強盗による死亡事件で裁判員裁判に
強盗が被害者を殺害してしまった場合の罪と、裁判員裁判制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。
【ケース】
北海道札幌市東区在住のAは、札幌市東区でアルバイトをしながら生活をしています。
しかし、昨今の情勢からアルバイト先が休業においやられ、A自身の収入が途絶えてしまいました。
生活に困ったAは窃盗をしようと考え、留守中のV宅に忍び込んで金品を探していました。
しかし、その間にVが自宅に帰ってきて窃盗をしていたAに気付き、通報しようとしました。
Aは通報されてはいけないと思い、近くにあったゴルフクラブでVの頭部を3発殴ったところ、Vは死亡してしまったという居直り強盗事件です。
札幌方面東警察署の警察官は、捜査の結果Aによる強盗事件であるとして、Aを強盗殺人の嫌疑で逮捕しました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【強盗が被害者を死亡させてしまった】
強盗が被害者を死傷させてしまったという痛ましい事件について、実はいくつかのパターンがあり、それぞれで罪が異なります。
以下で、それを検討していきます。
①予定して被害者を死傷させ、金品を奪った
予め準備をしたうえで被害者宅などに行き、被害者を死亡させたり怪我させたりしたうえで通報させないようにして、金品を奪っていった場合には、強盗殺人・強盗傷害罪が成立します。
強盗殺人罪の条文は以下のとおりです。
刑法240条 強盗が、人を負傷させたときは無期または六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
つまり、
被害者に怪我をさせて金品を奪った強盗傷害事件:「6年以上の懲役」又は「無期懲役」
被害者を死亡させて金品を奪った強盗殺人事件:「無期懲役」又は「死刑」
となります。
②予定外に被害者が帰宅したため、口封じのため死傷させた
ケースはこの場合を想定しています。
空き巣などのために家に入ったものの、犯行中に被害者が自宅に帰ってきた場合などで、とっさに相手に暴行を加えた結果、これは居直り強盗と呼ばれるものです。
居直り強盗は、「事後強盗」と呼ばれる罪にあたります。
条文は以下のとおりです。
刑法238条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕をまぬかれ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
罰条は、「強盗として論ずる」と定められていますので、①と同様です。
ケースの場合はVが死亡しているため、事後強盗致死罪が成立し、死刑又は無期懲役刑に処されることになります。
③被害者を死亡させたのち、落ちていた金品を拾った
強盗の目的ではなく、遺恨がある相手などを殺害したのち、そばにあった金品や落とした財布などを見て持ち帰る意思が生じ、それらを持ち去った場合、これは①②とは異なります。
予めお金を盗る目的で入った①②とは異なり、もともとはお金を盗る意思がなく、相手が死亡したのちにこの金品を盗んでやろうと考えているため、強盗の故意がないため、強盗殺人罪や事後強盗致死罪は成立しません。
これについて、判例は、このような事件について、死亡した直後であっても占有が継続しているという立場をとり、殺人罪と窃盗罪が成立するとしています。
なお、学説には判例同様に殺人罪と窃盗罪を認める説のほかに、強盗殺人を認める説、殺人罪と占有離脱物横領罪を認める説があります。
【裁判員裁判制度について】
裁判員裁判とは、職業裁判官(司法試験に合格して裁判官に任命された者)3名のほかに、選挙権を有する18歳以上の一般人から無作為に選出される裁判員6名が合議体を組み、被告人の有罪/無罪と有罪の場合の刑罰を決めるというものです。
裁判員裁判対象事件は
⑴死刑又は向きの懲役若しくは禁錮にあたる罪に係る事件
⑵裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であつて、故意の犯罪により被害者を死亡させた罪に係るもの
とされています。(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項各号)
強盗殺人罪の場合も殺人罪(+窃盗罪)の場合も、刑罰に死刑又は無期懲役刑が用意されているため、⑴にも⑵あたり、裁判員裁判の対象事件となります。
裁判員裁判は、一般の裁判員が加わるため、弁護側も検察官側もフローチャートを用いたり量刑資料(これまでの裁判ではこのような刑罰が言い渡されている、といった資料)を提示したりと、通常の刑事裁判に比べて準備が必要です。
よって、裁判員裁判の対象事件で起訴される可能性がある方、起訴された方は、裁判員裁判の経験がある刑事事件専門の弁護士に依頼をすることが望ましいと言えます。
北海道札幌市東区にて、ご家族が強盗殺人罪や事後強盗致死罪などの裁判員裁判対象事件を起こしてしまった場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご相談ください。