能に障害を与えたり,人の健康状態を不良に変更することをいいます。
傷害行為の態様としては,人の身体に対する不法な有形力の行使である暴行だけでなく,無形的方法や不作為による傷害も認められます。
故意については,暴行の故意だけで足りますが,暴行を手段としていない場合は傷害の故意が必要です。

・暴力の結果被害者が死亡してしまった事件

(傷害致死)
第205条 身体を傷害し,よって人を死亡させた者は,三年以上の有期懲役に処する。

傷害により人を死亡させたが,死亡結果について認識を欠いている場合に成立します。
死亡結果について認識がある場合は殺人罪が成立します。
裁判では,殺人罪か傷害致死罪か,死亡結果について認識していたか,が激しく争われる場合があります。
傷害と死の結果との間に因果関係が存在することを要します。
この因果関係についても裁判で激しく争われる場合があります。

・暴力の場にいて直接関与しなかった場合

(現場助勢)
第206条 前二条の犯罪が行われるに当たり,現場において勢いを助けた者は,自ら人を傷害しなくても,一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

本罪は,傷害罪・傷害致死罪の犯罪が行われている現場での助勢行為を処罰するものです。
傷害の幇助行為に類してはいるが,それに当たらない現場でのせん動的行為を,それ自体のもつ独自の危険性に鑑みて規定されています。
現場におけるせん動的行為が,喧嘩の規模・程度を拡大し,本来ならば生じないような傷害や傷害致死の結果を発生させる危険があるため,それを防止する目的があります。
広い意味では幇助の一態様でありますが,群集心理を考慮して特に軽く処罰することとしたものです。
暴行が行われているといえる段階であることが必要であり,その開始前や終了後はこれに当たりません。
暴行の段階で助勢したが傷害の結果が生じなかったときは,本罪は成立しません。
勢いを助けた,とはせん動的行為をいい,「やれ,やれ」「やってしまえ」というようなはやしたてる行為等をいいます。
行為者をはやしたて,その気勢を高めるものであれば足り,言語によると動作によるとを問いません。
その助勢行為により実行行為者の実行を容易にしたことも要しません。

・2人以上が同時に暴力を振るって被害者が怪我した場合

(同時傷害の特例)
第207条 二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において,それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず,又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは,共同して実行した者でなくても,共犯の例による。

本条は,同時犯としての暴行によって同一人を傷害した場合についての処罰の特例を定めたものです。
本条の法律的性格については,犯人の側に挙証責任を転換するとともに,意思の連絡について一種の法律上の擬制を用いて共犯の範囲を拡張する旨の規定です。
同時犯としての暴行においては,行為者間に意思の連絡がないために,相手方に傷害が生じても傷害の共同正犯は成立しません。
行為者各自の行為によって傷害が生じたのかどうか不明のときには,各行為者は,刑法における個人責任の原則に基づいて,各々暴行罪の限度において処罰されるに過ぎません。
しかし,これでは処罰として軽きに失するだけでなく,一般に行為者間の意思の連絡や行為者と傷害の結果との結びつきなどを立証することが困難な場合が少なくありません。
特に本条を設けて,本来同時犯であるものを共犯の例による旨規定し,傷害罪の共同正犯として処断する旨の特例を定め,立証の困難の救済を図ることになりました。
各行為者は,自己の関与した暴行がその傷害を生じさせていないことを立証しない限り,傷害についての責任を免れません。
2人以上の者が同一の被害者に傷害を負わせたが誰がどの程度の傷害を負わせたのか判明しなかったり,2人以上の者が同一の被害者に傷害を負わせたがそれが誰の暴行によるものであるか判明しない場合をいいます。
共犯の例によるとは,共同正犯として処断するという趣旨です。

・怪我等をさせる目的で凶器を準備したり集まったりする行為

(凶器準備集合及び結集)
第208条の2 二人以上の者が他人の生命,身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において,凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は,二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 前項の場合において,凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は,三年以下の懲役に処する。

本条は,暴力団犯罪対策の一環として,凶器準備集合罪(1項)と凶器準備結集罪(2項) からなっております。
暴力団の勢力争いに起因して,いわゆる殴り込みのため相当数の者が凶器を準備して集合し,社会に著しい不安を抱かせるような事件が続発するなど,治安上憂慮すべき事態が生じたことがありました。
このような事態を規制し,後に予想される殺傷事件を未然に防止するために設けられたものです。
構成要件的状況として,2人以上の者が他人の生命・身体・財産に対して共同して害を加える目的で集合することが必要です。
この目的は,必ずしも殴り込みをかけるような積極的・能動的な目的である必要はなく,相手方が攻撃してきた際にはこれを迎撃し,相手方を殺傷しようという消極的・受動的な目的であっても認められます。
このような迎撃形態の本罪が成立するためには,相手方からの襲撃の蓋然性・切迫性が客観的状況として存在する必要はなく,行為者においても相手方からの襲撃の蓋然性・切迫性を認識している必要はありません。
相手方からの襲撃のあり得ることを予想し,襲撃があった際にはこれを迎撃して,他人の生命・身体・財産に対し共同して害を加える意思があれば足ります。
相手方の行為その他の事情を条件とし,条件成就のときは加害行為に出るという条件付きのものであっても認められます。
共同加害目的は,広く共同正犯の形態によって加害行為をなす目的があれば足り,必ずしも自らが現場において加害行為を共同して実行する意思まで必要とするものではありません。
本罪は公共危険犯的性格を有することから,加害の対象・内容が具体的に特定されていることは要しません。
準備は,必要に応じていつでも加害行為に使用し得る状態に置くことをいいます。
必ずしも準備の場所と集合の場所が同一である必要はありませんが,凶器の準備された場所が加害行為に使用するのに不可能又は著しく困難な場所であるときは,準備したとはいえません。
また,凶器の準備が集合前又は集合と同時になされていることまで必要ではなく,集合した後に凶器が準備された場合にも,本罪は成立し得ます。
集合は,2人以上の者が共同の行為をする目的で,一定の時刻と一定の場所を同じくすることをいいます。
2人以上の者が,互いに相手が自己と共同行為をする目的のもとに時・場所を同じくしていることを認識し,なお相手方においても自己について同様に認識しているであろうことを併せて認識していることが必要です。
集合ということは,必ずしも場所的に移動して新しく時と場所を同じくする場合だけでなく,既に時と場所を同じくする2人以上の者が共同加害の目的を有するようになり,それによって社会的に1つの集合体と認められるに至った場合も集合となります。

北海道で暴力事件を起こし,相談・依頼したいという方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部の弁護士による無料面談有料の初回接見サービスをご利用ください。
逮捕された場合は,接見して状況を確認した後,説明させていただいた後に,正式契約となったら事件を対応させていただきます。
迅速な対応が必要となりますので,お早めにご相談ください。

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