覚醒剤使用に用いる注射器を破壊し、公務執行妨害の疑いで逮捕

今回は、薬物使用を疑われた被疑者が、覚醒剤の使用に用いていた注射器を踏みつけて破壊し、公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕されてしまった場合の刑事手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。

~ケース~

札幌市中央区の歩道を歩いていたAさんは、警察官から薬物の使用を疑われ、職務質問を受けました。
警察官がしきりに持っているバッグの中身を見せるよう要求するので、Aさんは自ら覚醒剤の使用に用いていた注射器を取り出し、これを力いっぱいに足で踏みつけて粉々に破壊してしまいました。
Aさんは、注射器を足で踏みつけて破壊し、警察官らの公務の執行を妨害した疑いで、札幌方面中央警察署現行犯逮捕されてしまいました。(フィクションです)

~公務執行妨害罪について解説~

公務執行妨害罪とは、「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加える行為」(刑法第95条1項)、及び、「公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加える行為」(刑法第95条2項)をいいます。
実際に公務員の職務執行が妨害されたことは必要ではありません。

(「暴行」について)
公務執行妨害罪の「暴行」は、暴行罪における「暴行」と異なり、公務員の身体に直接向けられる必要はなく、その補助者や物に対して加えられることによって、間接的に公務員に物理的・心理的な影響を与えるようなものも含みます。

判例で認められたものとして、
・「税務署員が差し押さえた密造酒入りの瓶を割って内容物を流出させる行為」(最高裁昭和33年10月14日判決)
・「逮捕現場で警察官が押収した覚醒剤注射液入りアンプルを足で踏みつけて破壊する行為」(最高裁昭和34年8月27日決定)
などが公務執行妨害罪の「暴行」として認められています。

これによれば、Aさんが警察官を直接殴打するなどしたわけではなくても、覚醒剤の使用に用いていた注射器を力いっぱい踏みつけて破壊する行為も「暴行」に該当する可能性があります。
もっとも、Aさんは注射器を押収される前に自分のバッグから取り出すやそのまま破壊したので、押収されて警察官の下にあった物を破壊した判例とは異なり、「暴行」には当たらないと判断される可能性もあります。

~今後の捜査~

公務執行妨害罪の疑いで逮捕され、Aさんのバッグから覚醒剤などの違法薬物が発見されれば、覚醒剤所持の嫌疑もかかります。
また、所持していた覚醒剤を使用しているのではないかとの嫌疑もかかるでしょう。
Aさんに尿検査がなされ、覚醒剤の使用を示す反応が検出されれば、覚醒剤使用の件でも捜査を受けることになるでしょう。

(逮捕が繰り返される場合もある)
逮捕・勾留されると、捜査段階において最長23日間の身体拘束を受けることになります。
Aさんは公務執行妨害罪の疑いで逮捕されていますが、この勾留期間が満期を迎え釈放された直後、あらためて覚醒剤所持罪等の疑いで逮捕されてしまう場合もあります。
このような場合、捜査段階において身体拘束を受ける期間が非常に長くなってしまい、Aさんの心身に大きな負担を与えることになります。
早急に弁護士を依頼し、公務執行妨害罪の捜査とあわせて覚醒剤所持罪等の捜査を行うよう働きかけ、身体拘束を受ける期間が不当に長くならないよう取り計らう必要があるでしょう。

~適切な主張・保釈の実現・執行猶予付き判決の獲得を目指す~

逮捕・勾留されたからといって当然に犯罪が成立するわけではありません。
犯罪の成否に疑いがあればその旨主張し、無罪を目指す必要があります。

さらに、尿検査などの捜査が適法に行われたかを検討し、違法な捜査があればその捜査により得られた証拠は裁判の証拠として排除するよう主張する必要があります。

また、薬物犯罪の捜査は長引きがちですが、起訴後、保釈を実現できる可能性があります。
保釈を実現することにより身体拘束から解放されることはもちろん、再犯防止に努めていることをアピールするために、薬物依存の治療プログラムを開始することができるようになります。

また、Aさんが初犯であれば執行猶予付き判決を獲得できる可能性もあります。
言い渡された懲役刑の刑期が6か月であっても、3年であっても、執行猶予がつかなければ刑務所に行かなくてはなりません。
弁護士に依頼し、裁判官に対して再犯防止に努めていることを説得的に訴えかけ、執行猶予付き判決の獲得を目指しましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が公務執行妨害罪の疑いで逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご相談ください。

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