痴漢のはずが強制わいせつに?

痴漢のはずが強制わいせつに?

痴漢と呼ばれる行為と、それが強制わいせつ罪として評価される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説致します。
【ケース】
北海道札幌市豊平区在住のAは、札幌市豊平区内の会社に勤める会社員です。
Aは通勤時に公共交通機関を使用します。
事件当日も、いつものとおり列車に乗ってつり革を掴んで立っていたところ、すぐ隣にスカートを履いた女性Vが立っていました。
AはVに対して劣情を催し、はじめはスカートの上から臀部(お尻)を撫でる痴漢行為をしていましたが、次第にAの行為はエスカレートし、Vのスカート内に手を入れ、下着の上からVの陰部を撫でまわし、それでもVが抵抗しなかったことから下着の中に指を入れました。
そこでVは「いい加減にしろよ」とAを怒鳴りつけ、近くにいた通勤客XがAの行為に気が付きAを車内で組み倒しました。
Aは次の駅で降ろされ、駅員の通報によりかけつけた札幌市豊平区内を管轄する豊平警察署員に引き渡されました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【痴漢ではなく強制わいせつにあたることが…】

・痴漢と強制わいせつの罪
痴漢をした場合に成立する犯罪として、まずは各都道府県が定める迷惑行為防止条例違反が挙げられます。
ケースの場合は北海道札幌市豊平区を想定していますので、北海道迷惑行為防止条例が問題となります。
もっとも、その態様によっては、いわゆる痴漢(迷惑防止条例違反)ではなく強制わいせつ罪に問われる可能性もあります。
両者の条文は以下のとおりです。

痴漢行為)
北海道迷惑行為防止条例2条の2 何人も、正当な理由がないのに、次に掲げる行為をしてはならない。
1項 公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し、著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をすること。
ア 衣服等の上から、又は直接身体に触れること
罰条:6月以下の懲役又は50万円以下の罰金

強制わいせつ
刑法176条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も同様とする。

・痴漢と強制わいせつの区別
強制わいせつ罪の条文では、「暴行又は脅迫を用いて」という要件があります。
ケースについてみると、Aは見知らぬ相手であるVに対し、脅迫などはしておらず、直接的な暴行なども行っていません。
しかし、この強制わいせつ罪の言う「暴行・脅迫の程度」は、被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度でよいとされています。
公共交通機関であり多数の乗客が乗っている車両に於て、下着の中に手を入れ陰部を指で弄ばれた場合、女性は恐怖を感じ、逃げることや悲鳴を上げることが極めて困難であると考えられることから、暴行・脅迫が認められ、Aの行為は強制わいせつ罪にあたる可能性が高いと考えられます。

【現行犯逮捕について】

事件を起こしたとされる被疑者に対し、捜査機関は必要に応じて逮捕を行います。
逮捕は私人の権利を侵害する行為ですので、令状主義といって、原則として裁判所が発布した令状に従って逮捕するということになります(通常逮捕)。

一方で、ケースのように事件を起こした直後に逮捕される場合を現行犯逮捕と呼びます。
これは令状主義の例外規定ではありますが憲法もこれを認めていて、実務では全逮捕者のうち約40%が現行犯逮捕によるものとされています。
現行犯逮捕の場合は司法警察職員だけでなく私人にも行うことができますが、私人逮捕をした場合は直ちに司法検察職員に引き渡さなければならないと定められています。
現行犯逮捕については、逮捕時には令状は必要ありませんが、逮捕後に「現行犯人逮捕手続書」という書類を作成します。
また、逮捕されてから48時間以内に検察官に送致する必要があり、検察官は逮捕から72時間以内に勾留請求を行わなければ被疑者を釈放しなければなりません

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所の弁護士は、これまで数多くの性犯罪について弁護活動を行ってまいりました。
北海道札幌市豊平区にて、御家族がいわゆる痴漢行為や、それがエスカレートした場合などにあたる強制わいせつなどの罪で現行犯逮捕されてしまった場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部に御連絡ください。

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