今回は、身に覚えのない連続侵入盗事件の取調べに対する対処方法について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説いたします。
~ケース~
Aさんは深夜、北海道栗山町の民家に侵入し金品を物色していたところを家人に発見され、駆け付けた札幌方面栗山警察署の警察官により住居侵入・窃盗未遂の疑いで逮捕されてしまいました。
近頃、Aさんが侵入した民家の近辺では侵入盗事件が相次いでおり、警察はAさんが犯人ではないかと考えているようです。
もっとも、Aさんが事件を起こしたのは冒頭の件のみで、連続侵入盗事件とは関係がありません。
しかし、取調官はAさんの弁解を信用してくれず、次第に取調べの態様も高圧的になりつつあります。
Aさんはどうするべきでしょうか。(フィクションです)
~身に覚えのない犯行の疑いをかけられたら~
すぐに弁護士と相談し、取調べの対処方法についてアドバイスを受けましょう。
最悪のケースは、身に覚えのない侵入盗事件を起こしたと自白する調書を作成され、無実の罪につき有罪判決を受けてしまうことです。
裁判官が冤罪を見抜くことができればよいですが、その保証はどこにもありません。
裁判になったときに、改めて裁判官に冤罪を訴えればよい、という考えは甘いといえます。
一度作成されてしまった自白調書を覆すことは大変困難です。
Aさんの認識と異なる調書が作成されることは絶対に避けなければなりません。
~やっていない事件の自白がなぜできるのか?~
ところで、やっていない、関わっていない事件の自白がなぜできるのか疑問に感じると思います。
それは、供述調書の作成方法に問題があると考えられます。
供述調書は、取調官が供述者の供述を聞き、要点をまとめて文書に仕上げ、供述者の署名・押印を得る、というプロセスで作成されます(供述者が自ら筆記するなどして作成される場合もあります)。
ということは、供述者が供述したことと全く異なる内容が記載された調書が作成されたとしても、とにかく供述者の署名押印が得られれば、調書上、供述者が記載通りに供述した、という体裁ができあがります。
場合によっては、取調官が勝手に調書を作成しはじめ、署名・押印だけ求められる、ということもあるかもしれません。
捜査の進捗にもよりますが、当然ながら捜査機関は捜査中の事件がどのような事件であったのか、ということを把握しています。
これを裏付けるような供述調書をあらかじめ作成し、事件と無関係な被疑者に署名・押印をさせることができれば、簡単にやっていない事件の自白調書が完成します。
~Aさんは取調べに対してどう対応するべきか~
(黙秘権の行使)
やっていない事件については、そのまま「やっていない」と供述すればよいです。
もし取調官がAさんの供述を聞いてくれない場合は、黙秘権を行使することが考えられます。
(署名押印拒否権)
前述のように、供述したことが供述調書に記載されなかったり、供述していない事柄が供述調書に記載されている場合はどうすべきでしょうか。
被疑者に認められた権利として、「増減変更申立権」、「署名押印拒否権」があります。
供述調書に供述したことと異なる事柄が記載されていたり、供述していない事柄が記載されている場合には、取調官に対し、修正を申し立てることができます(刑事訴訟法第198条4項)。
もし取調官が修正の申立てに応じてくれない場合は、署名・押印を拒否することができます(刑事訴訟法第198条5項但書)。
もっとも、これらの権利の行使により、取調べがさらに苛烈になる可能性も否定できません。
その場合は弁護士に相談し、取調官や検察官に抗議を行う必要があります。
Aさんは住居侵入・窃盗未遂事件を起こし逮捕されていますが、Aさんと関係のない事件についてまで罪に問われる道理はありません。
冤罪を予防するためにも、なるべく早期に弁護士を依頼するのが良いでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族に対し、身に覚えのない連続侵入盗事件の嫌疑をかけられ、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部にご相談ください。